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大学院共通授業科目「大学院生のためのセルフプロモーションⅡ」TOC(グラフィカルアブストラクト)を制作

2021.9.10

2021年度から新しく始まったこの授業は、6月23日~8月4日の水曜3限にオンラインで行なわれ、修士と博士の院生9名が受講しました。

この授業では、自分の行なっている研究の意義や魅力を、社会に対して視覚的にアピールするためのスキルを身につけます。他人に伝えるためには、自分の研究について自分自身がよく理解していなくてはなりません。自分の研究は、社会の中でどのような課題に応えるものなのか、特定の研究分野のなかでどのような位置づけにあるのか、そして、おもしろポイントはどこにあるのかを、TOCを制作する過程で見つめなおすのが、この授業の大きな目的です。

TOCとはTable Of Contentsの略で、論文の肝となることがらを一枚のイラストやごく短い動画などで表現した、グラフィカルなアブストラクトのことを意味します。近年、学術雑誌への論文投稿の際に添付を義務付けられることが徐々に増えてきました。新しい試みのため、どのようなルールで制作するかは雑誌によってまちまちで、国際基準のようなものはまだできていません。

そこでこの授業では、「一枚のイラスト」に「140文字以内の解説」をつけることをルールとしました。その際、ターゲット層を各自自分で決めてもらい、その人たちに伝えるにはどこを切り取り、どのようなモチーフを使うのが適切か、試行錯誤を重ねました。全7回の授業で学生さんたちが制作したTOCを紹介します。どれも、紆余曲折を経て作り上げた力作です。

 

1.古賀 泰雅 さん(農学院 樹木生物学研究 修士1年)の作品

研究テーマ:樹木の細胞外における凍結開始要因の考察

ターゲット:
化学を履修している高校生
解説文:
“水は0℃で凍る”と思っていませんか?実は、凍結には温度以外の様々な要因が関わっていて、凍る温度は様々に変化します。その要因の1つは氷核活性と呼ばれる働きを持つ物質です。氷核活性は水分子を氷の結晶の形状に並べる不思議な働きです。通常より高い温度で水を凍らせてしまうのです。

2.五藤 花 さん(環境科学院 早川研究室 修士1年)の作品

研究テーマ:シロテテナガザルの脳における網羅的遺伝子発現解析

パターン1

ターゲット:
高校生以上の生き物好きな人
解説文:
テナガザルの歌にはソプラノ歌手のような魅力があります。そしてその根底には遺伝子による制御があります。それを明らかにするため、脳における遺伝子の働きのパターンを調べました。ヒトに近い類人猿では初めて、遺伝子と歌を結びつけるカギとなる研究です。

 

パターン2

ターゲット:
高校生以上の生き物好きな人
解説文:
シロテテナガザルの夫婦は、毎朝歌を歌いあい、絆を深めます。この美しい歌は、遺伝子によってどう制御されているのでしょうか。その仕組みを解明するために、脳ではたらく遺伝子のパターンを調べました。人間にちかい類人猿において、歌と遺伝子をつなぐ初めてのカギとなるでしょう。

3.後藤 葉月 さん(環境科学院 早川研究室 修士1年)の作品

研究テーマ:ユキヒョウの高山適応にけるゲノム基盤の解明

ターゲット:
生物好きの高校生
解説文:
ユキヒョウは極寒・低酸素・高紫外線を特徴に持つ高山になぜ適応できたのだろうか?例えば、高紫外線の影響を強く受けそうな眼球組織ではどんな遺伝子がどれくらい発現しているのだろうか。眼球からRNAを採取・解析し、最も近縁種のトラと比較することでユキヒョウの高山適応の仕組みに迫る。

4.西山 晃平 さん(総合化学院 物質化学研究室 修士1年)の作品

研究テーマ:DNAコンピューティングを用いた分子ロボットの自動制御

ターゲット:
文系出身の社会人
解説文:
自然界の魚などが形成する「群れ」を、魚ではなく分子という非常に小さな道具を使って人工的に再現できたら面白いと思いませんか?私は、はじめは無秩序に運動している分子が一定時間経過後に自動的に群れを形成し、やがて自動的に解散するシステムを作ることに取り組んでいます。

5.棚橋 慧太 さん(工学院 エネルギーメディア変換材料研究室 博士1年)の作品

研究テーマ:Ca2RuO4の微小結晶合成と結晶相および磁気相におよぼすサイズ効果

ターゲット:
理系に強い興味を持っているわけでない、文理選択前の高校1年生
解説文:
ジェットコースターでシャボン玉。小さくたくさんつくれたよ!私はある結晶を、ジェットコースターのように急激な加熱・冷却で合成しました。膨らむ前に膜が閉じて小さいシャボン玉ができたように、結晶が大きくなる前に合成を完了させ、普通(L相)と異なる性質の小さい結晶(H相)ができました!

6.平田 裕己 さん(薬学研究院 薬品製造化学研究室 修士1年)の作品

研究テーマ:Cp*Co(III)触媒とキラルカルボン酸の組み合わせによる C–H アミド化を経たチアジアジンの触媒的不斉合成

ターゲット:
オープンキャンパスに来た高校生や一般の方々
解説文:
コバルト(Co)の魔女がカルボン酸(COOH)の魔法をかけると、鏡の中の世界でのみ薬が実ります。これは片方の鏡像のみができるということです。“薬は鏡像の片方のみが必要”で、片方の鏡像のみからなる薬は効能が上がります。さあ、コバルトとカルボン酸によって、薬の鏡像の片方ができる様子を見てみましょう!

 

以下の学生さんの作品については、未発表の内容を含むため公開を控えました。

桑原 一輝 さん(生命科学院 薬品製造化学研究室 修士1年)
佐藤 あかりさん(理学院 角井研究室 修士1年)
鶴間 あい さん(農学院 食品機能化学研究室 修士1年)

 

指導教員
池田 貴子(CoSTEP特任講師)、梶井 宏樹(CoSTEP博士研究員)、原 健一(CoSTEP博士研究員)