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『リテラポプリ 特別号』完成しました。

2012.2.26

 

「こんな言葉はない」と眉をひそめる人もいるが、従来の言い回しを一部変え、使い手が自分の気持ちを表現するオリジナル慣用句が市民権を得つつある。中でもよく聞くのが、「有言実行」だ。正しくは「不言実行」だが、無言でことを起こすより宣言して退路を断つことの方が、厳しさが伴い価値があるという意思の表れか。「不言実行をもじった語」として、すでに辞書にも載っているからよほど使われているのだろう。もう一つ、気になる言葉がある。それは「自分ごと」。これも「他人事(ひとごと、たにんごと)」をもじったものだ。

震災について自分のこととしてとらえてもらいたい。そんな思いを込めてCoSTEPが『リテラポプリ 特別号』を制作した。昨年3月11日の震災がテーマ。発行は震災から約1年後の今年2月末。読者は高校生。北大の広報誌という使命。この1冊でなにを伝えるべきか。悩んで生み出したコンセプトは「新しい『いつも』を作ろう」だった。

 

 

被災地から海を隔てた北海道で、震災の被害をどこか遠いところのようにとらえていないか? 今も苦しい生活を送っている人がいることを、頭ではわかっていても親身になりきれない部分があるのではないか? 復興は、被災地と政治や行政が行うと思ってはいないか? いや、それではいけない。地震・津波の被害だけではなく、それに伴って吹き出したさまざまな社会の問題や矛盾、将来の社会に対する責任。これらは決して被災地だけのものでも、行政や政治だけの仕事でもない。自分にとって身近で切実な問題なのだ。そのことを読者に伝えたいとの思いで、企画・編集・制作を行った。そして、震災前の社会にただそのまま戻るのではなく、自分たちの手で、震災前よりももっと暮らしやすい日常を作っていこうじゃないかというメッセージを、「新しい『いつも』」という言葉に込めた。

 

その『リテラポプリ 特別号』が完成した。震災をきちんと振り返るためのデータ、地震・津波についての基本的な理解、原発事故を考えるための論説、北大に関わる人々が被災地とどう向き合ったのかをリアルに伝えるレポート、さらに、復興を含め社会の問題を考え解決するために大学で学べることの紹介。それらを込めた渾身の1冊である。読者を高校生と設定はしているが、大人の人たちにも十分読応えのあるものに仕上がっていると思う。

 

43000部発行。北大正門そばの一般向け案内所「エルムの森」をはじめとする学内、学外各所で配布。ひとりでも多くの人に手にとってもらい、震災について改めて深く考えてもらえればと思う。そう、どこか「間に合わせ」のような響きが残る「自分ごと」というより、自分自身の問題としてリアルに、そして積極的に震災と関わるための一助になればと思う。実行すれば、不言も有言ももはや問題ではない。「もじり」では到達できない迫力が、読んだ方々に伝わればうれしい。

B5判 全48ページ

もくじ

第1章 東日本大震災で何が起きたのか

・データでみる震災

・地震・津波が起こる原因

・あなたは今日、原発について考えましたか?

第2章 研究者や学生が関わった活動

・そのとき研究者が動いた

・支援でつなげる震災と北大 ―私もどこかに関われるかも―

・世界から見た3.11

第3章 未来へ向けて

・明日への提言  ―若者が時代を変える―

・住民が選ぶ「復興」のかたち

・授業探訪

・そして、未来へ