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モジュール2-3「伝えるプレゼンテーション」(7/20)古澤正三池田貴子先生講義レポート

2024.8.2

中山 小夏(2024年度ライティング編集実習/学生)

今回は、CoSTEP講師の古澤正三先生、池田貴子先生による共同講義です。古澤先生はプレゼンテーションの概要とわかりやすく伝えるための技術について、池田先生はスライドのデザインについて、お話ししていただきました。

(グレーのシャツでそろって登場されたお二人。色はたまたま合ったとのこと)
1. プレゼンテーションとはどのようなものか

プレゼンの語源は「プレゼント」。プレゼントという言葉は、モノを提示する、進呈するなどの意味があります。つまりプレゼンテーションとは、聞き手に情報をわかりやすくまとめて説明することを表すそうです。人にプレゼントを贈るとき、相手の好きなものや喜ぶ顔を想像して内容を考えるように、プレゼンテーションの本質は聞き手のことを考えて伝えることであるといいます。

では、プレゼンテーションはどのような目的で行うのでしょう。それは「特定の対象者」に対して何らかの影響を与えるためです。たとえば、ビジネスにおける商品説明のプレゼンテーションの目的は、取引先や購買者に商品の良さを伝え、購入してもらうことです。学会や講演会における社会問題をテーマにしたプレゼンテーションの目的は、聴講者に今ある課題を訴え、解決に向けた研究や取り組みに賛同・協力してもらうことです。

このようにプレゼンは「誰に」「なにをしてほしいか」という目的をもって行う表現行為です。しかし、プレゼンは場所や時間が制限されていることがほとんどです。目的を達成するためには、自分の伝えたい内容を聞き手に効率的に理解してもらうことが重要となります。そのためにプレゼンの構成を見直したり、スライドによって視覚的な情報を補足したりという方法がとられます。

(途中、成功したプレゼンテーションと失敗したプレゼンテーションの経験についてグループで話し合う時間がありました。中央は筆者)
2. わかりやすく伝える

プレゼンテーションを効果的に行うには「誰に〇〇してほしい」という目的を常に意識したうえで、ストーリー、構成、説明、デザインの4つをよく考える必要があります。

また、イベントをコンテンツの「質」にとらわれてしまうときがあるといいます。でも一番大事なのは信頼を構築していくということ、これを通じて円滑なコミュニケーションに繋げることです。

まずは一番伝えたいこと(メインメッセージ)を主軸に、それを伝えるために必要な説明や事例を確認します。そして、メインメッセージが魅力的に伝わるよう、話す順序や構成を整理します。たとえば、簡単なものを説明した後で複雑な事象を説明する、具体的な事例を出した後で内容を一般化して説明する、時系列に沿って内容を説明する、などです。少し詳しい言葉では、クラスター化、構造化(順序構造、階層構造)といいます。

ここでも重要なのは伝える相手に対する想像力を働かせるということです。たとえば「赤いバラ」を想像してみてください。あなたはどのようなバラを想像しましたか?一本のバラを想像した人、花束のバラを想像した人、花壇や鉢植えのバラを想像した人、花瓶に生けてあるバラを想像した人など、同じ言葉でも頭に浮かぶイメージは人によって異なります。このように、自分が想像するイメージと聞き手が想像するイメージが一致するとは限りません。それだけでなく、知識量、物事の優先度、感情など、自分と聞き手で異なる観点はたくさん存在します。そのため、伝える相手に対する想像力を働かせ、聞き手にわかりやすいプレゼンの手法を考える必要があります。

(「赤いバラ」のバリエーション)<制作:中山小夏>
3. プレゼンのデザインを考える

適切なデザインのスライドは、視覚的な情報を補い、聞き手が内容を理解しやすくすることができます。わかりやすいスライドによって、説得力や信憑性を上げるのです。

池田先生は、間違わないデザインのコツとして以下の3つを挙げられました。
・ 視線を誘導する
・ ノイズを減らす
・ 余白を活かす

特にノイズに関して、S/N比という概念を教えていただきました。SとはSignal(必要なモノ)、NとはNoise(要らないモノ)のことです。適切なデザインのスライドを作るためには、Noiseを小さくすることでS/N比を高くする必要があり、以下の5つの観点からノイズカットを行います。
・ しゃべらないことは書かない
・ フォント(話す内容のトーンに沿う、会場の後方でも文字が読める大きさ、書式)
・ 色使い(色数を最小限にし、使い方を統一する)
・ そろえる(文の開始位置を一致させる)
・ 改行の位置(言葉の塊、文節を意識した位置で改行する)

この点に考慮して「ももたろう」のあらすじについて説明するスライドを2枚作成し、比較してみました(ももたろうを選んだのは大体の日本人に通じる共通の話題だと考えたためです)。まず一枚目はノイズカットの観点を思いつく限り無視したスライドです。吹き出しなどで余計な一言を付け加えたり、文字を斜めにしてみたり、色の統一感をなくしたりしてみました。対して2枚目はノイズカットの観点から、使用する色は最小限にし、文の開始位置を左にそろえ、イラストは時系列順になるようにしてみました。

(ノイズカットの観点を無視して作成したスライド)<制作:中山小夏>
(ノイズカットの観点を遵守したスライド)<制作:中山小夏>

「ももたろう」は日本人ならばほとんどの人があらすじを知っていると思いますが、仮に内容を知らない人に説明することになったら、二枚目のノイズカットの観点を意識して作成したスライドを使った方が理解してもらいやすいでしょう。

さいごに、テイクホームメッセージ(これだけは覚えて帰ってほしいという内容を一言で表したもの)として「伝える相手に対する想像力を働かせる」ようにと伝えられました。今回の講義では想像力という言葉が何度も出てきましたが、普段自分がプレゼンするときに自分中心な話し方をしていないだろうか、と反省する機会になりました。

(講義では「伝える相手に対する想像力を働かせる」が要だと繰り返されました)

今後プレゼンテーションをするときは、伝える相手に対する想像力を働かせ、教えていただいたポイントを意識しつつ、聞き手に何らかの影響を与えることができるようなプレゼンをしたいと思います。

(今回はプレゼンテーションの”P”マークを作っての集合写真)