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「“学問という表現、面白論文という表象科学の表情”」/1114 サンキュータツオ先生の講義レポート

2012.11.23

 「米粒写経(こめつぶしゃきょう)」という芸名で活躍なさっている傍ら、一橋大学で日本語学の非常勤講師も務めるサンキュータツオ先生による講義「“学問”という表現、“面白論文”という表象 、“科学の表情”」が行われました。

■日本の国語辞典
 国語辞典には2大潮流があります。1つ目は岩波国語辞典。ここ100年の日本の言葉が載せられ、シンプルな説明の保守的な姿勢で知られています。2つ目は三省堂の新明解国語辞典。最近の言葉をインターネットから募るなど、新しい言葉を収集し、詳しい用例まで掲載しています。これらの辞典の違いには、編集者が支持する学説の違いが反映されています。
■「おもしろ論文」とは
 「おもしろ論文」とは、著者は至って大まじめながら、一般人から見ると突っ込みどころ満載のとぼけた(かのように見える)論文のことです。しかし学術的なプロセスを経て、学術誌や学位論文として掲載された、れっきとした論文だけを対象とします。

 「プロ野球選手と結婚するための方法に関する研究」、「女子大生の餅の喫食状況」、「あくびはなぜうつるのか」「起き上がるカブトムシの観察」などなど、何を目的にした研究か一見分からないような面白い論文がたくさん存在しています。しかし、研究というのは本来目的ありきではなく「知りたい」や「なぜだろう?」という気持ち先走ってできるものです。面白論文とはある人が人生をかけた「線」的研究のなかの1つの点が表現されているに過ぎないと、サンキュータツオさんはおっしゃいます。
■学問とは表現法の一つである
 人が美しい景色を見た時に受けた感動を、ある人は音で、ある人は絵で、ある人は詩によって伝えようとします。しかし学問では、体感した感動の要因を分析するなど、研究活動を通じて起きた現象を明らかにし、それを論文という形で表現しているのです。

 そして、その論文は人類の英知として同時代の人と共有されるだけでなく、過去、そして未来人とのコミュニケーション手段になっているという言葉が印象的でした。
 おもしろ論文の存在は、どんなテーマでも真剣に調べようと思えば、学術研究になり得ることを示しています。サンキュータツオさんは、そうした研究者たちの営みに学問という世界の奥深さを見出されているようでした。
(青井良平・2012年度CoSTEP受講生/北海道大学大学院水産科学院修士2年)