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「学内連携を目指した異分野融合ダイナミクス」/1128 宮野公樹先生の講義レポート

2012.12.1

 11月28日、京都大学学際融合教育研究推進センター准教授・総長学事補佐の宮野公樹先生による講義が行われました。宮野先生は元々、金属組織学やナノテクノロジーを専門とする研究者でしたが、今では医学・工学の連携や、教育工学、政策科学など、幅広い分野で活躍しています。

■なぜ「学際」「異分野融合」が必要なのか?
まず紀元前から現在まで、地球上で人口が爆発したことを示し、石油資源の枯渇、環境問題など、科学技術だけで解決できない複雑な状況に人類が追い込まれているという話から始まりました。

一方で学問は、絶え間なく細分化、複雑化していき、研究者の数も増え続けています。また、タコ壷のような環境で、研究者は孤立しています。その結果、英知の結晶であるべき学問が、人類の複合的課題に対応しきれていないのではないかという問題提起がありました。
■お金を出せば良い研究につながるのか?

では、国が研究者にお金を出せば、良い研究ができるのでしょうか?日本でも右肩上がりで研究開発に予算をつけてきましたが、国際競争力はどんどん下がり続けているのが現状です。

実験用の機械など、装置や設備に依存する研究分野も確かに存在します。また研究者数も、論文数も着実に増えています。しかし、研究者や国民は幸福になっているのでしょうか?研究に予算を配分するだけでは、何かが足りないのです。研究を有効に社会に還元していくためには、異分野の融合が必須です。
■研究を評価することの難しさ
研究者は競争的資金を獲得するため、研究費の申請書やプレゼンで、社会的意義を力説します。しかし実際、製品化や事業化といったアウトプットは、企業や行政のテリトリーです。研究者は本来、研究だけで評価されるべきであり、過剰な説明責任を負わされて、無理をしている研究者も多いのではないでしょうか。もちろんお金を無駄にしたいなんて、行政も研究者も思っていません。みんな、適切に研究の価値を評価したいのですが、それが難しくて苦しんでいるのです。
例えば、皆さんが30億円のお金を持っていて、研究費として配分しないといけないとなったら、どの分野に、誰に重点的に配分し、どこを伸ばしますか?と宮野先生は問います。やはり、分からないので、何となく実績のある個人や組織に重点的に配分してしまうのではないでしょうか。お金を適切に使うのは、非常に難しいのです。
■どうやって異分野融合を実現するか
「産業の創発」「競争力の強化」なんて大それたことが、単独の研究者でできるはずがありません。1人でイノベーションは起こせないのです。これまでの政策は個人、小グループが対象になりますが、これからはチームやネットワーク、そして研究の“ストーリー”が大切になるそうです。

ではどうやって異分野を融合することができるのでしょうか。トップダウンだけでは駄目だと宮野先生は言います。小さなグループで多様性を確保し、ボトムアップで成果が自然に上がってくるようなやり方も、コストはより低くすみ、望ましいそうです。

宮野先生は、連携やパートナーシップで大きな成果を上げている、大阪のあるグループの方に大きなヒントをもらったそうです。その秘訣とは「ひたすら3年間、飲み会をする」というシンプルなものだったと言います。
結局は、組織のトップが意図的に「連携」させたいと思ってもそううまくはいきません。人は、仲の良い人、話しやすい人とつながるものなのです。

仲の良い人が自然に集まって、低コストでわいわい楽しみながら仕事をすることが、結果として異分野融合につながるというのが、宮野先生のご意見です。
その後は、こうした発想をもとに、京都大学で宮野先生が実践している具体的なプロジェクトなどについて興味深い事例をたくさんご紹介いただきました。宮野先生、ありがとうございました。