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「実践入門」525日石村源生先生の講義レポート

2013.5.30

石村先生は、CoSTEP着任前は、展示ディレクターとして、さまざまな科学館や理工系博物館の展示やイベント企画、施設構想、運営コンサルティングに関わってきました。この講義では、先生の豊富な実践経験を紹介することで、さまざまな科学技術コミュニケーションへの応用を考えました。

◆しかけがあちこちに潜む展示方法

科学館の展示は、興味の持ち方もさまざまな来館者が、ひと目でおよその内容がわかるよう工夫されています。平面だけでなく、映像や立体造形、ライト、装置など、さまざまな演出を用意。数字で書けばほんの一言で終わるようなことがらも、自分で触れて比べてみる、展示を覗き穴から見るなど、あえて時間をかけ体験することで、より印象づけることができます。また、カフェのテーブルまで展示ツールとして使い、ゲーム感覚で同席した人たちのコミュニケーションを促すようなユニークなしかけも紹介されました。

こうした工夫の数々は、ライティング、映像、グラフィック、サイエンス・カフェなどどれにも応用可能です。大切なことは、そのメディアが最も効果を発揮する方法で、そのメディアを使う必然性が生まれるように実践することです。

◆多様な科学技術コミュニケーションの形

石村先生は、CoSTEPはじめ、北大でもさまざまな実践をされてきました。

「さっぽろサイエンス観光マップ」では、場所と科学とを結びつけ、コスト・技術両面でハードルが低いコンテンツを発信。他地域にも応用できるよう、ノウハウをまとめた冊子も制作しました。環境学習「北大エコツアー」では、音声ガイドを作成・配信し、セルフガイドツアーも可能にしたり、自分でつくるガイドブックを用意したりするなど、体験型の工夫がなされ、多様なスタイルのツアーを提案しています。

 

また新聞社と連携して紙面を制作したときには、関連ワークショップを数回開催。読者には多面的な体験を、新聞をつくる側には読者のニーズをくみ取る機会を提供しました。

釧路市で実施した公募プロジェクト、「津波防災ワークショップ」では、専門家の話をきくだけでなく、行動に結びつけるワークショップを行い、詳細な報告書を作成しています。

サイエンス・カフェには2005年以来、総数140名の受講生が実施に参加し、ファシリテーションやプログラムの工夫を学びました。研究者のアウトリーチ活動の場のひとつともなっています。

 

科学団体が主催するイベントに北大が出展した際は、ウェブアプリケーションにより意見を交換・共有する、コンセプトの表現型としてのソフトウェアの利用の可能性を示しました。別の企画展では最先端の研究が小学生にも興味をもたれるように、研究者のライフヒストリーを見やすく展示。自分と照らして研究者に触れられる工夫をし、好評を博しました。

また、ジャーナリストどうしがかかえる課題を共有し、グループワークによって継続的なネットワークができるしかけをつくったり、大学院生どうしが互いの研究の関連性を考え、共同研究の可能性を探ったりするワークショップ形式の授業も提供してきました。

科学技術コミュニケーションにも多様な表現・アプローチのしかたがあり、ひとつとして同じものがないことがよくわかりました。ここで示した実践例は「目次」のようなもの。どこでも興味をもったところを開けば、そこから独自の科学技術コミュニケーションの実践につなげていけます。

◆科学技術コミュニケーターの役割

科学技術コミュニケーションの実践のために、実態を調査し、分析・編集する。そして普及させ、ときには社会にむけ提言するための場を創る、知識や情報を必要としている人を支援するといった個々の仕事。それらすべてを組織化し、チームとして取り組む形をつくることこそが、科学技術コミュニケーターの役割だということです。

◆実践を通じた学び

CoSTEPの実習は、科学技術コミュニケーションを身につける「実践を通じた学びの場」です。しかし日々の生活こそが実習(学び)の場なのだと石村先生はおっしゃいます。自分の学びの場をプロデュースしながら学ぶ、「学び方を学びながら学ぶ」といった姿勢で意欲的に取り組んでほしいとのこと。学びの場は目を凝らせばいくらでもあるのですね。

 レポート:三井恭子(2013年度本科・ライター)