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「「想定外」生まれる仕組み、見逃す人たち」914 添田孝史先生の講義レポート

2013.10.5

この回では、サイエンスライターの添田孝史先生にお越しいただきました。添田先生は約20年間、朝日新聞の記者やデスクとして活躍されたご経験をもとに話していただきました。

2011年3月、東日本大震災が発生し、東京電力福島第一原子力発電所の事故が起こりました。この事故は「想定外」と言われますが、「想定外」が人為的に生み出され見逃され続けてきたことについて、事故前のさまざまな事例をもとに解説していただきました。

まず福島第一原発の事故は、津波リスクの読み誤り、全電源喪失リスクの読み誤り、シビアアクシデント対策の不備という「3つの穴」が重なって生じたと確認され、「津波リスクの読み誤り」に焦点を当てて話が進んでいきます。

1966年7月、福島第一原発の設置が申請されました。東電は既往最大の津波を3.1mと想定し設計。これは、原発から60km南の小名浜港のデータをもとに過去400年間について調べた結果だそうです。しかし3.11では、福島第一原発は小名浜港の約3倍の13mの津波に襲われたのです。

2000年2月、電気事業連合会による報告書が出ました。数値計算の誤差を考慮して、当初の予測の1.2倍の津波が来ると福島第一原発は影響を被るとされていました。しかしこの報告書は公開されず、電事連は改造費用が多額になるため、経済性を優先させたといいます。

 

電事連は土木学会の原子力土木委員会にオーソライズを求めました。この委員会には実は、電力会社関係者の委員が約半数いたのです。2000年11月の部会では、安全率を「とりあえず1.0」としました。それは「安全余裕」を設けないことであり、当初の想定を少しでも超えると事故が起こるものでした。この会議の議事録も長年非公開でした。

政府の地震調査研究推進本部は2002年7月、日本海溝上で30年以内に大地震が起こる確率が20%という「長期評価」を出し、マグニチュード8.2の地震が起こると福島沿岸では12mの大津波が来ると予測しました。その他にも専門家による調査や指摘がありましたが、東電は津波対策をとりませんでした。

添田先生は以上のように語り、メディアもそれらを見逃してきたと指摘します。同様の「想定外」は阪神淡路大震災でも起きたのですが、教訓は生かされませんでした。首都直下地震の発生も予測されていますが、新たな「想定外」を生み出しうるという問題提起をして、話が終わりました。その後、受講生から質問が多く出され、活発に意見交換が行われました。