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「映像メディア科学技術コミュニケーション」7/4早岡英介先生の講義レポート

2018.7.12

村田祥子(2018年度 本科/学生)

映像メディアを用いた科学技術コミュニケーションについて、CoSTEP特任准教授の早岡英介先生にお話しいただきました。

新時代に突入した映像の世界

映像メディアは、デジタル革命を機に、送り手と受け手という立場を超えた双方向ツールとして注目を集めています。簡単な撮影や編集を可能にしたスマートフォン、ARやVRといった新コンテンツの登場といった驚異的な技術進歩を背景に、映像は家庭から教育、医療現場に至るまで、幅広い分野で、これからの活用が大いに期待されるメディアになりました。

映像の特性を理解する

映像メディアを用いるためには「非言語性」「時間軸の可制御性」、そして「共通体験を生む同時性」といった特性を理解する必要があります。

リッチコンテンツという言葉からもわかるように、映像は言葉はもちろん音や動画など、多様な表現を伝えることができるコンテンツです。特に、映像は他の表現の手法と比べて、視覚に訴える要素が強く、言葉より“イメージ”が用いられます。

また、映像を通して私たちが知り得ない時間軸を短時間で体験することもできます。講義では、過去のCoSTEP生の作品から、北大の四季を時間を縮めて表現する手法や、牛を屠殺して食肉処理を行い実際に食べるまでの過程を逆回しで表現する方法を学びました。

ネット中継など、時間を共有することで、場所が異なっても共通の体験ができるというのも映像ならではの特性です。テレビのスポーツ観戦で、肩を並べて応援している気持ちになり、熱くなれるのも映像の力が関与しています。

このように、映像は、視聴しながらその非現実世界に入り込んでしまえるほどの強大なパワーを持っています。

しかし、だからこその欠点もあります。映像の意図が伝わりすぎてしまい、視聴者が額面通りにメッセージを受け取ってしまいかねない、という点です。

例として挙がっていたのは、100年ぶりに利尻島に上陸したヒグマを駆除すべきか、という今話題のニュースでした。両方の意見があって然るべき問題のはずですが、映像内で専門家が「駆除すべきでない」と発言したシーンが僅かに入っただけで、見ていた受講生の多くが駆除反対の方に傾いてしまいました。

私たちにできること~科学技術コミュニケーションとの接点

影響力が強すぎるといった危険性を孕んでいますが、そのリスクを考慮すれば、映像もコミュニケーションの手段として有用な手段になります。早岡先生は実際に、見ている人の意見を誘導しかねないテロップや音楽といった表現を一切使用せず、福島原発問題を取り上げたリスクコミュニケーションに映像技術を活用されていました。フォーマットやステークスホルダーの設定次第では、映像が科学技術コミュニケーションに与える可能性は無限に広がります。そんな映像が持つ性質や魅力を最大限引き出せるようなアプローチを、皆さんと一緒に考えていけたらと思いました。早岡先生、ありがとうございました!