野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり……日本最古の物語と言われる竹取物語。その冒頭の一節にもあるように、人は昔々から竹を使って農具や漁具など様々なモノを作り、生活の中で使っていたようです。これは、先人たちが「竹は構造的に優れる」と経験的に分かっていたからかもしれません。しかし、竹は本当に構造的に優れているのでしょうか?また、それは科学的に説明できるのでしょうか?
今回のゲストである佐藤太裕さんの専門は構造力学。建造物が外から力を受けた時にどのような変形をするのかを扱う学問です。主に、水中トンネルや海洋パイプライン等、円い筒状のものを研究対象にしてきました。そして、近年は「竹」に着目。「軽くて丈夫」という竹の特性を構造力学・材料力学的に解析し、竹が進化の過程で獲得した構造が、非常に合理的であるということを明らかにしました。つまり、先人たちの智恵を科学的に解き明かしたと言えます。今後は、竹が持つ「構造」とそこから生まれる「機能」を活かして「モノづくり」をしたいと佐藤さんは語ります。
科学的に得られた知見を活かすというプロセスを経て、モノが生まれることがあります。今回のカフェでは、そのような「モノづくり」のプロセスを、佐藤さんの竹に関する研究を通して紹介します。そして、私たちの身近にあるモノに自然の特性がどのように活かされているのか、また将来的にどのように活かすことができるのか、みなさんと一緒に考えます。カフェの後には、今まで何気なく見ていた身の回りのモノが、また違って見えてくるかもしれません。
■開催概要■
第102回サイエンス・カフェ札幌「竹取工学物語。 〜自然のモノをよろづのことに使ふには〜」
【日 時】2018年10月14日(日) 14:30~16:00 (14:00開場)
【場 所】紀伊國屋書店札幌本店 1F インナーガーデン
札幌市中央区北5条西5丁目7 sapporo55 1F(011-231-2131)
【ゲスト】佐藤 太裕 さん(北海道大学 大学院工学研究院 准教授)
【聞き手】CoSTEP 対話の場の創造実習 受講生
【定 員】80名程度・申込み不要
【参加費】無料
【主 催】北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター
科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP・コーステップ)
■ゲストプロフィール■
佐藤 太裕(さとう もとひろ)さん
北海道大学 大学院工学研究院 准教授。竹が自生しない札幌生まれの札幌育ち。様々なもののかたちとそれが生み出す機能を、構造力学・材料力学的に解明し、新しい概念を構築することが研究の大きなテーマ。近年は植物に着目し、それらの進化の過程で最適化されたであろう形態の謎を紐解き、実際のモノづくりに活かしていくことが目標である。現在、その竹に関する研究は、国内外から注目を集めている。趣味は家族全員大好きなスキーとドライブ。