
小樽の北運河エリアを舞台に、「土地・技術・ケア」をテーマとする制作と共生のプラクティス「the 𐠫𐠂𐠓 オブ 𐠜ウェアー / the soil of nowhere」が開催されました。(2026年8月22日~9月6日)
🔗 the 𐠫𐠂𐠓 オブ 𐠜ウェアー / the soil of nowhere ウェブサイト
概要
アルゴリズムによる均質化が進む現代において、「周縁」から思考し、創造することにはどのような意味があるだろうか。一連の展覧会・ワークショップ・トークでは、メディアアート、工芸、DIYの実践を結びつけ、テクノロジーがいかに複数の歴史と絡み合いながら形成され、それぞれの地でいかに経験・再解釈・再構築されているのかを考察する。キプロスと日本を拠点とする実践者たちが、一見共通点のなさそうな両国の(ポスト)コロニアルな類似性を探りながら、様々な二項対立から抜け出しうる「どこでもないどこか」を探求する。
小樽の北運河地区には、人や物、産業の移動が残した数多くの「跡」が存在する。使われなくなった鉄道路線、倉庫群、港湾施設。こうした痕跡は、海を介して外の世界と結ばれてきた港町の歴史を物語るとともに、二つの周縁的な土地を結ぶ対話の出発点となる。
(ウェブサイトより)
6組7名のアーティストが参加する「the 𐠫𐠂𐠓 オブ 𐠜ウェアー / the soil of nowhere」。
旧前堀商店での現代美術やメディアアートの展示(8月22日~9月6日)、展示アーティストによる椅子づくりワークショップ(8月22日)、旧第三倉庫でのゲストトーク(8月22日)、旧前堀商店でのアーティストトーク(8月30日)……と多数のイベントから構成されたユニークな試みです。
さっそく展示を覗いてみましょう!

会場の旧前堀商店は、直前まで丹念に清掃をして、この展示のために整備されなおしたばかり。
歴史ある建築の石材の重厚感と、清掃したての空間に残るなつかしいにおい、そこに土地や領域をテーマとしたアーティストたちの新作が並びます。
企画兼出展アーティストの岡碧幸(おか・みゆき)さんは、CoSTEPの修了生です。
今回の出展作《position, location, situation(葦)》では、歴史と文化の違いを超えてキプロスと日本に生える葦(ヨシ)を捉えたさまざまな画像を手がかりに、ヨシのバーチャルな姿を浮かび上がらせようとします。

岡さんの作品のほかにも、北海道とキプロス、さらに地域を超えたメタジオグラフィカルな想像力が光る作品が並びます。
現代美術では古典的ともいえるインタビューやエスノグラフィーの手法を使った参与的な実践から、複数の人の参加によってひとつの椅子のクラフトに取り組み、最後はテクストと並べてコンセプチュアル・アートをオマージュしたふうのレイアウトにまとめたもの、そして生成AIを用いたものまで……
それぞれのアーティストの思索と視点の多様さを反映するように、この展示がみせてくれる「方法」は実にさまざまです。





主催の岡さんと佐野和哉さんは、本展示がテーマと手法において示す「領域横断性」の可能性について、インタビューで以下のように述べています。
アート、デザイン、テクノロジーを横断する実践は、個人の感覚や経験に根差しながらも、それを媒介として、異なる地域や時代に生きる人々と視点や問いを共有することを可能にするものだと思います。

また8月22日には、二部構成のオープニングトークが行われました。
前半の「国内外のアートと地域の事例で考える、旧第3倉庫活用の可能性」では、
本実践をプレイベントと位置付ける「OTARU CREATIVE WEEKS」(以下、OCW)主催の福島慶介さん(NPO法人 OTARU CREATIVE PLUS)、OCWディレクターのカジタシノブさん、十和田現代美術館館長でキュレーターの四方幸子さんが登壇。北運河エリアの中心的建造物である通称「旧第3倉庫」の活用について、建築の再利用によって誕生した世界各国のアートスペースの事例を交えて考えました。
(撮影:タニショーゴ)
後半は一部メンバーを入れ替え、福島さんに加えて展示アーティストのマリノス・クツォミハリスさん(キプロス工科大学)、そして北大CoSTEPの五十嵐が登壇しました。
トークテーマは「旧第3倉庫から考える、小樽の文化と未来」。
小樽と旧第3倉庫がもつ遠洋漁業の歴史や文化を大切に、また現在の地元住民の皆さんのニーズをききとりながら、北運河エリアはどのような機能を果たしていけるのか?
ともに特色あるアート&デザインのプログラムと教育経験をもつキプロス工科大学と北大CoSTEPの視座から、サイエンス・カフェの実施やアーティストによる展示など、さまざまな可能性が提案されました。

トークのあとは、Beep Sapporoさんとの協力による電子音楽ライブパフォーマンス!
地元北海道のアーティスト&キプロスからやってきたマリノスさんらによる、豪華セットリストが実現しました。
小樽市運河公園の休憩棟でもある旧日本石油(株)倉庫で、三者三様の電子サウンドが響きます。



「the 𐠫𐠂𐠓 オブ 𐠜ウェアー / the soil of nowhere」の舞台となった小樽・北運河エリアは、観光客があふれるメインストリートとはまたちがった、独自のカルチャー拠点になろうとしています。
実験的な現代アートの実践を皮切りに、地元の「方法」にかないつつ新たな価値を探っていくさまざまなプラクティスの展開が予感されます。
【イベント情報】※イベントは終了しました
the 𐠫𐠂𐠓 オブ 𐠜ウェアー / the soil of nowhere
「土地・技術・ケア」をテーマとした、制作と共生のプラクティス
Practices of creation and coexistence, themed on “Land, Technology, and Care”
2026年8月22日(土)〜9月6日(日) ※火水木休館
12:00-18:00
入場 500円 ※ワークショップ/イベント参加費が別途かかることがあります
旧前堀商店〒047-0031 北海道小樽市色内2丁目9−22
参加アーティスト
アレクシア・アヒレオス Alexia Achilleos
岡碧幸 OKA Miyuki
佐野和哉 + 永松歩 SANO Kazuya + NAGAMATSU Ayumu
進藤冬華 SHINDO Fuyuka
ディオディオ・コレクティブ Dio Dio Collective
マリノス・クツォミハリス Marinos Koutsomichalis
主催者情報
主催:the 𐠫𐠂𐠓 オブ 𐠜ウェアー 実行委員会
共催・協力:NPO法人 OTARU CREATIVE PLUS / キプロス工科大学 MAD Lab / 北海道情報大学 / 北海道大学 CoSTEP / あやめ文化技術研究所 (ayamelab) / さっぽろ天神山アートスタジオ
後援:北海道
助成:公益財団法人 花王芸術・科学財団 / 公益財団法人 北海道文化財団
企画:アレクシア・アヒレオス+岡碧幸+佐野和哉+マリノス・クツォミハリス
グラフィック:大西重成
フライヤーデザイン:石田愛実(3KG)
問い合わせ先:DM(X, Instagram): @rfv_podcast | Email: rfv@torch-inc.jp
【メディア掲載】
北海道新聞デジタル(2026年8月10日)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1351504/