実践+発信

選科A活動報告「2人のジレンマもやもやサイエンスとあなたの選択〜」

2016.10.6

CoSTEP選科A 4班 てっしーと仲間たち

手島 駿、加藤 かすみ、中野 恭子、西野 綾乃、望月 未央

科学技術の進歩は、私たちに様々な恩恵を与えたと同時に、二元論では判断が出来ない、ジレンマを抱えた問題を生み出しています。そんな問題を私たちは「もやもやサイエンス」と名付け、その問題に遭遇したカップルがどんな選択をしていくのかがお客さんの意見で決まっていくという、お客さん参加型のサイエンスイベントを実施しました。

何のために、どのようなイベントを行ったのか?

今回私達が企画したサイエンスイベントの目的は、「お客さんに対し、科学技術がもたらす課題について考えるきっかけを提供し、自分なりの選択をするという意識をもってもらう」こと。この目的を達成するため、メンバーの得意分野で身近に感じやすいような「もやもやサイエンス」を抱えている「里山」「人工知能」「再生医療」をテーマに採用し、ジレンマが生まれるような問いを設定しました。また、寸劇形式にすることで、お客さんが話に入り込みやすくする工夫も行いました。更に、お客さんに「もやもやサイエンス」に対して簡単に意思表示が出来るように、1〜5までの数字が書かれたカードを作成し、カードを上げれば「もやもやサイエンス」に対する選択を意思表示出来るような形式にしました。

(イベントに参加したお客さんの様子。カードを使って意思を示しています)

当日行った劇のストーリーは次の通りです。

世界を創った神様が、人間が科学技術を進歩させることによって生み出されたジレンマを抱えた問題「もやもやサイエンス」について、人間たちに考えてもらいたいと思い、現れた。そこで、とあるカップルを観察し、そのカップルが次の3つのもやもやサイエンス…

①「里山の保全につなげるために、おばあちゃんは山に残るべきか、自分の生活のために都会に出るべきか」(里山問題)

②「人工知能のお医者さんと人間のお医者さん、どちらに診てもらいたいか」(人工知能問題)

③「豚を使った人工臓器を移植して欲しいか、してほしくないか」(再生医療問題)

…に直面したとき、カップルはどのような選択をしていくのかを通して、もやもやサイエンスについて考え、自分なりの選択を見つけ出すことの重要性を神様が伝える。

劇の中でカップルはもやもやサイエンスに出会う度に彼氏と彼女で常に対立するような選択を選び、考え込んでしまいます。そこで神様は劇をストップし、問題と論点を提示しながらお客さんに意思をカードで示してもらい、その結果をその場で集計し、画面に円グラフで表示しました。

(劇の様子。問題に直面したところで神様がお客さんに問題提起します)

あなた、そして私たちの選択は…?

それぞれの問題の結果を見ると、どの問題でも掲げられた番号にはばらつきがあり、どちらかが絶対にいい!という結果は出ませんでした。この結果を見たお客さんからは「おぉ〜」というどよめきが上がりました。恐らく多くのお客さんが「皆その数字をあげるだろう」だとか「少なくともどちらかに偏るだろう」と思いながら自分の数字を掲げていたために起こったどよめきだと思います。これは、まさしく「もやもやサイエンス」の持つジレンマを可視化することが出来た瞬間なのではないでしょうか。

(3つの問題に対する答え。ほぼ偏ること無く分かれています)

アンケートから学び、反省し、先へつなげる

お客さんから頂いたアンケートやコメントを分析したところ、全体の満足度は「よかった」、「ややよかった」が9割を超えており、イベントを楽しんでいただけたことがわかります。また、もやもやサイエンスについて考えるきっかけになったかという質問については7割近い人が「はい」と答えており、今回のイベントの目的だった「『もやもやサイエンス』について自分自身の選択をするという意識を持ってもらう」ことは概ね達成できたことがわかります。また、寸劇を使ったもやもやサイエンスへのアプローチも好評で、「よかった」「ややよかった」で10割を占めた他、「ストーリーに引き込まれた」「リアルタイムの結果が反映されるのがすごかった」等のコメントをいただき、メッセージ性だけでなく、エンターテイメント性も加味されたイベントに仕上がったことがわかりました。

(イベント終了後に取ったアンケートの結果)

ここで、今回のイベントを3日間で企画・実施していくために行ってきた軌跡を紹介します。

(今回イベントを作る上で行ってきた活動の軌跡。イベントを作っていく中で様々なことを発見し、学びました)

たった20分という短いイベントですが、たくさんの工程を経て初めて完成します。今回の企画を進めていく中で一番悩まされたのは「時間」でした。メンバーの中でも「時間管理をしっかりする」ことは常に課題となっていましたし、3日間という短い時間だからこそ、その大切さを痛感しました。今回は無事にイベントを終了させることが出来ましたが、今後は「時間管理」をいかにうまくやれるか、ということを意識しながら今後の活動を行っていきたいと思います。