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選科A活動報告「科学者の(リアル)どうしたら許してもらえますか~」

2022.9.6

選科A チームこめり
元家瑞月、高畑優、宇田亮子、仲井健太、中村元香、(教員)奥本素子

(作成:宇田亮子)

科学者と市民間の対話の「もやもや」

「もし研究が世の役に立たない場合、科学者はどうしたらいいの?」(科学者側)

「科学者って何をしているの? 社会にどうなってほしいの?」(市民側)

これらは、《科学者》として研究に従事する3名と《科学者ではない市民》の2名のメンバーで構成されていた私たちのチームで議論した内容でした。そこで、私たちは科学技術コミュニケーションにおける「リアル」な問題として、科学者と市民が対話するときに抱く「もやもや」に焦点を当ててイベントを開催しました。

※この「もやもや」とは、立場が違うことで相手の意図することや感情が理解しにくい状況とします。

もやもや解消の難しさを実感してもらうことを目指して

科学者と市民間での対話の難しさには、持っている知識の差以上に、土地柄やその人が抱える背景、価値観の違いが大きく影響しています。そこで「もやもやのリアル(今)を感じ」「互いの立場に立って考えて」もらうことを目指して企画しました。以下の点をメンバーで話し合った結果、寸劇とゲームの2つを取り入れた企画となりました。

・最後まで飽きずに参加してもらえるようにする

・冗長な説明を減らし、参加者を巻き込む

・科学者の立場が上という印象を与えない見せ方をする

イベント:寸劇

寸劇では、たとえ仲の良い相手でも、価値観の相違によって思わぬ意見の対立が生じることをテーマにしました。

数年ぶりに再会した科学者A子と一般企業で働くB子・C子は和やかに会話を始めます。しかし、A子が研究の話をし始めた途端、会話の雲行きが怪しくなっていきます。

 

(左から、B子役の仲井、A子役の宇田、 C子役の元家)

自分の研究の性質や意義を二人に上手く伝えられず、もやもやするA子。時間も税金も使って成果が出ないかもしれないと話すA子に、もやもやするB子とC子。

A子が泣き崩れて寸劇は幕を閉じます。「もやもや」の様子を紹介した後、実際に対話の難しさを参加者に体験してもらうべく、イベントはシミュレーションゲームに移ります。

 

イベント:シミュレーションゲーム

野生動物への餌やりを背景に、昔から餌をあげてきた《市民》と餌やりをやめてもらいたい《科学者》の異なる立場から対話を進めるゲームです。選択した回答に応じていくつかのシナリオに行き着くようになっており、ハッピーエンドにたどり着くことは難しくなっています。

 

(シナリオ制作:元家・高畑・中村)

ゲームの最後では、取った選択肢によって対話が失敗した理由や改善すべき点などを解説し、立場の異なる人同士が対話する上で心がけるべきことを提案しました。

 

(ゲーム結果解説:宇田・仲井)

アンケート結果

もやもやを実感してもらえたか?

寸劇の企画目標は、「科学者と市民の間での思想や価値観におけるギャップの存在を見せること」でした。ほとんどの参加者にギャップの存在を感じてもらえました。

 

シミュレーションゲームでは、「対話の難しさを実際に体験してもらう」ことを念頭に企画しました。概ね目標は達成できたものの、あまり実感できなかったとの意見も。

相手のことを理解する上で役に立ったか?

市民側の参加者からは本企画が役に立ったとの回答を得るも、科学者側の参加者には「新たな気づき」を実感してもらえなかったことが窺えました。

 

コメントから、見せ方のブラッシュアップの必要性が示されました。対象を明確に絞ってイベントを開催するなどの改善があると考えられます。

最後に

私たちがテーマとした、立場が異なる人同士での「相互理解の必要性」と「分かり合うことの難しさ」は、話し合いを重ねても企画の方向性がなかなか定まらなかった私たちチームの縮図とも感じています。

背景が異なる初対面のメンバーで1つのイベントを作り上げることは容易ではありません。しかし、全員が意義のある企画にしたいという想いを持ち、個々の意見を尊重しながら会話を丹念に重ねて、限られた時間の中で精一杯に企画をしました。イベントにご参加いただいた皆様、根気よく指導してくださった先生方に御礼申し上げます。

 

本記事は、2022年7月18日(月)に実施した2022年 選科Aオンラインサイエンスイベント「リアル」の報告記事の1つです。CoSTEPの選科Aコースでは、全国各地の選科A受講生が札幌に集まり、オンラインサイエンスイベントをいちから作り上げる3日間の集中演習を行っています。20人の受講生が4グループに分かれ、計4つのイベントが行われました。以下のリンクより、他の活動報告もぜひご覧ください。

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