PRESENTED BY パクっとずーさらだ
メンバー:たま、つま、WAKANA、やの、げなお、ほーちゃん
2022年夏。自分を「リアルに」のこすための記念館、しろくまメモリアルが開館しました。しろくまメモリアルへの特別な招待チケットを受け取ったあなたは、死後の自分についてどのように考えるのでしょうか。誰の記憶に残りたいのか、どのような形でのこしたいのか。技術史の変遷とともに考えてみましょう。
目的・達成目標
しろくまメモリアルでは、「自分はどのようにのこりたいか?」を自身に対して徹底的に問いかけることで、自分の「のこし方」について考えるきっかけを提供します。「のこし方」には、太古から未来に至るまでの時代区分と当時の科学技術を併せた以下の4プランが用意されています。
・プランクラシック (彫刻、肖像画、俳句) ・プランレトロ (自伝、作品集) ・プランモダン (写真、動画) ・プランフューチャー (VR、AI、クローン人間)
私たちの目的は、招待客 (来場者) にこれらのプランを概観していただき、「科学的にはこのようにのこせるが、どのようにのこしたいか?また実際にのこしたいと思うか?」という葛藤を通して、自分の「のこし方」を考えていただくことです。さらに、科学技術の進歩によって、将来はさらに「のこし方」の選択肢が広がるというメッセージを伝えることも目的の一つとしました。
しろくまメモリアル
本イベントのターゲットとして「死ぬ準備ができていない人」を想定したため、あえてこちらから「ご招待」しました。「死ぬ準備なんて考えたことないよ」というそこのあなた!ぜひ、しろくまメモリアルにお越しください。
しろくまメモリアルにいらっしゃったお客様には、”人工知能”「Siri」ならぬ「Siro」による各プラン内容の説明とともに、記録の技術史を紹介しました。「プランクラシック」から始まり、「プランレトロ」「プランモダン」「プランフューチャー」と、時代を追うことで、どこか懐かしさと新鮮さを覚えた方もいらっしゃったのではないでしょうか。非認知効果としてプランに合わせたBGMを加え、所々に「人工知能を熊工知能」と入れたり、「肖像画をピカソ風にすると?」などSFプロトタイピングな仕掛けを作りました。
のこし方には、意外な手法も登場しました。仏像・肖像画・俳句・論文なども、ある意味では「記録の技術」といえます。写真や動画など、発明当初は「魂を抜き取られる」と人々から恐れられた技術であっても、やがて受け入れられるようになり、現代に至るまで多くの記録をのこしてきました。プランフューチャーではVRからAIまで、未来の技術について取り上げましたが、中には違和感を覚えた方もいらっしゃるかもしれません。元気だったころのおばあちゃんが目の前に現れる…?そんなことありえない?いいえ。科学技術は現在も着実に進歩しています。あなたは、自分もしくは大切な誰かをのこす方法に様々な選択肢を持つことができるようになるのです。
しろくまメモリアルにお越しくださったお客様の感想
お越しくださったお客様には、しろくまメモリアルからお帰りになる前に、ご提案した中から自分をのこしたい方法を選んでいただきました。その結果、新しい技術を押さえ、プランクラシックを選ばれた方が最も多いという結果になりました。
また、参加された75%の方に、自分ののこし方について考えていただける結果となりました。未来の技術に関して考えるきっかけとなったお客様が多かったようでした。
その他にお客様からいただいたご意見の一部をご紹介します。
- 個人としては死後何かを残したいとは思わない。ただ、遺された側で考えると、何かがある方が心の拠り所になるのも事実です。一方、それもまた遺された側が見たいものを見ているだけで。。。関係性について、考えさせられます。
- 自分の死後に残るものという視点は難しくもあり、斬新でした。未来にはVRよりもっと進んだ形式で「残す」事業が立ち上げられるのかと考えてしまいました。
- 普段何気なく使っている媒体で自分を残しているけれど、それはどこまで残された人たちに影響を与えるのかという考え方を手に入れた気がしています。
しろくまメモリアルの裏側
しろくまメモリアルの開館にあたっては、スタッフの裏話がたくさんあります。ここでは2つご紹介しますね。一つ目は、技術史に関してです。実は、AI, VR, 映像技術の専門家は、スタッフの中に一人もいませんでした。そして、年代もバックグラウンドも異なるスタッフがそれぞれ「自分だったら、死後にどういう形で自分をのこしたいか」というテーマについて真剣に考え、熱くディスカッションしたものを、イベントを通して実際に参加者のみなさんに問いかけました。皆さんなら、どのような技術を取り入れて自分をのこしたいと考えられるでしょうか。
二つ目は、舞台設定に関してです。今年度の選科Aのテーマである「リアル」をイベントにも取り込むため、本物を追求した演出にとことんこだわりました。お店なら扉を開けて入ってくるよね?雰囲気が暗いならチラシの背景も暗めだよね?プランの説明が動画ならBGMも必要だし、動画停止ボタンも必要だよね?お客さんやスタッフの意見も演技ってバレたら伝わらないよね?…などなど、数え上げたらキリがないほど上がりました。細かい演出に注目しながら、ぜひ、もう一度本編をお楽しみください。
スタッフより
しろくまメモリアルを運営したスタッフより、反省点と得られたことを紹介します。
(前列右から)
ほーちゃん:チラシ作成・客役
WAKANA:ナレーション (Siro) 役・BGM
つま:スライド作成・客役・アンケート作成
げなお:スライド作成・AIシロクマ役・ファシリテーション
やの:スライド作成・Zoom進行・スライド送り
たま:スライド作成・客役
(後列)
Special Thanks 朴先生
当日は裏方スタッフが人手不足だったということもあり、テクニカル面では演出に少し不備がありました。しかし、お客様からのリアクションやコメントなどから、顔が見えない状態であっても盛り上がりを感じることができました。
今回のイベントは、スタッフが「リアル (現地)」に集まって制作しましたが、事前にオンラインで顔合わせをしたことで、よりスムーズに企画までの意思決定を行えたと感じます。まさに、ハイブリッド技でしたね。
私たちのイベントでは、自分の「のこし方」についてじっくり考えていただく体験を、「しろくまメモリアル」という非現実的な空間で行いました。サイエンスらしくないサイエンスイベントだったかもしれませんが、正解のない問いを参加くださった皆さんと一緒に考えられたと思います。
今回作り上げたイベントを糧に、さらにレベルアップしたイベント企画を目指します!
本記事は、2022年7月18日(月)に実施した2022年 選科Aオンラインサイエンスイベント「リアル」の報告記事の1つです。CoSTEPの選科Aコースでは、全国各地の選科A受講生が札幌に集まり、オンラインサイエンスイベントをいちから作り上げる3日間の集中演習を行っています。20人の受講生が4グループに分かれ、計4つのイベントが行われました。報告書ができ次第、以下のリンクより、ご覧いただけます。他の活動報告もぜひご覧ください。
・選科A活動報告「科学者の今(リアル)~どうしたら許してもらえますか~」
・選科A活動報告「世界からサメが消えたなら」
・選科A活動報告「科学の「め」」