実践+発信

選科A活動報告「科学の「め」」

2022.9.8

選科Aチーム め。
岡田未来、須藤哲平、古巻史穂、増田有沙、山本典史、(教員)福浦友香

ポスター担当:増田有沙

イベントに至るまで

私たちのイベントの目的は参加者の方々に、科学を通して、世界を見るということの体験をしてもらうこと。それによって、科学の面白さ、現象に対して好奇心と問いを持つ意識を持ってもらうことでした。
今回の集中演習の「リアル」というテーマ、そして、科学コミュニケーションという前提を前に、私たちが考えたことは、「科学とは何か?」「科学的に考えるとはどういうことか?」でした。そこから、「リアル=真実」と捉えたとき、科学を通して見るということは、絶対にたどりつくことができない真理を、論理的、客観的な方法を以って解釈をすることであると考えました。
このテーマをどうやって科学イベントとして成立させるか?ということも同時に考えなければなりませんでした。そこで、まず思いついたことは、科学によって現象が明らかになることを解像度が上がっていくということに見立て、イメージの解像度を変化した画像を順番に提示し、この体験を直接的に表す試みでした。

【役割】
岡田未来 司会、企画
須藤哲平 解説、企画
山本典史 解説、企画
古巻史穂 アンケート担当、企画
増田有沙 ポスター担当、企画

イベント内容

お題1

3個のイラストを順番に提示し、これは何か?という質問をし、チャット欄を使って回答。この画像は、実はキツネの写真を抽象化したものです。

 抽象化されたイラストを提示し、これは何か?という問いかけをしました。徐々に解像度が上がっていくように3枚のイラストを提示しました。それぞれのイラストで同じ問いかけをしました。最初の抽象化されたイラストでは、誰もが回答に迷い、バラバラの回答が出ましたが、解像度が上がっていくことでだんだんと、キツネという真実(リアル)に収束していきました。この体験は、だんだんと手がかりが増え、観察と理論から誰の目からも明らかな真実へと近づこうとする科学そのものを現しています。

お題2

「運動する無数の粒子の動画」を見て、これは何か?という問いでした。

モニョモニョと動くこの映像から皆さん想像力を働かせ、生き物が動くさまなど、様々な回答が出ました。答えは分子の運動を観察した「ブラウン運動」のシュミレーション映像でした。「ブラウン運動」は1827年に生物学者のロバート・ブラウンによって観察された、花粉に含まれる微粒子の動きを水上で観察したものです。後にアインシュタインはこれを分子の熱運動による衝突でおこる現象であると理論づけました。これによって、分子というあまりに小さいために直接観察できないものの存在を示しました。理論から存在を解釈するという科学の「目」を現しました。

お題3

次に雪の結晶の写真を提示し、これは何ですか?という問いかけをしました。

これには、皆さん、ほとんどの方が「雪の結晶」という回答をしていました。勿論、正解です。しかし、科学の目をもって見てみると、違った見方ができると解説の山本さんは言います。北海道大学理学部教授、中谷宇吉郎先生は雪の結晶が大気の状態によって、形状が変化することを示し、中谷ダイアグラムとして発表しました。つまり、その形状を見れば、大気の状態を読み取ることができ、天気を予測できるのです。こうして、知識体系をなす科学の「目」を通して見ることで、雪の結晶という形以上の意味を読み取ることができます。中谷先生は「雪は天からの手紙」と表しています。素敵な言葉です。これも科学の「目」が持つ一つの側面といえるでしょう。
このイベントは、最後に、朝永振一郎先生の言葉の引用をもって締めくくりました。

科学の目を通して、世界をみる体験を通して、皆さんの中にも、あらたな好奇心、科学の「芽」が芽生えてくれればと思います。

アンケートの結果

  1. 科学に対するイメージ
    アンケートでは、イベントに参加する前の「科学」というものに対してい抱いているイメージを聞いてみました。35名の回答が得られました。
  2. 科学に対するイメージは変わったか?
    イベントに参加した後で、1のイメージは変わったかという問いをしてみました。すると、「はい」が20、「いいえ」が10、「わからない」が5となり、参加者35名に対して、半分以上の方からポジティブな回答をいただけました。
    「難しい」や「かたい」という回答が目立ちました。「再現性が求められる」「真実が分かる」といった科学のもつ性質に関するものも見られました。なかには、「面白い」「楽しい」といった意見も見られました。
  3. 科学に対するイメージの変化
    実際にどういったイメージの変化があったかについても質問をしてみました。前述の設問に「はい」と回答した方々からは、「改めて観察の重要さや、科学者のもののみかたを確認できた。」「先入観に捉われ過ぎないことを学べた為」などの回答をいただき、メッセージがある程度伝わったと思います。
    一方、「いいえ」という回答をした方は「自分の考えと同じだったから」という旨の回答がみられました。ベーシックな内容であり、科学に明るいCostep受講者にとっては、既知のことだったのかもしれません。

イベントから学んだこと

今回のイベントを企画するにあたって、私たちが重点的に議論したことは、根幹にあるテーマ「科学とはどういうものか?」ということでした。それぞれの持つ科学論や解釈を話し合い、理解を深めていくこと、それをオンラインイベントとして、みんなで共有できる「体験」に落とし込めるかどうかを議論しました。クイズ形式でコミュニケーションをとるアイデアが着想されました。他の参加者の回答が見られることは、見え方が人それぞれで違うこと、解像度が上がることでその回答が共通していくことが科学が現象を明らかにしていくことを体験としてとらえました。
今回の各お題づくりには、メンバーの専門分野や体験が踏襲されました。最初のイメージは、須藤が実際に知床で出会い撮影したキタキツネの写真が元ネタになっており、ブラウン運動のシュミレーションは化学の教授である山本の専門分野です。メンバー間でも、これらの発想とコミュニケーションからそれぞれにとっての科学の「目」を共有できたように思います。

課題

抽象的で概念的なテーマだったこともあり、主題となったテーマと見せ方の工夫がもう一歩足りなかったことは課題だと思います。また、複数の方から意見があったこととして、各お題ごとの言いたいことに一貫性がない或いは、ストーリー性がないことがありました。また、今回はZOOMを使用したオンラインイベントでしたが、コミュニケーションツールがCHAT欄での回答にとどまり、双方向性があまり考慮できていなかったことも課題に感じました。
コミュニケーションの方法を別のツールを用いるなどして、双方向的なコミュニケーションを創出する工夫ができれば良かったと思います。

チーム「め。」のメンバー

本記事は、2022年7月18日(月)に実施した2022年 選科Aオンラインサイエンスイベント「リアル」の報告記事の1つです。CoSTEPの選科Aコースでは、全国各地の選科A受講生が札幌に集まり、オンラインサイエンスイベントをいちから作り上げる3日間の集中演習を行っています。20人の受講生が4グループに分かれ、計4つのイベントが行われました。報告書ができ次第、以下のリンクより、ご覧いただけます。他の活動報告もぜひご覧ください。

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