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チェンジングブルー気候変動の謎に迫る

2010.11.29

著者:大河内 直彦 著

出版社:20081100

刊行年月:2008年11月

定価:2800円


 本書では、気候変動の謎を紐解くために科学者たちが行ってきた数多くの研究が紹介されている。海洋研究開発機構の研究者である著者が、10年以上前から集めてきた膨大な資料をまとめ、解説をくわえて、気候変動の仕組みと研究者の姿を描いた本である。この本を読み終えれば、どのようにして気候変動が起こっているのか、研究者たちはどのように研究を行ってきたのかなどを知ることができる。身の回りの四季や天気の移り変わりを感じながら、じっくりと地球の気候変動というダイナミックな世界に浸ってみるのもいいかもしれない。

 

 

 地球はこれまで幾度となく気候変動を繰り返し、その変動は数万年といった長い周期から、数十年といった非常に短い期間のものまでさまざまであるということが、多くの研究によって明らかになってきた。例えば、この本の中で、氷床アイスコアから気候変動の復元を初めて行ったウィリ・ダンスガードという研究者の話がある。その人物がアイスコアの分析をするようになったきっかけ、他の研究者との出会い、分析が実際に進み始めるまでのストーリーは、夢が実現するまでの冒険記のようなものだ。どのようにアイススコアを採取し分析を行ったのか、またグリーンランドの氷の下には想像を越えた世界も広がっていたことが、この本を読むと明らかになる。彼は他の研究者とともに、短い気候変動の現象を発見し、その現象はのちに「ダンスガード-オシュガー・イベント」と呼ばれ、短期間に気候変動が起きるという重要な知見をもたらすことになる。

 

 

 また、「放射性炭素の光と影」という章では、ノーベル賞を受賞し、文字通り栄光に照らされた研究者と、悲劇に見舞われその影に隠れてしまった2人の若い研究者の話が書かれている。研究の軌跡を描いたストーリー展開は、研究者たちの研究への姿勢を鮮やかに映し出している。放射性炭素(14C)の発見は、過去の気候変動の研究になくてはならない14C年代測定法の発展に大きく貢献した。もともと14Cは、この若い2人の研究者によって発見されたものであり、彼らは年代を測定するためではなく、光合成のメカニズムを解明するためのトレーサーとして使っていた。彼らのボスは、この発見によって光合成のメカニズムに関する研究が飛躍的に進むと考え、誰よりも喜んだ。しかし、その後2人は悲劇に見舞われてしまい、研究の第一線から退くことを余儀なくされてしまう……。

 

 

 この本を読み終えて、もう一度最初のページに書かれている「いま、このブルー(地球)が少しずつだが着実に変わりつつある」という文を読むと、今私たちが暮らしている地球の変化をよりリアルに感じられるかもしれない。本書は、内容の正確さとともに科学の本では珍しく、流れるようなストーリー展開が魅力だ。気候変動などを専門としない人にも読みやすく、研究者による数々の研究や文献、知識にもとづきまとめられていて、気候変動の本質を知ることのできる一冊である。  

 

 

竹田 真佑美(2010年度CoSTEP選科生、札幌市)