高桑 雅弘(2018年度 本科/学生)
2018年3月30日(土)、チラシ制作体験ワークショップ「SALGRA~Simple Accessible Lovely GRAphic design~」を開催しました。14期グラフィックデザイン実習での1年間の学びをふり返ること、我々が学んだことを他の実習の人たちにも体験を通して知ってもらうこと、そしてグラフィックデザインは誰だってできることを伝えること。この3つを実現するにはどうしたらよいか実習メンバーで考えた結果、ワークショップを開催しようということになりました。修了生を対象に3月9日の修了式から募集を開始し、当日は、修了生を中心にCoSTEPに縁のある方々17名が参加してくれました。
ワークショップのテーマは、参加者にクライアント&デザイナー体験をしてもらうことです。お題は「2020年度のCoSTEP募集チラシを作成せよ」。募集のキャッチコピーは「!をみがく」。このキャッチコピーは、事前にグラフィックデザイン実習のメンバーで話し合って決めました。
(修了式後に何度か集まり、ワークショップのコンセプトを詰めた)
まずは「グループで話してみよう」の時間で、参加者それぞれがもつCoSTEP像を共有したうえで、キャッチコピーをもとにチラシのイメージを膨らませてもらいました。次に「描いてみよう」の時間で、話し合いの内容をもとにチラシのラフ案を作成していただきました。最後に「共有」の時間で、参加者同士でお互いのチラシ案をコンセプトとともに披露してフィードバックをもらう、という流れです。こうして、グラフィックデザイン班が経験してきたチラシ作成の一部を、2時間で体験してもらいました。
モチーフへの「意味づけ」
ワークショップを通して参加者に体験してほしかったことの1つは、「意味づけ」です。意味づけとは、デザインに必然性を持たせる作業のことです。良くデザインされたチラシは、宣伝したいイベントのコンセプトを的確に受け手に伝える働きをします。チラシの中の絵や写真やその他の情報には全て意味がなくてはならず、特にメインモチーフは、そのイベントのコンセプトに合った意味づけがなされたものでなければなりません。この意味づけとはどういう作業なのかを参加者に体験してもらうために、モチーフづくりを1時間かけて行ってもらいました。デザイン経験のない参加者も少なくありませんでしたが、最終的には全ての参加者が自分らしい意味づけをしたモチーフでチラシ案を作成することができました。
(モチーフづくりの段階では手書きがほとんどなので、ワークショップでも紙にペンや色鉛筆で描いてもらうことにした)
デザインのためのコミュニケーション
今回のワークショップで伝えたかったもう1つのことは、クライアント-デザイナー間のコミュニケーションの重要性でした。デザイナーに求められるのは、アウトプットを創りあげることです。そのためには、幅広い知識や情報収集能力と、チラシとしてのカタチにするための発想力やスキルが必要です。しかし、それだけでは十分とは言えません。デザイナーが質の高いアウトプットにたどりつくためには、実はクライアントとの質の高いコミュニケーションが必要とされます。デザイナーでない人がこのことに気づく機会は、なかなかありません。我々グラフィックデザイン実習班のメンバーも、そうでした。
クライアントがコンセプトをつくり、デザイナーがそれを受け取ってチラシのモチーフを考える。作成したモチーフをクライアントに見せてフィードバックを得て、さらにモチーフをブラッシュアップする。これを繰り返すことで、アウトプットとしてチラシが完成します。ワークショップでは、クライアントに見立てた他の参加者に、作成したラフ案を説明しフィードバックをもらうところまで体験してもらいました。
この流れを知っていることは、参加者が今後デザイナーとなって自らチラシを作成するときはもちろん、参加者がクライアントとなるときにデザイナーと良い関係をつくることに役立つだろうと考えました。これが、ワークショップを開催したもう一つの目的です。
(グラフィックデザイン実習のメンバーが各グループごとに1人ずつ付き、記録とファシリテーションを行った)
ワークショップを終えて
グラフィックデザイン実習ではこの1年間、自分が担当するチラシを最初から最後まで1人だけでつくるのではなく、実習内でアイデアを交換しながらチームで創り上げていきました。今回のワークショップの事後アンケートでも、全ての参加者が「他の参加者とのコミュニケーションが自分のラフ案に影響を与えた」と回答したことが印象的でした。様々な立場の人とのコミュニケーションはチラシ制作においても大切だ、ということを共有できたと感じています。
今回はグラフィックデザイン実習がイベントを開催するという珍しい会でしたが、予想を超える人数の方に参加していただき、私たちの経験を伝えることを通して、企画した私たち自身も改めて学びを得ることができました。このワークショップを通して、参加者の皆さんそれぞれのフィールドにおいてもグラフィックデザインを身近なものに感じていただけたら幸いです。