実践+発信

109サイエンスカフェ札幌「カルボニルひもでつむぐ未来の化学見えない分子をソウゾウしよう~」を開催しました

2019.9.25

小川 夏佳(2019年度 本科/学生)

2019年9月15日(日)、猪熊 泰英さん(北海道大学 大学院工学研究院 准教授/化学反応創成研究拠点 主任研究者)をゲストにお招きし、第109回サイエンス・カフェ札幌「カルボニルひもがつむぐ未来の化学~見えない分子をソウゾウしよう~」を開催しました。74名の来場者に、最先端の化学と未来の化学について伝える場になりました。

 

(猪熊 泰英さん(右))

今回のカフェは、対話の場の創造実習の受講生(小川・中村・堀内・本間・四倉)が中心となって企画・運営を行いました。三連休の中日にもかかわらず、多くの方が参加してくださいました。今回のカフェのテーマは「カルボニルひも」、そこで日常の様々なひもを集め、会場内に展示しました。また、「見えない分子をソウゾウしよう」ということで、見えない分子を分かりやすく伝えるために寸劇や質問の可視化、来場の皆様にひもちゃ(ひも状のおもちゃ)を配り実際に様々な形をつくってもらいました。

化学を学ぶ
そもそも化学とはどのようなものなのかについて猪熊さんに解説していただきました。化学とは、身の回りの様々な物の元になる分子をつくることです。生活の色々なところに化学が使われているということが分かりました。そこで出てきた分子の大きさがどれくらいなのかを可視化できるように、分子の世界を中継する形で白衣をきたおじさんが登場しました。髪の毛の断面の大きさと比較し、分子の大きさについて分かりやすく教えてもらいました。

猪熊さんの専門である、有機化学は新しい形の分子を作ります。分子の働きは、分子の形で決まることを、日常にあるものを例に説明していただきました。分子で新しい形を作る方法には様々な種類がありますが、今回は、ブロック遊びと粘土遊びを例にお話して下さいました。猪熊さんが行っているのは、粘土で形を作るということです。ブロックはできる形が元のブロックによって決ってしまいますが、粘土はより自由に形を変化させることができます。子供の頃に行った巻き上げ技法を参考に、粘土をひも状にして形を作ることを考えました。この粘土の形づくりを分子の世界で行ったのがカルボニルひもです。

化学で遊ぶ
日常にあるたくさんのひもについて、対話の場の創造実習生が集めてきた素材の異なるひもや様々なひもの機能について猪熊さんに紹介しました。

猪熊さんが作ったのは「カルボニルひも」。カルボニルとは何なのかについて説明していただきました。カルボニル基があることで粘土のようなペタペタという性質を得るということが分かりました。カルボニルひもは小さい分子を混ぜる、加熱する、分離するなどの方法で作成しており、その様子を動画で紹介しました。猪熊さんたち化学者が行っているのは、北風と太陽のお話に似ていて、分子がくっついたり、離れたりしたくなる”環境”を整えているのだそうです。

カルボニルひもを用いてどのような形を作っていくかはアイディア勝負。ということで会場のみなさんにひもちゃ(ひも状のおもちゃ)で自由に形を作ってもらい、猪熊さんにどのような機能がありそうかを見てもらいました。

化学を考える
mentimeterというツールを用いて会場のみなさんからの質問を可視化し、猪熊さんに丁寧に答えていただきました。会場のみなさんからの質問だけではなく、猪熊さんからの質問も行い、科学者と会場のみなさんの対話をより実現することができたと思います。

未来の化学
猪熊さんが行っているのは、北風と太陽のような化学反応を起こし、カルボニルひもを様々な形にして機能を生み出すことです。しかし様々な化学反応を起こし、分子を狙った形にするのは容易ではありません。それをコンピュータの力で行えるようになる未来を実現するのが、ICReDD(北海道大学 化学反応創成研究拠点)です。猪熊さんが所属するICReDDの紹介もしていただきました。

最後に聞き手を務めた四倉から「将来化学を通じてつむいでいきたい夢」について質問がありました。猪熊さんは、これから化学の研究に意義を感じて研究の道に進む人をつむいでいきたいと語りました。

猪熊さん、ご来場のみなさん、ありがとうございました。

対話の場の創造実習:小川 夏佳、中村 結奈、堀内 浩水、本間 祐希、四倉 直弥