松橋 裕太(2020年度 本科/社会人)
2020年10月25日(日)、藤井 賢彦 さん(北海道大学 大学院地球環境科学研究院 准教授)をゲストにお招きし、第114回サイエンス・カフェ札幌|オンライン 『描け!ぼくらの「海の未来予想図」』を開催しました(動画はこちらからご覧いただけます)。参加者数は最大で65名でした。オンラインでのサイエンス・カフェ札幌は今回で4回目となります。海洋の環境問題について小学生でも楽しんで対話できる場を目指し、YouTube Liveで配信しました。
(藤井 賢彦(ふじい・まさひこ)さん(左)。専門は、地球温暖化・海洋酸性化が海洋に与える影響の現状評価・将来予測・合意形成・対策の研究。海が大好きで潜水士の資格を持っている他、温泉好きが高じて「温泉マイスター」になってしまう程、仕事にも趣味にも熱い人です。)
今回のカフェは、対話の場の創造実習の受講生(折登・片岡・三浦・三井・松橋)が中心となって企画・運営を行いました。目的は、地球温暖化や海洋酸性化といった環境問題が海の生態系にどんな変化をもたらすのかを知り、私たちがどのようなことに取り組んでいけるのかについて語り合うことでした。また、小学生から大人まで楽しめるコンテンツにすることを目標に、途中の動画をゲーム風にしたり、マスコットキャラクターを作ったりするなどの工夫を凝らしました。
お待たせしました!本番の内容についてです。
カフェはまず、ゲーム風のオープニング動画からはじまりました。進行役は、マスコットキャラクター「やんごとなきかもめ」です。海の魅力がたっぷり詰まった映像を見た参加者に、やんごとなきかもめが「お気に入りの海を教えてよ!」と問いかけます。お寿司や美しい海といったさまざまな意見がYouTubeのコメント機能で寄せられました。こうして海の好きなところを参加者間で共有した後、ある巻物が現れました。未来の海の危機が鮮明に描かれた「海の未来予想図」です。
(やんごとなきかもめは、Dr.フジイの研究を手伝う陽気でちょっとお調子者のかもめです。
キャラクターデザインは、アート&デザイン班にご協力いただきました。)
(地球温暖化や海洋酸性化によって、未来の海の生態系がどのように変化するかが描かれた海の未来予想図。
画像は地球温暖化の影響によってサケの北海道へ回遊するルートが遮断される未来を描いたもの
※Kaeriyama et al. 2014, Fisheries Scienceを元にアート&デザイン班の藤田 諒子が作成。)
オープニング動画後、場面は海の研究室に移ります。待っていたのは、Dr.フジイこと藤井さんと、受講生扮する「助手のヨウコさん」でした。「海の未来予想図」に描かれた地球温暖化や海洋酸性化といった問題の原因が、人間の活動によって過剰に排出されている二酸化炭素であること、このまま問題が進んでしまうと海の生物に取り返しのつかない被害が及ぶことが伝えられました。
このまま海洋環境が変わってしまうと、私たちの未来は大変なことになりそうです。しかし、二酸化炭素をまったく出さない生活をするのも難しそうです。ふだんの暮らしや経済活動を継続しながら、二酸化炭素の排出量を抑えるためにはどのようにすれば良いでしょうか?「温泉マイスター」の資格も持つDr.フジイからは、温泉熱を利用したアスパラガスの栽培や魚の養殖といった取り組みが一例として紹介されました。
Dr.フジイの話を聞いた参加者はどのように感じたのでしょうか?「今までの話を聞いて、皆さんがどんな海を守りたいと思いましたか?」という問いかけに対して、参加者からコメント機能で意見を募りました。「食料を守りたい」「お寿司を人生の最後の日に食べたい」「SDGs」「サンゴも含めて美しい海を守りたい」といったたくさんの回答が寄せられました。これらに対してDr.フジイからは、魚の旬が変化する可能性があることや、SDGsにおいて海の項目の認知度が低いことに対する見解、海のない地域に住んでいても日々の生活が海の変化につながっていること、観光資源としての海の重要性、サンゴが住める海域が未来にはなくなってしまうかもしれないこと、毒などを持った危険生物が地球温暖化によって北上してくるかもしれないこと、水温によって二酸化炭素の溶けやすさが変わることなどさまざまな話がありました。参加者の多種多様なコメントに対して、テンポよく、専門家ならではの知見に溢れた答えを返していくDr.フジイの楽しげな様子に、人生の多くの時間を海に捧げる研究者としての姿を見た気がします。
最後に、やんごなきかもめがDr.フジイに問いかけました。
「Dr.フジイにとって海ってなんですか?」
Dr.フジイはこう答えました。
「僕は海を守ることをライフワークとして選びました。一日に何時間も海のことを考えていて、僕に何ができるのか、日々研究し修行しています。海はそれだけの価値がある対象だと思っています。海が大好きです」
大好きものに対して「知りたい」「守りたい」と向き合うこの姿勢は、研究者のみならず多くの人々にとって大切なものではないでしょうか?
Dr.フジイ、ありがとうございました。