10月21日(木)、CoSTEP受講生と修了生を対象としたCoSTEPセミナーが開催されました。今回は、科学ジャーナリストで元NHK解説委員の小出五郎さんをお迎えし、「日本型ジャーナリストの進化」と題して講演していただきました。
40年前にNHK札幌放送局に勤務していたこともあるという小出さんは、当時の思い出話を交え、明治時代にまでさかのぼる日本のジャーナリストの歴史を解説しながら、ジャーナリズムや情報を伝える役割をもつ科学技術コミュニケーターが活動する上での「条件」をお話しされました。
以下、当日の講演内容から、2つのトピックを紹介します。
【記者クラブと現代のジャーナリズム】
記者クラブは、国会、中央官庁や警察、地方自治体などに設置されている、新聞・テレビなど報道各社がメンバーとなる会員組織です。国会記者クラブなどの名前で知られます。情報を受けて報道する記者にとって、まとまった情報を入手できるという大きな利点があります。
この記者クラブは、明治22年に帝国議会が「議会出入記者団」を組織したのが始まりであり、その後、政府主導でいろいろな記者クラブがつくられました。政府にとっては、「都合のよい情報を記者に流す」という大きな利点があったのです。日本固有の記者クラブの歴史の中で、やがて日本のジャーナリズムは『○○氏の発表によると・・・』といった「発表型ジャーナリズム」が主流となり、現在もその状況が続いています。特に記者が自分で出かけ、事実を深く追求するといった「調査型ジャーナリズム」は経費がかかる、人材がいないなどの点から商業ジャーナリズムでは敬遠されています。
しかし、ジャーナリズムが戦時中の軍の「大本営発表」をそのまま国民に伝えたという反省からも、この「調査型ジャーナリズム」はもっと重視されるべきだと考えています。
【情報を伝える人が守るべき「条件」】
上記のようなジャーナリズムが抱える問題点を乗り越えていくために、情報を伝える仕事をする人は、次のような3つの条件を守ることが必要です。この「情報を伝える人」には、ジャーナリストのみでなく、科学技術コミュニケーターも含んでいます。
1. 現場に行って取材すること。
※科学の現場とは、実験をしている研究者だけではなく、その成果を活用する市民を含みます。科学が影響を及ぼす広い範囲に取材に出かけてください。
2. 分かりやすい説明をすること。
3. 取材した事柄の検証を行うこと。
つまり、自分の仮説をもち、その仮説を取材によって検証して、事実に迫るという姿勢と努力が必要です。
今後、科学技術コミュニケーターの役割はますます大きくなり、また就業先も増えてくるでしょう。自分の足で調べ、考える、ということが大切だということを、皆さんにお伝えしたいと思っています。
以上、小出氏の講義から抜粋しました。