実践+発信

学ぶとは何かを学ぶ1│2025年度受講生体験記

2026.3.15

吉川 颯真│2025年度 本科ライティング・編集実践演習
北海道大学大学院理学院宇宙理学専攻 修士2年

研究室活動の一環で毎年行っている高校生向けの出前授業、研究会で聞いたアウトリーチ活動の実践報告、東京の学術バーでの出会い、日ごろからSNSで見ていたデータストーリーテリングの動画。大学院の1年目は、一見社会とのつながりが可視化されづらい惑星科学という自分の研究分野をどのように社会へ伝え、還元していくのかについて、知らず知らずのうちにアンテナを張っていたのかもしれません。

修士課程2年目の2025年度、卒業年の年度末の忙しさを覚悟してCoSTEPの門を叩くことに決めました。

毎週土曜日の3限に開講された『講義』では、サイエンスコミュニケーションに取り組む様々な方が登壇し、お話を聞く機会を得ました。授業を受け始めた当初の私にとって、サイエンスコミュニケーションとはいわゆる啓蒙活動・アウトリーチの域を出ておらず、対象とする問題や対話相手が多岐にわたっていることに驚きました。

また、多くの講演者に共通していたのは、「学ぶ」というプロセスを細分化し、言語化していた点です。サイエンスコミュニケーションの目的は、対話相手への行動変容であり、その途上に対話相手の「学び」をデザインする必要があります。そのデザインのために「学び」とは何かを熟知しておく必要があるということに気づきました。

講義で学ぶ筆者

対話相手の「学び」のデザインは、私たちの発信なしにはなしえません。毎週水曜日の6限に開講された「演習」では、様々な形式での発信の仕方を学ぶことができました。これを通して、講義を通して得た学びを実体験できました。

また、私は本科ライティング・編集班のメンバーとして、毎週土曜日の午前に集合し、年間を通してCoSTEPが運営するWebマガジン『いいね!Hokudai』に記事を寄稿する活動を行いました。

7月にインタビューに伺い、8月に記事を公開した、ワクチン研究開発機構 IVReD でのインタビューは、まさに私が目指していた「学問をどのように社会へ公開していくか」の試金石となる活動でした。この活動を通して、「誰に」「どうしてほしいか」という目的を具体的に設定してから行動を起こす重要性に気づき、当初私が持っていた目標についてもよく考えるきっかけになったインタビューです。

ワクチン研究開発機構 IVReD でのインタビュー

また、秋から修了にかけて制作した、新入生向け北大紹介冊子『SCoPE』は、年間を通して寄稿した数十本の記事を盛り込む中で(やや後付けな部分もありながらも)対象や目的が少しずつ固まっていきました。私たちが当たり前のように手に取っている雑誌やパンフレットの一つ一つに、発信のヒントが隠されていることに気づくと同時に、短いスパンでコンスタントに魅力的な雑誌を作り続ける難しさを実感しました。この小冊子『SCoPE』は2026年度の入学式や北大祭・オープンキャンパスで新入生や高校生向けに配布を予定しています。

『SCoPE』の記事に向け、インタビューにのぞむ筆者

実践演習は、就職活動や一人で手を動かす研究活動では体験できない1年という長期間かつ複数人でのプロジェクトです。この活動を通して、複数人でプロジェクトを進めていく過程での立ち回りやどのような役割を果たすべきかについても、同じ班のメンバーから多くを学ぶことができました。この学びは、大学院生の間は普段の研究室の活動や他の研究者との共同研究にすぐ応用していこうと思っています。

私はCoSTEP のプログラムを修了しました。しかし、例えば明日からいきなりサイエンスコミュニケーターとして一から自分で活動をデザインしていくのは難しいと肌で感じています。今回の学びは自分の中で「身体知」にとどまっており、これを「構造化・言語化」していく時間をじっくりと作って、今後、私が専攻する惑星科学のトピックでどのようにサイエンスコミュニケーションを行うのかを考えていけたらと思います。

ライティング・編集実践演習のメンバー