「科学技術コミュニケーション講座? よく分からないけど、面白そう」学食のテーブルにあった三角ポップを見てそう思った私は、CoSTEPの門をたたきました。私は幼いころ、おとなしくて思いを伝えることが苦手だったため、人一倍コミュニケーションに興味がありました。さらに学生生活最後の年を後悔しないために、自分が興味を持ったことにチャレンジしてみようと思ったのです。
いざ、授業が始まってみると目新しいことの連続で、自分の無知を痛感しました。現在、社会に横たわっている科学技術コミュニケーションに関するさまざまな問題、コミュニケーションに関する基本的な考え方について学びました。特に印象的だったのは、「何かを作るときに最も大切なことは、だれに何を伝えるかを一番に考えることである」ということです。当たり前のようですが、今までの自分にはできていなかったということに気づき、ハッとしたのです。それ以降はこのことを意識してゼミや学会の資料を作るようになり、以前よりも「伝わる」プレゼンテーションができるようになりました。
サイエンスカフェ実習は、文字通り学んだことを実践する場でした。カフェを通じて参加者の方々に伝えたいことは何か、どうすれば伝わるかを、メンバーみなで頭を抱えながら考え抜き、構成や配布資料、広報用のポスターを決めました。その結果、参加者アンケートでは、ゲストの研究のおもしろさが伝わったという意見を多数いただき、成功を収めることができました。イベント企画・運営のスキルはもちろんですが、メンバー同士のコミュニケーションの大切さも学ぶことができ、チームで1つのモノを作り上げるという充実感を得ることができました。
CoSTEPでの1年は本当にたくさんの大切なことを学んだ、学生生活で最も充実した年でした。研究との両立は思った以上に大変でしたが、やり通せたことが自信につながりました。私の運命を変えてくれた、あの三角POPに感謝したいくらいです。しかし、それより何より感謝をしたいのは、CoSTEP で出会った志の高い個性の強い仲間たち、素敵な人生の先輩たちです。みなさんの生き方、考え方に触れ、刺激を受け、視野が広がりました。これからも、ここで学んだことを活かして、コミュニケーションを続けていきたいです。
- 中村 文香
- 北海道大学大学院 総合化学院 化学システム工学研究室