実践+発信

SAPPORO DESIGN WEEK 2015 出展企画「チ農学校細胞工作研究所で作って学ぼう!~」を開催しました。 (1/2)

2015.12.22

【レポート:髙橋香帆(北海道大学 農学部 生物資源科学科4年・2015年度CoSTEP本科 デザイン実習)】

「みなさん、大変長らくお待たせいたしました。いよいよチ・カ・ホ農学校、開校です!」

2015年10月25日午後2時、満を持して、チ・カ・ホ農学校 細胞工作研究所は開校しました。

私たちCoSTEP11期デザイン実習のメンバーとその仲間たちは、札幌都心の地下を貫く「札幌駅前通地下歩行空間(通称チ・カ・ホ)」に子供向けの理科教室を開校しました。その名も「チ・カ・ホ農学校 細胞工作研究所」です。チ・カ・ホ農学校は、子供たちに「細胞」のスゴい!ところを知ってもらおう、という気持ちから生まれたサイエンスワークショップです。

大盛況!開校前から長蛇の列

イベント当日の札幌は寒波に見舞われて初雪が降るほどの寒さとなりましたが、地下で開催されていたチ・カ・ホ農学校は、あふれんばかりの人々の熱気に包まれていました。なんと、開校時間の午後2時になる前から既に子供たちの行列ができていたのです。これにはスタッフ一同びっくり。なぜならチ・カ・ホは、人を立ち止まらせるのが難しい、つまり参加者を集めるのが難しい場所だと事前のリサーチで把握していたからです。子供たちの期待を裏切らないように、と身が引き締まる思いです。さあ、がんばろう!

ガチャポンカプセルで光る細胞をつくろう

開校前から列ができた理由、それは、チ・カ・ホ農学校最大の目玉である「細胞カプセル」にありました。チ・カ・ホ農学校ではまず初めに、ガチャポンカプセルを使って細胞の模型(細胞カプセル)を作ります。この細胞カプセルにはLEDライトとボタン電池が仕込まれており、完成するとピカピカと光る仕組みになるのです。この光に子供たちは大喜び。地下で薄暗いチ・カ・ホに細胞カプセルのキレイな光が瞬き、あっという間に子供たちが集まってきました。

細胞カプセルを作るためには、まず入口にある手作りのガチャガチャの箱の取っ手を回します。箱の整備をするのは佐々木学さん(研修科/北海道大学職員)です。コロンと出てきたカプセルの中には、毛糸玉、LEDライト、ボタン電池、ぬり絵台紙、シールなどたくさんの部品が入っていて、これらが核、ミトコンドリア、小胞体などの細胞内の構造物になります。子供たちはキラキラペンやシール、ボンドを使って手を動かしながら、ワイワイガヤガヤ細胞工作をしていきます。

ちょっと難しい工作の作業を手助けするのは、細胞工作指導員こと中村俊介さん(本科 デザイン実習/北海道大学農学院修士1年)、松尾知晃さん(本科 デザイン実習/北海道大学農学院修士1年)、佐々木萌子さん(本科 対話の場の創造実習/北海道大学薬学部5年)、芹沢領さん(選科A/北海道大学農学院修士1年)です。

細胞って何なの?ミニレクチャーで勉強だ!

「できた!」

次々と子供たちが世界に1つだけの細胞カプセルを完成させていきました。カプセルが完成したら、今度は細胞工作指導員による「細胞」についてのミニレクチャーです。細胞って何だろう?細胞の中はどうなっているんだろう?細胞の中にあるDNAって何だろう?こういった生命の根源に関わる大切な事柄について、指導員たちは丁寧に解説します。生き物は細胞からできているけれどテーブルやイスは細胞からできていないことに、子供たちはびっくり。生き物って不思議だね。

目指せ!○×クイズ3問正解!

子供たちが次に挑むのは、細胞のスゴい!ところをテーマにした○×クイズです。クイズエリアで子供たちを待っているのは、クイズお姉さんこと池田陽さん(本科 デザイン実習/北海道大学農学院修士1年)と内山明さん(2014年度本科修了生/北海道大学農学院修士2年)です。

「植物が緑色なのは、ペンキ屋さんのせい、○でしょうか×でしょうか?」

「ヒトの細胞のDNAの長さは2 mである、○でしょうか×でしょうか?」

池田さんの明るい声が会場に響くと、子供たちは○のエリアと×のエリアを行ったり来たりして問題に答えます。友達と相談したり、持っている知識を総動員したり、ちょっとだけお父さんお母さんにヒントをもらったりと、子供たちは真剣にクイズに挑んでいました。正解した子供には、事前に配られたスタンプカードに、内山お兄さんがスタンプを押します。さあ、スタンプが3つ集まると何が起きるでしょうか?

なんと、クイズに3問正解すると7色に光るLEDライトをゲットできるのでした。一生懸命クイズに正解し、遂に7色LEDライトを手に入れた子供たちの顔はとっても誇らしげでした。よくがんばりましたね!職人技でライトを取り換えてくれたのは、池晃祐さん(本科 対話の場の創造実習/北海道大学農学院修士1年)と立花誠治さん(北海道大学農学部4年)です。

たくさんの細胞カプセルと一緒に記念撮影

最後は、頑張って作った自分だけの細胞カプセルを持って記念撮影。カメラマンを務めるのは苫米地由香さん(本科 デザイン実習/北海道大学生命科学院修士1年)です。撮影場所にはたくさんの細胞カプセルの展示や大きなバルーンがピカピカと光りなんとも幻想的。みんなとってもいい笑顔でした!

おわりに

約4か月間にわたって企画を練ってきたチ・カ・ホ農学校は、大盛況のうちに幕を閉じ、用意していた細胞カプセル100個はイベント時間内で子どもたちの手にすべて渡りました。参加者が多かったことはもちろん嬉しいことでしたが、なによりも子供たちの満点の笑顔をたくさん見られたことは、とても幸せなことでした。

とはいえ、当日までの道のりは決して平坦なものではありませんでした。今回のイベントは制作物が多かった上にタイトなスケジュールで、時間のやりくりに苦労しました。しかしそのような中でも、メンバー全員がとても質の高い仕事をこなしてくれました。上の文章では書かれていませんが、チ・カ・ホ農学校のロゴマークデザインを池田さんが、チラシデザインを苫米地さんが、会場モニターの映像を中村さんが、ガチャガチャの箱の制作を松尾さんが、そして細胞カプセルのデザインを私(高橋)が担当しました。デザイン実習メンバーの個性と能力が100%発揮されたことも、イベント成功の大きな一因だったと思います。

私たちは、子供たちが手を動かしたり走り回ったりして、とにかく子供たちが主役になって楽しむワークショップにしたい、というコンセプトでずっと企画を練ってきました。果たして「大人でかつ生命科学を専門とする人間」が練った企画を子供たちが楽しいと思ってくれるのか、と言う不安は常にありましたが、当日の子供たちの笑顔を見るとそんな不安も吹き飛びました。子供たちの楽しそうな様子のおかげで、スタッフも一緒になって楽しく運営できたことがチ・カ・ホ農学校のとてもステキな成果だったと思います。

最後に、今回のイベントの成功は、スタッフの皆さんの協力無しには実現しませんでした。いいイベントにしたいという皆さんそれぞれの熱い思いが、こうして大きな実を結んだのだと思います。本当にありがとうございました。

>>チ・カ・ホ農学校のアンケート結果はこちら!<<
2016年度キッズデザイン賞を“子どもの創造性と未来を拓くデザイン部門コミュニケーションデザイン分野”で受賞することができました。