実践+発信

科学技術コミュニケーターキャリアを考える研究会を開催しました

2019.2.27

科学技術コミュニケーションのキャリアを考えるため、不定期で開催予定の「科学技術コミュニケーターのキャリアを考える」研究会。第一回は、科学技術コミュニケーションを事業の軸として起業された、科学コミュニケーション研究所代表の田原敬一郎さんをお招きして、「科学技術コミュニケーションで起業する~科学コミュニケーション研究所(SCRI、以下さくり)の事例~」というテーマで実施しました。

(なんとこの日ジャケットを失くしたという田原さん。札幌も徐々に暖かくなっています。)

さくりは、非営利シンクタンクで科学技術政策の調査研究を生業としてきた田原さんと、国の研究資金配分機関で科学コミュニケーション活動の実践や支援に携わっていた白根さんのお二人が立ち上げた会社です。

公共的問題の解決の仕組みには、政府による公共政策だけではなく、NPOなどによる自律的な活動や社会的企業などによる市場メカニズムを通じた取組もあります。これらの仕組みが相互によい影響を与えつつ補完しあう状態を作れればよいのですが、社会を構成する多様な人々の間でのコミュニケーションの問題もあり、うまくいっていないのが現状です。

さくりはこうした状況の改善に「科学コミュニケーション」という観点から少しでも貢献できれば、という思いから立ち上げられました。さくりは小さな会社ですが、科学コミュニケーションに関わりたい人が活躍できる市場づくりを目指すことで、政府頼みではない持続的な問題解決の仕組みを作りたい、という思いもあったそうです。

(修了生、受講生合わせて10名ほどの関係者が集まりました。)

参加者からは実際、どのような体制で会社を運営しているのか、広報やアウトリーチだけではない科学技術コミュニケーション事業の難しさはどこにあるのかなど、様々な質問や意見が寄せられました。営利活動と公共性の調和をどのように図っていけばよいのか試行錯誤しつつも、科学コミュニケーションをめぐる社会のニーズは研究者周りだけではなく小さな地方自治体など様々なところにあり、やり方次第ではきちんとした仕事になること、3年目を迎えた今では、取り扱う内容も顧客も格段にひろがってきたことなどが具体的な仕事の内容とともに紹介されました。

シンクタンクなどでの仕事を通じて蓄積してきた知識やノウハウ、経験が市場という仕組みの中では通用しないことも多く、ほとんどゼロベースで方法論を見直しているそうですが、それ自体がとてもエキサイティングで楽しい、とおっしゃる田原さん。科学技術コミュニケーションが社会に必要とされていること、そして、それを学ぶ人たちが活躍できる場や機会が無限に広がっていることを感じさせてくれる研究会でした。


(とりあえず今回、グラレコ風のものを板書してみました。しかしグラレコやまとめ記事からこぼれ落ちるものに真理があることをお忘れなく!)