5月7日(土)、CoSTEPの2011年度の授業がいよいよ始まりました。
年度最初の講義は、例年、一般市民の方々にも公開して行なっています。今年は、2000年にノーベル化学賞を受賞された白川英樹氏をお迎えし、「アカデミズムと社会 〜社会とのコミュニケーションの在り方について未来を展望する〜」というテーマで講義をしていただきました。
会場の北海道大学 学術交流会館 小講堂には、受講生のほか一般市民も含め、計170人ほどの方々が集まり、白川氏の講義に熱心に耳を傾けました。
白川氏は、2003年〜04年に、日本科学ジャーナリスト会議が主宰する「科学ジャーナリスト塾」に入塾し、自ら取材や報道の実務を体験されました。研究者として大学にいたときに、マスメディアによる科学技術報道の貧弱さを痛感したことが、理由の一つでした。
研究者として自分ははたして社会にどれだけ貢献しただろうかという思いもあるという白川氏は、「役に立ちそうにない研究」も人類の知的共有財産として大切にしなければならない、「理科離れ」の根本的な原因は、「社会全体が科学や技術に関して冷淡」なことにある、科学者や技術者は学会に向けて発表するだけでなく、もっとメディアに向けても発言するべきだ、などと指摘。
そのうえで、「研究者個人ができる枠を超える部分は、科学技術コミュニケーターが活躍する領域であり、学者・研究者個々人と社会との橋渡しをするのも科学技術コミュニケーターの役割だ」と指摘されました。
その後、CoSTEP代表の講義「はじめよう! 科学技術コミュニケーション」があり、16時30分からは学内のレストランに場所をかえ、受講生と教員の懇親会が開催されました。
翌日5月8日(日)には、石村源生・特任准教授の講義「実習入門」が午前中にあり、午後は本科だけでなく選科の受講生も加わって、ワークショップ「このチームで何ができるか?」が行なわれました。これから一年間、ともに支え合いながら活動していく仲間との、最初の共同作業でもあります。
「災害に備え子供たちにどのような防災教育をしていくか」
「家畜や実験動物も含め,あらゆる命をとりあげるワークショップの企画」
「札幌市地下歩行空間を利用したサイエンスイベントの企画」
「理系男子,理系女子の婚活支援」
など、本格的なテーマもあれば、タイムリーなテーマもあるといった具合で、多様な企画が提案されました。
自ら取組むべき「課題」を真剣に考えた受講生たちにとって、今回のワークショップは、これから一年間の学習の目標を、しっかり見定めるきっかけになったようでした。