実践+発信

研究者を目指す人にも必要なコミュニケーション能力

2010.4.7

私が北大大学院に入学してCoSTEPを受講した理由と、この1年間でどんな学びをしたかについてお話します。私は学部生の頃、本州の大学で植物の研究を行っていました。将来は研究者になろうかな……と考え始めた大学2年の夏、ある科学祭で、市民の方々に向けて研究発表を行いました。自分では面白い研究テーマだと思ったのですが、実際に発表すると、来場者は、「難しい」、「つまらない」という反応でした。発表が独りよがりで自己満足にすぎなかったことに気づいた瞬間でした。この経験から「研究者であってもコミュニケーション能力が必要」と考えるようになり、学部3年の初めには、北大大学院へ進学し、科学研究をしながら、CoSTEPで科学技術コミュニケーションについて勉強しようと決意しました。 私は、デザインに興味があったので、CoSTEPではグラフィックデザイン実習を選択し、1年間「デザインを通して科学を伝える方法」について勉強してきました。具体的な活動内容はサイエンスイベントのポスターの作成や冊子の編集などです。その道のプロの先生からの厚いご指導や、メンバーとの話し合いを通して、デザインで大事なことは上手い絵を描き、きれいな写真を撮ることではなく、「誰に何を伝えて、どんなことに気づいてほしいか」を明確にし、一枚の紙の上で情報を整理し「気づきのきっかけ」を与えることだと考えられるようになりました。 また、もう一つの実習であるサイエンスカフェ実習では「対話の場の創造」というテーマで「科学者」に焦点をあてたユニークなカフェを行いました。難しいテーマではありましたが、多くの仲間とときに衝突し、泣き、笑いながら、あきらめずに一つのイベントを作ったことはとても貴重な経験です。このようにデザインやイベントの企画、運営を実践的に学べたことは、研究や就職活動をする上でも、私の自信と武器になっています。 院生や研究者の皆さん、今年は研究室を少し飛び出し、様々なバックグラウンドをもつ受講生同士で「科学」について考えてみてはいかがでしょうか? 1年間を通してCoSTEPでできることは限られていますが、「やりたい!」と言ったときに興味をもって協力してくれる多くの仲間を得ることができます。 「社会に還元できない研究は研究者の自己満足だ」と言われてしまう現代、積極的に情報を発信できる力は、研究者であってもそうでなくても絶対に必要な「コミュニケーション能力」の一つだと思います。多くの仲間とそれらを体系的に、実践的に学ぶことができるCoSTEPって、なかなか面白いユニットかもしれませんよ?

百目木 幸枝
北海道大学大学院生命科学院 修士課程