実践+発信

チラシデザイン:書を捨てよ 海へ出よう洋上のキャンパスおしょろ丸とともに

2015.2.27

カテゴリー:チラシ・ポスター/イベント:サイエンス・カフェ札幌/制作者:渡邉綱介(2014年度本科・生命科学院修士1年)/制作年月:2015年1月

チラシのデザインを担当したのは、本科グラフィックデザイン実習を専攻している渡邉綱介さん(2014年度本科・生命科学院修士1年)。渡邉さんの制作レポートを紹介します。

チラシの印象は?

みなさんがこのチラシを見て抱く第一印象は何でしょう。私が聞いた限りでは「かっこいい」という感想が多かったです。チラシデザインの最低限の役目は、人に「おっ」と言わせて惹きつけること。サイエンスカフェの内容までは人に届かずとも、「かっこいい」というイメージは、人目を引く役割を果たしているのではないでしょうか。

チラシに隠れたメッセージ

今回のデザインは、歴代のサイエンスカフェのチラシと比べて手間がかかっていません。カフェのテーマ、おしょろ丸を撮影してきたのは、指導教員の大津先生と出村さん。私が行った作業は、それらの写真から一枚を選びとり、写真の奥に光を配置しただけです。それでも、一つ一つの作業にメッセージを込めました。

まず、なぜこの写真を選んだのか?短い時間で人にアピールするチラシの性格上、一目で船と分かり、かつ船の迫力が伝わる方がいいです。そして、おしょろ丸の未来を考えたい、というカフェの狙いを意識し、船が前を向いたアングルの写真を選びました。

では、船の先の光は何を意味するのでしょう?まずは、昨年生まれ変わり、教育や研究の幅が広がったおしょろ丸Ⅴ世、その将来の成果に期待を込めたシンボルです。さらに、ゲストの星さんが重視する海洋教育と藤田先生の専門、博物館映像学をおしょろ丸に見立てたとき、光は両者に対するスポットライトを意味します。カフェを通して、2つの分野に人々の関心が集まることを期待しているのです。そして、新年1回目のサイエンスカフェ札幌ということで、初日の出を意識した光でもあります。でも、チラシをぱっと見て、ここまでのことが伝わる必要はありません。船だ、それもなんだかかっこいい船だ、それが伝われば十分なのです。

こだわりを捨てよ

作業自体は大したことがない、では、チラシ作りが順風満帆に進んだかというとそんなことはありません。アイデアと技術、歴代のチラシ作成者が直面する2つの壁は、私の前にも立ちはだかりました。

カフェ前にゲストの2人が強調していたのが、船そのものよりも船上の人の活動やつながりに焦点を当てたい、ということでした。私もそこにこだわって、写真を使いつつ、人の活動を想起させるデザインにしたいと考えていました。しかし、アイデアはなかなか形になりません。

そんな中、藤田先生との打ち合わせに同行する機会をいただきました。映像学を熱く語る藤田先生に、こちらも時が経つのを忘れるくらい聞き入りました。特に印象に残ったのが次の言葉です。「自分がこだわって撮影した映像は編集時に切り捨てることが多いです。思い入れの強い映像は、人に分かりやすく伝える、という姿勢に合わないことがあるのです。」これはチラシ作りにも当てはまるんじゃないか、と気がつきました。

難しい内容の表現にこだわっても、なかなか人には伝わりません。「今回は船に関する話だということだけがデザインから伝わればいい。カフェの内容は裏面のテキストに任せよう。」そう考えると気が楽になりました。

デザインの道は長い

アイデアがまとまった。そこからは、順調だったかというとそうでもありません。技術面では大津先生にかなり助けていただきました。テキストの配置は先生の案、その他細かい修正も先生にしていただき、洗練されたデザインに仕上がりました。

デザインを学び始めて一年目。海の謎を探究するおしょろ丸Ⅴ世と同じく、私も知らないことがたくさんあるデザインの世界に乗り出したばかりです。デザインの面白さに気づき始めたものの、一人で一枚のチラシを作り上げるにはまだまだ力が足りません。デザインを磨いた先、光の向こうには、どのような風景が見えてくるのでしょう。

最後に、関係者の皆様はもちろんのこと、一年で最も寒い時期にカフェの会場まで足を運んでいただいたお客様、ありがとうございました。カフェもチラシもお楽しみいただけたでしょうか。