私が科学技術コミュニケーションという道具に手を伸ばしたきっかけは、「なんとなく」といった先入観や、拾ってきた情報を鵜呑みにしがちな社会に、疑問を覚えたことでした。周囲に「そんなことないよ!」と声を上げてみても、私の想いはなかなか伝わらず、どうすればいいのだろう…と日々悶々としていました。また、実際に理科教室を実施してみて、わかりやすく説明することの難しさを痛感したことも、私の行動を後押ししたのだと思います。そんなとき、学内メールで紹介されたのがCoSTEPでした。
もしかしたら、私のこのモヤモヤも解消できるのではないかと思い、受講を決めました。私が受講したのは選科B、集中演習を通じてライティングを学ぶ講座です。演習の3日間くらいなら、ちょっと研究の息抜きにという感じで大学院生もスケジュール調整できるのではないかと思います。
CoSTEPの選科では、e-learningを通じて毎回異なる講師の方々の講義を視聴します。少し難しいなと思う講義もありましたが、思ってもみなかった視点から展開される講義は科学コミュニケーション以外の場でもつかえる学びもたくさんありました。また、モジュールごとに課題があり、そこで講義で得られた学びを実際にどう結び付けていくのかを考えていきます。定期的にふりかえり、考え、自分の言葉で表現することで、学びはより深くなっていきます。
選科を考えている人に1つアドバイスを。課題には締め切りがあります。講義動画を溜めすぎないことが選科生には大切なことだと思います。急いで視聴するのは勿体ない講義ばかりです。どうぞ、計画的な視聴を!
集中演習では、事前に書いてきた課題文の他にエッセイやコラムなどにも挑戦します。PCの画面の向こう側にいた先生方と多様なバックグラウンドを持つ受講生に出会い、互いの文章を読みあい校正していきます。書いて、読んで、書き直して…。お互いの背景が違うからこそ、いろいろな助言が得られ、ハッと気づかされる場面がいくつもありました。
普段、研究室にいると同じ分野の学生や先生と議論するので、この3日間の受講生、そして先生方との議論はとても刺激的でした。集中演習で出逢った人とのつながりは私にとってかけがえのないものとなりました。新しいコミュニティを求めている人にも、CoSTEPは良い「場」となると思います。
CoSTEPで1年間学び、私はモヤモヤの解消方法の輪郭をつかんだと思っています。これを明確な形にするには、これからも考え、行動に移していくほかありません。修了した今こそ、やっと始まりなのだと思います。
こちらからの一方的な「伝達」を双方向的にすること。お互いのことを想像し、知っていくこと。これは私が手に入れた宝物の一部です。CoSTEP受講生それぞれで宝物は違うでしょう。これから受講を考えている人も、それぞれにきっと宝物が見つかると思います。
木下麻美(選科B)
大学院生