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選科A 成果発表コンテンツ

2022.3.12

2021年4月、私たちはCoSTEPという未知の世界に足を踏み入れました。全国各地から様々な目的を持って集まった17期選科Aメンバーが案内人となって、この1年間の学びを振り返ることで、私たちなりに見えてきたCoSTEPをこのサイトに訪れた皆さんにご案内します!このガイドは17期選科Aのメンバーにアンケートをとり、その結果に基づきまとめたものです。本ガイドが、今回修了を迎えた選科Aメンバー同士、そして、これからCoSTEPという大地に足を踏み入れる方々にとって、少しでも参考になれたら大変嬉しく思います。

選科Aの案内人たちってどんな人?

最初に、今回の案内人となる私たち17名についてご紹介します!メンバーには、学生が7名、社会人が10名います。学生は各々専門を異にする大学院生で、社会人には企業に勤めている人、研究機関に所属している人、アーティスト、主婦などから構成されています。

さらに、CoSTEP17期では、1年を通して原則オンラインでの受講形態が前提であったため、居住エリアの範囲も全国に広がっています。選科Aの代表的なカリキュラムであるサイエンスカフェを想定したイベント演習も、準備作業を含めて全てオンラインで開催したんですよ! いやぁ、大変だったなぁ、あのときは・・・っと、この話はまた後半で。

このように、様々な背景を持つ総勢17名の選科Aメンバーがガイドとなって、私たちの1年間を「案内」していきたいと思います!

私たちの1年間

私たちは、この1年間で計6単元から構成された「モジュール」と呼ばれる講義を受講しました。選科Aの活動としては、6月に開催されたランチタイムミーティングでの顔合わせから始まり、ミニレクチャーを受けながら、8月初旬には4つのチームに分かれて、夏の集中演習実施に向けた企画を開始しました。本番は「Energy」という大きなテーマの下、集中演習という名目の通りに約1か月という短い準備期間を経て、8月末に行いました。下に挙げた名称は、各班のメンバーたちが演習内容にちなんで命名した班名です。各班が実施したオンラインイベントの活動報告先へのリンクとなっていますので、名称から内容を想像しながら、ぜひcheckしてみてください! 

CoSTEPを振り返るには?

私たち案内人が、この1年間を振り返りながら、CoSTEPを見つめ直す上で活用したのがSD法と因子分析です!

「1年間の学びを通してCoSTEPに抱いている印象」という質問(=刺激)に対するSD法のアンケートへ事前に私たち案内人が回答し、その結果を用いた因子分析によってCoSTEPの「探索」(=評価)を試みました。それぞれの案内人が抱いたCoSTEPに対する印象の違いや、その逆の類似性など、隠れていた相関の「見える化」を試みました。「探索」を始める前に、SD法を用いた因子分析方法について、ちょっとだけ紹介しておきます!

手順を簡単に説明すると、まず最初に計31個の評価項目を用意して、次の表に示すような7段階で答えるアンケートを実施しました。その結果をまとめたものは、箱ひげ図として下に載せています。

次に、上のアンケートの結果に対し、3つの共通因子を仮定して因子分析を行い、各項目がそれぞれの因子にどのくらい強く影響しているか(因子負荷量)を計算します。その結果、最終的に計22個の評価項目が得られました。続いて、評価項目間の相関性や印象の強さをみていきましょう。22個の評価項目に対する因子負荷量を下表に示します。因子負荷量の大きさから、3つの共通因子に対して影響度が大きいと思われる箇所を、分かりやすく3色で塗りつぶしています。

 

ここでは、3つの共通因子の特徴的な評価項目から総合して、第1共通因子を「講義内容」、第2共通因子を「講義スタイル」、第3共通因子を「空気感」に対する印象度としてみることにしました。つまり、私たちは、これら3つのスコープを通して、CoSTEPの印象を振り返っていると判断したのです。

多岐分野にわたる授業、オンラインで挑んだ集中演習、全国各地から参加したモニター越しのディスカッションなど、印象的な出来事が多かったCoSTEPでしたが、因子分析から予期せず得られたこれらの結果は、私たち案内人自らが直観的にも“ふむふむ、なるほど”と言える、まさにこの1年を反映したポイントだったのです。さあ、これらの観点から見える「CoSTEP」をともに振り返っていきましょう!

観点別探索コーナー

CoSTEPに対し抱いている「講義内容」「講義スタイル」「空気感」の3つの観点の中でも、案内人のみんながそれぞれに、どのくらいの印象度を抱いているのかを分析してみた結果が次の図です。

これは3つの印象を軸にした三次元空間に、一人ひとりの抱いている印象度合いをプロットしたものです。

例えば、図の中のAさんとBさんは、それぞれ「講義内容」と「講義スタイル」への印象度が、CさんとDさんは「空気感」への印象度が高かった人ということになります。

各観点に対してどのような印象を持つ人が、どのようなコメントをアンケートに記入したかをみることで、「CoSTEP」を探っていきます。

ところで、上の図で紹介したAさんたちのこぼれ話も聞いてみましょう!

講義内容について

それでは早速、「講義内容」という観点で見ていきましょう!

講義内容は、科学技術コミュニケーション概論、表現とコミュニケーションの手法、活動のためのデザイン、科学技術の多面的課題、多様な立場の理解、社会における実践の 6 つのモジュールから構成されていましたが、この観点の印象度合いが大きかった案内人のコメントをみてみます。

講義スタイルについて

次に「講義スタイル」という観点で見てみましょう!

全てオンラインだった講義や集中演習でしたが、この観点の印象度合いの大きい案内人はどんな感想を持っているのでしょうか。

 

オンラインでの準備作業は本当に大変でしたが、みんなで工夫して臨んだ演習だからこそ、本当に貴重な体験ができたと思います。

空気感について

最後に、「空気感」という観点で見てみましょう!

ちなみにこの「空気感」という言葉選びは、オンラインだったことが背景にあります。その場にいて感じられる「雰囲気」とは別の言葉の方が近いと思いました。

モニター越しでのコミュニケーションがほとんどでしたが、このような環境での「空気感」という観点には、どのような感想を持っているのでしょうか。

オンラインでも、この1年の活動を通して、様々なバックグラウンドを持つ方達と密なコミュニケーションをとることができ、「良い空気感」を感じることができたように思います!

見えてきた「CoSTEP」と私たちのこれから

さて、選科Aの案内人の振り返りを通して、CoSTEPを探索してきましたが、あなたの目にはCoSTEPがどのように映りましたか?今回紹介できなかった他の案内人たちの思いや新たな目標、決意などを下の図にまとめておきます。

1年前、17期選科Aの案内人たちは皆それぞれの目標を掲げた上でCoSTEPへ参加しました。

目標は十人十色、科学技術コミュニケーター志望の学生、ビジネスとして起業したい社会人、現在の研究テーマでアウトリーチ活動に生かしたい人など様々でした。

CoSTEPでの学びを通して事前に設定した目標にどこまで近づいたと感じているか、案内人全員の回答結果を最後の道しるべとして示します。

「あれ?到達率がちょっと低くないですか?」、そう感じた方も多いかもしれません。

しかし、この回答の理由として集まったコメントの中を覗いてみると、違った感想を持たれるかもしれません。

科学技術コミュニケーションの世界では、「ここに行けば答えがある」ということはありません。だからこそ、考え続けること、対話し続けること、そして実践し続けることが科学技術コミュニケーターの重要かつ不可欠なツールだと私たちは考えています。

“ Welcome to CoSTEP! ”

見たことのない景色を一緒に探しに行きましょう。

〈あとがき〉

今回は、ガイドとしてのデータ利用を前提に、SD法のアンケート結果や因子分析の結果について、詳細は割愛致しました。本来は、定量化し難い講義への印象や受講者視点での評価など、属性に応じたコレスポンデンス分析や分類によって、より多様な評価が可能となると思います。そして、それはCoSTEPがより高みを目指していく過程で、おそらく重要なデータとして積み重ねられる可能性も秘めていると考えています。今回は、データ数も少なく、今回採用した因子分析手法も、主因子法とバリマックス回転という古典的な方法を用いており、最近の潮流である最尤法とプロマックス回転などに比べると、分析結果の信頼度に関して劣ることは否めません。その上で、今回割愛した選科Aメンバー内での属性で比較した分析結果を、分析例の一つとして、その一部を抜粋して下に示します。

講義カリキュラムの評価という難題に対して、どこまで実効的なデータを示すことが可能なのか、現時点ではそれを保証するデータを示すことが出来ないことも分かっています。ですが、多様なバックグラウンドを有する本科、選科A、選科B,研修科の受講生を抱えるCoSTEPにとって、潜在的な感性を含む評価がもし可能であるとするならば、カリキュラムの評価方法の一つとしてだけでなく、科学技術コミュニケーションの1つのテーマにもなり得るのではないかと感じています。実際、本オンデマンドコンテンツ制作に当たり、短期間ではありましたが、担当メンバー間で日々やり取りする中で、言葉にして伝える難しさと、逆にうまく言葉では言い表せない楽しさを強く感じました。異なるグループ同士の比較は、決して正解を求めるものではありません。より良いもの、より好ましい方向、そして個性や特性を見える化する方法の一つです。様々なバックグラウンドを有する人たちとのコミュニケーションにおいて、どこまで意思疎通が図れたか、訴求したい内容が伝わったか、相手の思いを聞き届けられたか・・・今後、科学技術コミュニケーションがより人々の生活に浸透していく中で、評価方法は継続して課題となり続けるでしょう。

CoSTEP講師の方々、17期選科Aメンバーの皆さん、1年間ありがとうございました!

これからも科学技術コミュニケーションを楽しんで行きましょう!