選科A「未来エネルギー考察班」
池上日菜・河村和広・辻ひさ・深澤寧司・松本萌未
1.はじめに
集中演習Aの1班(チーム名「未来エネルギー考察班」)は、サイエンスイベント「未来百貨店〜エネルギー問題から考えるトランスサイエンス〜」を実施しました。
我々の班はエネルギーのトランスサイエンスをテーマとして、”選択”というキーワードから百貨店で商品を選びながら社会のエネルギーと未来を考えるイベントを企画しました。本イベントの企画趣旨、イベント内容及び実践の結果について報告します。
2.イベントの企画趣旨
我々の班では、本イベントの目的、主なターゲット、達成目標を下記のように設定しました。
【目的】
エネルギーの科学的・社会的側面について、自分の考えを深める。
【ターゲット】
・メインターゲット:今の選択が子供の未来に影響を与える親世代
・サブターゲット:今後の社会を担っていく20代
【達成目標】
エネルギーの様々な側面について、現在の個人や社会の選択が未来の個人や社会に影響していくことを疑似体験する。また、この体験を通して、エネルギーの科学的・社会的側面について考えるきっかけとなる。
3.イベントの工夫点
本イベントで達成目標を達成するために、本イベントでは主に以下の工夫点を取り入れました。
・百貨店というモチーフを採用しました。百貨店で商品を選ぶという設定により、参加者が主体的にイベントに入りやすい設計にしました。
・購入商品の選択に応じて、未来が分岐して変化していく設計にしました。これにより、SF(サイエンス・フィクション)やシミュレーションゲームといった要素が入り、商品を選択する際にどのような未来になるのだろうと考えるキッカケになることを狙いました。
・親子での買い物という設定で、掛け合いを入れることで説明的になりすぎないようにしました。さらに、掛け合いの中でチャット欄のコメントも拾うことで、一方通行なイベントになることを避けるようにしました。
4.イベントの内容
本イベントは、「未来百貨店」というフロアを上がるごとに未来を見ることのできる特別な百貨店で買い物を楽しむという設定で行いました。未来百貨店では、各フロアでどの商品を購入したかによって、その後の未来(社会情勢・エネルギー事情・環境)が変化していきます。1階から順番にお買い物を楽しむ感覚で、商品の選択によってどのような未来が待ち受けているかを体験します。
商品の選択は、未来百貨店に来店した親子(娘と父)が店員とやりとりしながら買い物していくという設定で進みます。各フロアで提示された商品について、ZOOMの投票機能を用いて、参加者全員にどの商品にするか選択してもらい、票が多かった商品を親子が購入します。投票の際には、なぜそれを選んだのか、何を重視したのかを参加者にチャットで書き込んでもらい、親子がチャットのコメントを拾うことで、他の参加者が選ぶ際のヒントになるようにもしました。
商品の購入後フロアを上がり、選択した商品によって、そこから10年後にどのような未来になっているかを見ることができます。そして、またその未来で、次の商品を選んでもらうことを繰り返し、最終的に40年後の未来にたどり着きます。
今回のイベントでは、Bのお惣菜が選ばれ、次のような10年後の未来になりました。
なお、当日のイベント参加者の選択の結果は次のようになりました。この選択でどのような未来であったのか、また他の選択の場合はどのような未来が待ち受けていたのかは、本報告書の最後に資料のリンクを貼っていますので、そちらから確認することができます。
5.イベントの結果
イベントの評価を行うために、参加者にアンケートを実施し35名からの回答を得ることができました。
アンケートから、今回のイベントではもともと社会におけるエネルギー問題についての興味がある方が多く参加していました。一方で、このような参加者層であっても、イベント参加後7割以上の方が社会でのエネルギーについて興味が高くなった(5段階評価で4以上)と回答しました。これにより、本イベントで達成目標は概ね達成できたと考えました。
イベント全体の満足度としては参加者の9割以上が満足した(5段階評価で4以上)という結果になりました。他の質問項目や自由記述のコメントから、本イベントの工夫点として取り入れた、未来百貨店で商品を選ぶという世界観及び設計、親子の掛け合いといった点が機能していたと考えられました。
一方で、自由記述のコメントから、今後への課題も見受けられました。
一つは、未来シナリオの分量が多くなってしまい、参加者への説明の時間が十分ではなかった点です。
もう一つは、参加者がエネルギーのトランスサイエンスの要素を感じにくくなり、持続的な環境のみに焦点がいきやすくなってしまった点です。
まさにこれらの点は、20分間のイベントでどこまで入れられるかの議論で、最終的に簡略化した部分でした。参加者層やイベントの時間に応じて、イベントを通してどの部分を重要視するかの調整が必要であると考えられます。
6.イベントから学んだこと
本イベントは、CoSTEPで始めて出会ったバックグラウンドが異なるメンバーと準備から本番まで全てオンラインで、しかも2週間という短期間で作り上げました。今後のサイエンスイベント企画に活かしていくという観点で、今回のイベントで学んだことをまとめました。
・目的、達成目標を明確にする
目的や達成目標を早期に明確にすることで、これらを達成するための工夫点やイベント細部の準備に時間を割くことができ、最終的なクオリティにつながると感じました。本班では、この部分と百貨店というモチーフが早期に決まり、準備自体は比較的スムーズに進めることができました。
・テーマへの深掘り
サイエンスイベントでは、企画者自身がテーマを深掘りするための情報収集と企画者同士での共有が不可欠です。今回、未来シナリオを作っていくにあたり、エネルギーや社会の多様な側面で考えていく必要があり苦慮しました。事前にエネルギーの興味のある分野について調べて班内で共有するなど、班全体でテーマへの深掘りの時間を増やすことで、達成目標を達成する率が高まると感じました。
・役割分担
イベントの企画では個々のスキルやモチベーションに応じた役割分担が重要になります。特にオンラインでのイベントでは、テクニカルな部分やデザインの要素が最終的なクオリティにおいて非常に重要になると感じました。さらに、役割に応じた個々のスキルはもちろんですが、全体を統括するスキルもより必要になっていくと感じました。
7.イベント後配布資料
イベントで使用した資料のフルバージョンを以下のリンクから見ることができます。全選択肢の未来シナリオや本番では簡略した説明を確認することができます。
※本資料の無断使用は禁止します。
謝辞
本イベントに参加いただいた皆様ありがとうございました。また、アンケートにて貴重なご意見ありがとうございました。
担当教員の奥本先生はじめ、CoSTEP教員の方々には、的確なご指導及びご支援をいただきました。他班の皆様からは貴重なご意見をいただきました。誠にありがとうございました。
本記事は、2021年8月29日(日)に実施した2021年 選科Aオンラインサイエンスイベント「energy」の報告記事の1つです。CoSTEPの選科Aコースでは、全国各地の選科A受講生が札幌に集まり、対面でのサイエンスイベントをいちから作り上げる4日間の集中演習を行っています。今年度は、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、企画から実施まですべてオンラインでの開催となりました。20人の受講生が4グループに分かれ、計4つのイベントが行われました。以下のリンクより、他の活動報告もぜひご覧ください。
・選科A活動報告「宇宙を旅する超高エネルギー ニュートリノ 〜見えない素粒子を数字で感じよう!〜」
・選科A活動報告「セッション 〜光を聴く、音を観る〜」
・選科A活動報告「TAKE OUT & EAT ENERGY 満腹にならない私たち」