JJSCでは外部のご意見を頂き、編集方針等を改善していくため、アドバイザー制度を設けています。第31号に掲載の論考についてアドバイザーから、コメントをいただきました。公開の許可を頂いたコメントについて公開いたします。
一方井祐子 金沢大学人間社会研究域地域創造学系 准教授
掲載論文の内容、カテゴリーについて
第32号には1本の論文と2本のノートが掲載された。いずれも科学コミュニケーターの活動に焦点を当てたものである。いずれの論考も日本における科学コミュニケーターの役割や課題、人材育成を考える上で貴重な実践資料である。
若林・佐倉による論文は、日本科学未来館の科学コミュニケーターへのグループインタビューを通じて、コロナ禍の活動(「わかんないよね新型コロナ」)を可能にした要素を分析したものである。平時のSC活動が非常時のSC活動を可能にしたことが指摘されており、日常的なSC活動の重要性について根拠をもって示している。
小林・本田によるノートは、フリーランスの科学コミュニケーターである本田氏へのインタビューを通じて、科学コミュニケーターの役割を特に「間」をつなぐという視点から整理したものである。本田氏のこれまでの経験にもとづいて現状のSCの問題提起がなされている。SCに関わる人材育成を考える上で重要な資料になると感じた。
奥本らによるノートは、ポータルサイトSciBaco.netの開発過程とその意図をまとめたものである。これまで科学コミュニケーションに携わる人材のつながりは、個人同士のつながりに閉じたところがあったと感じる。SciBaco.netができたことでSCへのさまざまな関わり方が可視化され、コミュニティのつながりが強化されることを期待したい。