実践+発信

ラジオ167:201018

2010.1.8

 

日本酒の謎に迫る

セレンディピティ〜科学を変えた瞬間〜

飯島澄男(いいじますみお)博士のカーボンナノチューブ発見

研究室に行ってみよう

高砂酒造? 杜氏(とうじ)西 和夫(にし かずお)さん

◆研究室に行ってみよう(酒蔵に行ってみよう)

今回の「研究室に行ってみよう」はいつもと少し趣向を変えて、ラジオ番組制作のメンバーがスタジオを飛び出して、旭川市の酒蔵まで遠征してきました。題して「酒蔵に行ってみよう」。

正月に放送されるということ、そして担当ディレクターである村松慎也(むらまつ しんや)さんがCoSTEPの「日本酒部」(※自主的な課外活動です)の部長であることから、旭川市内で日本酒を製造している高砂酒造株式会社を訪れたのです。

1909年に建てられ、旭川の歴史的建造物にも

指定されている高砂酒造の外観。右は村松さん

高砂酒造は、1899年創業。数々の受賞歴を誇り、男女10人の蔵人達が杜氏の指揮のもと、大雪山系から流れ出る清涼な水を生かして、酒造りに励んでいます。

同社の杜氏(とうじ;日本酒製造全体の指揮をとる人)である西 和夫(にし かずお)工場長が、日本酒にまつわる様々な科学や、酒造りに関する苦労話をお話くださいました。

高砂酒造㈱ 杜氏 西 和夫(にし かずお)工場長

またその後は日本酒製造の現場である工場内を案内していただき、お酒の試飲をさせていただきました。その銘柄は、「国士無双」「一夜雫」「風のささやき」など多岐にわたり、いずれも大変な美味でした。

呑兵衛が揃ったラジオ班メンバーは大感激。取材よりも試飲が目当てだったのかと疑われるほどでした。ぜひ皆さんも高砂酒造のお酒を体験してみてください。

●杜氏の西 和夫 工場長へのインタビューの概要

・ 杜氏は日本酒の原料である米の購入から製造、そして出荷までの全工程に対して責任を負う。もちろん工場での実際の作業は蔵人(くらびと)が行うが、その蔵人の管理は杜氏の仕事。

・ 蔵人として働いてもらう人は、近隣の農家から秋の収穫後に来てもらっており、長い付き合い。

・旭川は水が豊富なので、水道水ではなく、大雪山から流れ出ている伏流水を使用。

・酒造りは以下の手順で行う。

原料米の処理(精米、洗米など)

→製麹(せいきく;麹、酒母、もろみの製造)

→上槽(圧搾、ろ過など)

→貯蔵・出荷(貯蔵熟成、調合、瓶詰めなど)

・それぞれの作業の中には、秒単位で管理しなければならない工程や、朝、昼、晩と常にその状態をチェックしなければならない工程もある。

工場内の製麹工程の説明

上槽工程のタンク

貯蔵工程のタンク

・ 生酒の貯蔵に当たっては、雪が降る前に美瑛の丘へタンクを持って行き、約3ヵ月半に渡って氷点下3℃で保存・熟成させることもやっている。

・ 日本酒の甘口というのは、発酵を途中で止めてしまったもので、糖分(甘味)が残っているもの。また辛口というのは、最後まで発酵をさせたもので、アルコール分が多いもの。

・ 蔵人がばらばらになると、酒造りがうまくいかない。皆がそれぞれ専門の工程の作業をしているが、前の工程の人が手を抜くと当然味が悪くなる。良い仕事をして次の工程に渡すと、良い酒が出来る。蔵人が働きやすい環境を作ることが杜氏にとっては大変重要。

・地元の食材、料理をおいしくするものが日本酒。

・日本酒造りの魅力は、同じ原料米を使っても、人それぞれに味が違ってくること。だから、「おいしくなった。」と言われることが一番の励み。

高砂酒造の製品

◆旭川市科学館「サイパル」の見学

酒蔵での取材の翌日は、旭川市科学館「サイパル」の見学をしました。サイパルには「北国コーナー」「地球コーナー」「宇宙コーナー」の3つの展示コーナーがあります。

また様々な科学イベントが行なわれており、この日は我がCoSTEP5期生でもある、旭川市在住の片岡昭彦さん(高校教師をされています)による子供たち向けの低温実験教室が開催されていたので、我々も見学させていただきました。

片岡さん(CoSTEP5期生)の低温実験教室

「サイパル」見学の記念写真

(左から村松さん、柿本さん、片岡さん、川島さん)

◆セレンディピティ〜科学を変えた瞬間〜

セレンディピティとは、「思わぬものを偶然に発見する能力」「幸運を招き寄せる力」という意味(広辞苑)。今回の担当は、ヨッシーさんこと、5期生の三原さんです。

みんなで台本の読み合わせ。右端が担当の三原さん

今回のテーマは、炭素で出来た夢の新素材「カーボンナノチューブ」です。

カーボンナノチューブは1991年にNECの飯島澄男博士によって発見された炭素素材。この新素材は、引張り強さは世界最強、銅より電気をよく通し、ダイヤモンドより熱をよく伝え、高熱にも耐え、アルミニウムより軽い、という夢のような物質です。どんなお話になったかは、是非番組を聞いて下さい。

◆収録時のこぼれ話

今回は、マイクの傍らに高砂酒造の「風のささやき」を置いて、試飲しながらトークという非常に珍しい(不謹慎な?)収録となりました。番組を聴いてもらえば分かるのですが、やたらとテンションが高かったのは、この辺りに秘密があったのかもしれません。

美味しい日本酒を前に楽しく科学のお話

我々ラジオ班が今回の番組を収録中のスタジオに、CoSTEP5期生で選科生(B演習)の田村亮介さんが取材に来て下さいました。ラジオ実習のことを記事にするそうです。取材することにようやく慣れてきた我々ですが、取材されるのは初めて。さてどのような記事が出来上がるのでしょうか、楽しみです。

収録が終わった後は、本格的にかぐわしい香りと味を皆で楽しみ、忘年会となりました。旭川遠征の夜に負けず劣らず、夜更けまでディープな話が続きました…。

放送の最後では、いつもとちょっと違ったエンディングをつけてみました。この飲み会への伏線にもなっています。ぜひ、最後まで聞いてみて下さいね。

選科の田村亮介さん(左から4人目)も一緒に乾杯

(文責:毛呂達)