実践+発信

FACTFULNESS

2021.7.4

著者:ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランド
編者:中川ヒロミ
訳者:上杉周作、関美和
出版社:日経BP社
刊行年月日:2019年1月15日
定価:1,800円(税別)


「安心してほしい、世界は良くなっている。これからも世界を良くし続けよう。」

この本を紹介する前に、まず皆さんにクイズに答えてもらいたい(本書に記載されている13のクイズの中から3つを取り上げている)。答えは書評の一番最後に記載している。答え合わせをしてから読み進めてほしい。

クイズ1:世界の人口のうち、極度の貧困にある人の割合は、過去20年でどう変わったでしょう?
A:約2倍になった
B:あまり変わっていない
C:半分になった

クイズ2:自然災害で毎年亡くなる人の数は、過去100年でどう変化したでしょう?
A:2倍以上になった
B:あまり変わっていない
C:半分以下になった

クイズ3:1996年には、トラとジャイアントパンダとクロサイはいずれも絶滅危惧種として指定されていました。この3つのうち、当時よりも絶滅の危機に瀕している動物はいくつでしょう?
A:2つ
B:1つ
C:0

さあ、皆さん、上記のクイズにいくつ正解できただろうか。こうは思わなかっただろうか。「もっと世界は悪くなっていると思っていた。こんなにも世界は良くなっているのか」と。筆者は、医学生、教師、大学教授等の様々な分野で活躍する人々に世界に関するクイズを実施し、いかに世間が世界を理解していないかに気づいた。本書は、そのような思いこみを避けるため、FACTFULNESSを、データを基に世界を正しく見る習慣と定義し、その習慣を身につける方法を解説している。

ただ、本書はそれだけにとどまらない。筆者は、本書の最後をこのように結んでいる。「事実に基づいて世界を見れば、世の中もそれほど悪くないと思えてくる。これからも世界を良くし続けるために私たちに何ができるかも、そこから見えてくるはずだ」と。つまり、本書は単なるFACTFULNESSの実践方法を述べた「知識本」ではなく、「これから世界を変えるために行動に移してほしい」という筆者の思いが込められた「行動へ移すための本」である。実は、筆者は、本書の執筆中に末期の膵臓ガンを宣告され、執筆中に亡くなっている。まさに、「自分の亡き後も世界を良くし続けてほしい」という筆者の思いを代弁した一冊である。世界をより良くするためには、現状を理解しなければならない。だからこそ、そのスタートとして、本書は現状を正しく理解する方法を教えてくれている。

筆者はFACTFULNESSを実践するには、10の本能を抑えることが必要だと述べている。その10の本能の中でネガティブ本能というものがある。人々は世界がどんどん悪くなっていると思い込んでいるというものだ。上述の質問1~質問3に間違ってしまったあなたは、ネガティブ本能に取りつかれてしまっている。ただ、安心してほしい。実は私も世界は悪くなっていると思い込んでいた。本書では、世界は悪くなっていないことを示すのに、極度の貧困率のデータを示している。極度の貧困の中で暮らす人々の割合は、20年前は世界の人口の29%だったが、現在は9%まで下がっている。それにも関わらず、私を含め、世界が悪くなっていると思い込んでいる人が一定数いる。

それでは、なぜ、人々は世界がどんどん悪くなっていると思い込んでいるのだろうか。それは、ネガティブなニュースの方が圧倒的に耳に入りやすく、メディアはそれを利用し、悪いニュースに焦点を当てて報じているからである。ネガティブ本能を抑えるには、悪いニュースの方が広まりやすいことに気づき、「悪い」と「良くなっている」が両立し得ることを理解することが重要である。「悪い」は現在の状態、「良くなっている」は変化の方向であり、2つを見分けられることが大切である。

本書は、上述したように、ネガティブ本能を含めた10の本能の内容とその原因に加え、本能を抑え、FACTFULESSを実践する具体的な方法が書かれている。本書の習慣を実践すれば、世界を正しく理解でき、世界がより良くなっていることを理解できるだろう。私は、筆者の思いを引き継ぎ、FACTFULNESSを実践し、これからも世界を良くし続けるために自分ができることを実践していきたいと思う。本書を手に取って、FACTFULNESSを皆さんにも実践してもらいたいと私は願っている。

答え:
クイズ1:C
クイズ2:C
クイズ3:C


長内克真(CoSTEP17期本科ライティング・編集実習)