実践+発信

対話day企画1「e-対話ゲーム考える海の生態系~」を開催しました

2022.2.19

2022年2月6日(日)、オリジナルゲームを用いたワークショップ「e-対話〜ゲームで考える海の生態系〜」を開催しました。24時間降雪量が60センチを観測するなど記録的な大雪となった札幌でしたが、天気の影響をほとんど影響を受けないのがオンラインの強み。全国各地から16名の方が参加してくださり、無事開催することができました。
本イベントは2021年度対話の場創造実習主催のイベント「対話day」の一環として行われ、阿部・田中・千葉・波田・山之内を中心として企画・運営を行いました。海の生態系をテーマとし、ゲームを通して海やヒト同士の関わりについて参加者と共に考え、対話を行いました。

山之内海映(2021年度 本科/学生)

〈16名の参加者は全国各地からオンラインで参加です。中高生、様々な分野の大学生、海の研究者、教員など様々な人が集まってゲームと対話を楽しみました〉
ゲームの力を借りる!

今回の対話dayの統一テーマは「科学と社会」。私たちヒトが他の生き物や科学技術とどう付き合っていけばよいのかを共に話し合い、考えることが目的です。科学の楽しさを紹介するイベントに比べて、科学のシリアスな側面についても踏み込んで対話を行うことは、多くの方にとって難しい印象を与えがちです。企画にあたり私たちは、初対面の人とお話しすることが苦手な方や、テーマに難しさを感じる方にも、イベントに参加してもらい、一緒に考える機会を作りたいと考えました。そのためにはテーマや対話に関心がない人でも参加する動機となる大きな魅力があること、そして自然と対話を生み出すプログラムであることが必要です。そこで、私たちはゲームの力を借りることにしました。

ゲームには、子供から大人までみんなに愛される魅力と、互いにプレイすることで生み出される協働の場を通じて、参加者同士の対話のきっかけを生み出す力があります。また、ゲーム中の選択や対話を通して多様な考え方があることや、課題への向き合い方を自分で発見できる、行きつくようにしたいという狙いもありました。

海の生態系ゲームづくりに挑戦

私たちは多くの海からの恵みを受けています。しかし、日常生活で海との関わりついて考える機会は多くありません。地球温暖化や過剰な漁業による海の変化が問題となっている今、海との付き合い方について一緒に考えたいという理由から、今回のテーマは「海の生態系」としました。

〈メンバーに海の専門家はいません。まずは海について知ることからスタートしました〉

さあ、ここからが大変!オンラインで遊ぶことができ、かつ対話を促進する面白いゲームを作らなくてはなりません。既存のゲームをプレイしながら意見を出し合い、ゲーム制作経験のあるメンバーを中心に土台を作り上げました。その後も何度もプレイしては改善して…を繰り返し、ようやく完成したのが「ギョギョバトル」です。

〈いろいろなゲームをみんなで体験!ゲーム研究はまず楽しむところから〉
〈ゲームは一から作り上げました。これは初期の様子。謎の生物が登場!?〉
いよいよイベント当日!

イベントでは簡単に生態ピラミッドや森林と海の関係についてレクチャーを行いました。その後4人ずつに分かれてゲームスタートです。

〈イベントではゲームに関連する内容のレクチャーをおこないました〉

ギョギョバトルは、漁業をし、獲得得点を競うゲームです。ポイントの異なる5種の魚の漁獲・植林・技術発展のうち毎ターン2アクションを選択し、ポイントを獲得していきます。選択する上で考える必要のあるポイントは3つあります。

  1. プレイヤー同士が同じ魚を獲り合うと「乱獲」となり獲得ポイントが減ってしまうこと。
  2. 海の環境がプランクトン数に、プランクトン数は魚の数に、ピラミッド下段の魚の数が上段の魚の数に影響を与える仕組みになっていること
  3. 技術の発展は自分のアクション数を増やすことができるが全体の海に環境負荷を与えること

これらを考慮しながら自分の選択をしていきます。少し複雑なルールではありますが、皆さんもチュートリアルプレーを終えてルールを覚えることができた様子です。

〈ボードは画面共有、選択はゲームマスターにチャットで送ります〉
いざ本番プレイ!

1回目はまだ探り探りでプレイしている様子でした。技術発展を積極的に行う方もいれば、環境負荷を意識して植林をする方もいます。中学生や高校生の参加者も楽しそうに、大人も真剣になってプレイしていました。ゲームが終わると2回目に向けて作戦タイム。優勝者を中心に、どうしたら勝てるのかをみんなで話し合います。得点が高い魚を獲ればいい?技術発展を先にした方がいい?などチームによって違う意見も出ていたようです。

〈本番1回目のスコアボードと終了時の海。プランクトンはメーターを振り切り、点数が低く、人気のない貝とイカが大量に増殖しています〉

次はメンバーを変え、2回目の挑戦です。今回は積極的に1ラウンド目から技術発展を選択する方が多かったようです。すると環境メーターがマイナスになっていき、プランクトンが減り、魚も減っていってしまいました。最後には貝とイカが1匹ずつしか残っていないという「枯れた海」状態になったチームも…。1回目のプレイ後の海とは全く違う結果になっていました。

〈本番2回目のスコアボードと終了時の海。1ラウンド目に技術発展が多くなった結果環境メーターがマイナスになり、プランクトンレベルが下がった結果、魚は2匹しかいなくなってしまった〉
私たちと海のよりよい付き合い方を考える

ゲーム後にはチームでお話タイム。ゲームで感じたことや、現実世界ではどうしたら豊かな海を保てるのかなど考えを共有しました。参加者からは、

「1回目はエシカルな視点で資源保護に拠ったため点数が少なかった。 だから、2回目はポイントをとりに行ったがみんなが同じ考えで、やはり資源が枯渇してしまった。」

「技術の発展を選択するとき、環境負荷を増やすことへの罪悪感と同時に、他のプレイヤーの方が森林を植えてくれるかなという考えもあった」

などといった環境と利益を両立させることの難しさや、誰かがやってくれるだろうという現実世界にも起こりうる心理、自分だけでなく他の人がいる難しさといった感想があり、ゲームを通して様々な気づきがあったようです。

では、どうしたら豊かな海を保てるのだろうか?と問いに対しては、

「人によって考え方が違う。海を守るためには、みんなで技術利用や植林について話し合いすり合わせる必要がある。ただそのためには、信頼関係の構築がバランスをとるカギなのでは」

という意見も出ていました。ゲームで盛り上がることで話もしやすくなり、e(いい)対話が生まれていたのではないでしょうか。

最後に

イベントの企画、運営を通して周りの人の考えに触れ、多くの学びを得ることができました。準備過程ではメンバーと何度も何度も話し合いを重ねました。そのたびに自分にはなかった発想に驚かされ、想いに共感し、心の幅が広がった気がします。イベント当日では、参加者それぞれのバックグラウンドによって感じ方も戦略も違っていました。参加者のプレイの様子やおしゃべりの様子から興味深い発見が得られました。自分自身も改めて対話の魅力を実感しました。

受講生が制作し、本ワークショップで使用した「ギョギョバトル」は、イベントや学校でもお使いいただけるよう、ゲームコンテンツならびにルールブックを後日公開予定です。参加者の皆様からも、もっとこうしたら面白いんじゃないか、こういうルールをつけてもよさそうなどたくさんのコメントをいただき、ありがとうございました。さらにパワーアップさせ、公開したいと思います。お楽しみに!

ご参加いただいた皆様、イベント開催までご協力・お手伝いいただいたCoSTEPの先生方、ありがとうございました。

対話の場の創造実習:阿部悠、田中文佳、千葉泰史、波田和人、山之内海映