実践+発信

サイエンスライティング醍醐味

2022.3.22
1. 私と北大

昨年3月末、長かった教員生活も65歳で終わりました。教員になった経緯を考えれば、間断なく43年勤め上げることができたのは驚きです。

初めて札幌の地を踏んだのは1974年3月初め。伝統ある北大理学部で地質学を修め、将来は研究者になろうと受験したのですが、残念無念  両親の思いや生活もあって教職に。時は瞬く間に流れましたが、いつか何らかの形で北大で学びたいと思っていました。

2. CoSTEP受講動機

理科教員ということもあってサイエンスコミュニケーションには以前から興味を持っていましたが、特に必要性を感じるようになった契機は、何と言っても東日本大震災  大津波襲来まで30分以上もあったのに多くの方が亡くなりました。不安の極に達したのは福島第一原発の全電源喪失と炉心溶融、充満した水素ガスの爆発による原子炉建屋等の大破です。ニュースの映像を見て、東日本に人が住めなくなるのではという悪夢が過りました。

津波襲来まで時間はあったのに‥‥、原発1号機の非常用復水器(イソコン)の誤認もさることながら、非常用電源さえ機能していれば炉心溶融は防げたのに‥‥。大地震の時はすぐに高台に逃げるという意識のレベル、非常用電源の水没まで想定していなかった東京電力、有名無実の原子力安全・保安院等には驚くばかりでした。専門家だけに頼ることの危うさ、科学を一般の人たちに民主的に分かりやすく提示することの大切さを切に感じました。

CoSTEPについてはHPを通して知ってはいたのですが、放送大学や同大学院での学びを20年近く続けていたこともあり、退職して時間に余裕ができたらと思っていました。e-learningでも受講可能ということが最大の魅力でした。エッセイを書くことが好きなこともあって、迷わずサイエンスライティングを学べる選科(集中演習B)を希望しました。

(Zoomで企画書作り)

コロナ禍のため全てZoomを通しての学びでした。これまでは、集中演習だけは10月上旬の3日間、通学する必要がありました。絶好の季節に札幌キャンパスに行きたかったのですが、残念!  講義では、サイエンスライティングの基本「考えることは書くこと、書くことは考えること」に接し、意を強くしました。また、水俣病を取り上げた永野三智さんのお話が印象的で、深く考えさせられました。企画書作りでは何度も指導していただき、グループワークを通して課題文「地震から家をまもるために」を無事書き上げることができました。文章デッサンでは、提示された文章を絵で表現したり、その逆の課題を熟したりしながら、理解力・表現力・描写力を高めました。最後は、成果発表会に向けてのライブラリ作成。私は「地質学者ナウマン伝」という選書を紹介し、皆さんからたくさんのコメントをいただきました(図)。

(写真:17期選科B修了コンテンツ「選科Bのライブラリ」から)

CoVID-19流行やウクライナ侵攻など世界情勢は激動そのもの。科学と政治が重なる領域「トランス・サイエンス」を真剣に考えなければならない時代です。サイエンスコミュニケーション能力を向上させること必須です!

伊藤 昭雄(2021年度選科B)
放送大学教養学部 生活と福祉コース3年