「周りの研究者とも協力し合い、『研究者は科学技術コミュニケーションを実践するもの』という風土を形成すると同時に、科学技術コミュニケーションを新たな文化として発展させていきたい」
とは、私がCoSTEPに応募した際に提出した課題文の一部です。
科学を伝えたい。そう考えている学生や研究者は、私の周りに実に多い。私もその1人です。しかし、伝える場を設ける方法や、効果的な伝え方がわからないのが実情です。科学を伝えたいのに伝えられないジレンマを私が打破するのだと、私はCoSTEPの扉を叩くことにしました。
CoSTEPを選んだ理由
「科学技術/科学/サイエンスコミュニケーター養成講座」と銘打つ講座は大学や科学館ごとにいくつかありますが、受講生が学生に限られていたり、受講するために大学や科学館の現地に赴く必要がある場合がほとんどです。CoSTEPは社会人でも受講でき、選科であれば遠方からでも受講できます。社会人であり、地方に住んでいる私にはうってつけでした。加えて、日本全国から多様な背景をもつ受講生たちが集まり、様々な価値観のもとで学びを深められる点も、私の目には非常に魅力的に映りました。
CoSTEPの講義
CoSTEPの講義は私の期待以上でした。特に、科学技術コミュニケーションが学問の1分野として体系化されていることには驚きました。1年の講義をとおして、学問としての科学技術コミュニケーションを学びつつ、コミュニケーションそのものの理論からアートを用いた表現方法に至るまで、多角的な視点から科学技術コミュニケーションを学ぶことで、様々な科学時術コミュニケーションの形を自分なりに考えていくことができたと思います。さらに、受講生だけでなく講師陣も多様な背景をもっていることで、多様な立場や価値観の理解にも繋がりました。
選科Bとしての活動
ところで、あなたは誰かと一緒に文章を書く経験をしたことはあるでしょうか。私が選択した選科Bでは、丸々3日間の演習で自分の文章作品を1つ作り上げます。文章を書く、と聞くと1人で黙々と作業をするイメージがありますが、選科Bでの活動は全く違います。まず、自分の書きたい文章の企画書を作成し、受講生同士でコメントをし合う。次に、もらったコメントをもとに企画書を練り直し、作品を執筆する。そして、執筆途中の作品にもコメントをし合い、また書き進めて仕上げていく。ピアレビューというこの過程では、他の受講生の作品の完成度がどんどん高まっていくのを体感できる様が壮観で、もらったコメントにより新たな気づきを得て自分の作品に反映できる体験は実に爽快でした。出来上がった作品は残念ながら一般には非公開となっていますが、成果物として全員分の作品が1冊に製本された冊子は私の経験、技術、思い出、そして学びがぎっしりと詰まった宝物です。
おわりに
さて、ここで紹介した私の体験談は一例にすぎません。きっと学びは受講生の数だけあることでしょう。CoSTEPで得た学びは、当初の私の目的である「科学を伝えたいのに伝えられないジレンマを打破する」ために十分なものでした。ぜひ、CoSTEPを受講してあなただけの学びを手にしてほしいと思います。
天野 瑠美(2021年度選科B)
大学所属の研究員(ポスドク)