2022年12月16日(金)に開催された第127回サイエンス・カフェ札幌 「土を作るミルクー環境再生型農業のための生産と消費ー」のチラシデザイン報告レポートです。チラシデザインに挑んだのは、本科・グラフィックデザイン実習を受講している葉山瑞希さんと唐橋あかりさんです。
制作者:葉山瑞希(2022年度 本科/総合化学院修士1年)・唐橋あかり(2022年度 本科/社会人)
制作年月:2022年11~12月
2022年12月16日(金)に、第127回サイエンス・カフェ札幌 「土を作るミルクー環境再生型農業のための生産と消費ー」が行われました。
今回のテーマは、食料生産と環境回復の両方を可能にする「環境再生型農業」です。
ゲストの内田先生が協働で研究している酪農・牛乳生産の現場を例に、私たち自身が食生活や消費について改めて考えるきっかけとなるようなお話でした。
グラフィックデザイン班(以下グラ班)では、このカフェのチラシ制作を行いましたので、その様子をご紹介します。
1.都会のヒッピーとうろたえるグラ班
まずはカフェの聞き手を務める福浦先生から、トークの内容やイベント概要のレクチャーがありました。
そもそも「環境再生型農業」とは?内田先生のメッセージとは?
カフェの内容を把握しつつ、チラシのコンセプトを検討していきます。
今回初めて札幌文化芸術交流センターSCARTSで実施するため、これまでとは参加者層が異なることが予想される中、福浦先生がターゲット層としてイメージしたのは、「都会のヒッピー」。
頭に「?」が飛び交うわたしたちでしたが、福浦先生からの「雑誌で例えると『天然生活』じゃなくて『WIRED』」、「30代以上の消費者層」、「ファッションはPatagonia」などのヒントを基に、「都会のヒッピー」にフィットするチラシの雰囲気を妄想、、、想像します。
この時の議論で出た、写真は暗めで、シンプルすぎず多少ガチャガチャしてる、曲線的、色数はたくさん、コントラスト強め、などの雰囲気の断片は最後の仕上げでも活かされることになりました。
■画力の限界と広がるアイデアに挟まれるグラ班
これらのイメージを踏まえ、さっそくチラシ制作担当者2名でラフ案を作成しました。
お互いのアイデアを見ると、自分では思いつかない案ばかりで、「なるほど」、「いいね」と夢が広がりますが、何しろ本格的なチラシ制作は初めての二人。
「作ってみたいけど今は技術的に難しい」と断念したものもありました。
そして、悩んだのがカフェの内容をどこまでデザインに反映させるかということ。
カフェの雰囲気を伝えつつ、行ってみたいと思っていただけるように内容を説明しすぎないバランス感を大切にしました。
そして、最終的に採用したモチーフが「牛乳瓶のテラリウム」です。
■牛乳瓶と結露とグラ班と
「テラリウム」は一般的にガラス容器の中で植物などを育てる手法で、瓶の中で水や酸素が循環する自然を再現することも可能です。
この「循環」は今回のテーマである環境再生型農業にも通じるキーワードであり、牧場のジオラマを牛乳瓶の中に再現することで、持続可能な食糧生産のあり方を表現することにしました。
そうと決まればテラリウム作りと写真撮影。
牛乳瓶に実際の牧場の土や茶葉などを駆使しながら牧場を再現し、割りばしで小さなフィギュアを配置して、「牛乳瓶テラリウム」が完成しました。
さっそく自然光で撮影するべく外に出ると、、、あれ、おかしいな、瓶の中が曇っていく。
水分を含む本物の土を入れているため、気温差で結露が発生してしまいましたが、結露が収まったところでところで無事に撮影でき、一安心。
■迫る締切、逃げるグラ班
今回はラフ案作成から入稿まで1週間というタイトスケジュールでした。
そのため、「できる時に・できる人が・できることを!!」を合言葉に、集まっての作業ができなくても担当者間で作業をリレーして作業を進めました。
この段階で悩んだのは、写真の選定。
室内か屋外か、照明の当たり方や背景などで、がらりと雰囲気が変わります。
撮影時はまだ晩秋の風景でしたが、開催時は雪景色のはず。
カフェ当日の季節や雰囲気に合うものを絞り込んで最終候補を数パターン作成し、牛乳瓶テラリウムが見やすいデザインに決まりました。
こうして、締切は少し過ぎたましたが、池田先生のお力も借りつつなんとか完成までこぎつけたのでした。
■チラシ制作を通して学んだこと
カフェのテーマについての理解を深めていくと、デザインが要約的になりがちで、内容を象徴しつつもすべてを説明しないというバランスが難しかったです。
写真撮影では結露の他にも、瓶に光が反射してしまったり、人工物が写り込まない角度を探したり、寒かったりといろいろとありました。
ドタバタしましたが、構図や背景などをバリエーション多めに・小道具なども撮影しておくと、思ってもいない写真が撮れたり、素材として使えたりするので、内容をきっちり決め切らないでおくというのも「アリ」なんだなと感じました。(唐橋)
私は最初、カフェの内容をできるだけチラシに盛り込むことを考えてしまっていました。しかし、それでは見る人に多くの情報を一気に押し付けることになり、感覚的に惹きつけることができませんでした。情報を削ぎ落として、必然性を考える作業は大変でしたが、その過程で試行錯誤したから、人を感覚的に納得させられるチラシを作成でさせることができたと思います。
撮影時の照明や結露、納期など大変なことは多かったのですが、ああでもない、こうでもないととにかくやってみて、感覚的に仕上げていくのは面白かったです。(葉山)