実践+発信

学びと学びのフィードバックループ

2024.3.21

佐藤 聡太/2023年度 本科 対話の場の創造実習
北海道大学 理学院 修士1年


CoSTEPのカリキュラムの特徴として、実習・演習・講義が、独立しつつも相互作用を及ぼす構成になっていることについて、私の経験を踏まえつつ書いていきたいと思います。

CoSTEPで私が所属していた「対話の場の創造実習」はその名の通り、コミュニケーション空間の形成を目的とした実習です。私が実際にかかわったイベントは、「採鉱学再考」と「サイエンスパフェ」という2つの企画でした。

「採鉱学再考」の特徴は何といっても、対話型のワークショップの存在です。「もし仮に札幌市内に鉱山を開発するとしたら、市民としてどう向き合っていくか」ということを、参加者の皆さんとともに話し合ってみるという企画にまとまったのですが、そこに至るまでの企画検討の議論が非常に難航しました。ロールプレイング形式や、ゲーム的要素を付加してみるなどといった、さまざまなアイデアが試行され、ボツになりました。しかし、ここで重要なのが「さまざまなアイデア」が私たちの手元にあったということなのです。6月24日に実施されたファシリテーション演習は、「話し合いの進め方」についての演習でしたが、同時に「話し合いの形」の種類について学ぶことが出来る演習でした。そこで知った6ハットワークショップや、討論型世論調査などのフレームを基にすることが出来たからこそ、採鉱学再考のワークショップを形作ることが出来たのです。

(ファシリテーション演習のときの筆者)

「サイエンスパフェ」の企画も、講義や演習に助けられたイベントでした。サイエンスパフェは、喫茶店風の空間でパフェと話題を提供し、市民同士の気軽な科学技術コミュニケーションを喚起するという立て付けの企画です。ここで参考になったのが、山口大の小川先生の講義です。小川先生は哲学カフェのベテランで、「普段しゃべらない話題」について気軽に話す空間を作るプロといえる方です。特に私がインスピレーションを受けたのが「着地点を強く意識する必要はない」という考え方です。「答えのない問い」と向き合うという点は哲学コミュニケーションも、科学技術コミュニケーションも同じで、そうである以上は「答えらしきものを無理に見出す仕組みは必要ない」というアイデアは、企画を練る段階から一つの軸として私の中にありました。

(小川先生の講義で質問をする筆者)

実習はCoSTEPの花形といえるものかもしれません。しかし、私はCoSTEPでの学びは、あくまでも実習・演習・講義の3本柱であって、だからこそサイエンス・コミュニケーターを養成することが出来るのであると思います。本稿のタイトルにつけた「フィードバックループ」とは生物学の用語で「とある生命活動の産物が、ほかの生命活動に影響し、その繰り返しが最終的に、最初の生命活動に影響を及ぼすこと」を言います。CoSTEPは一つの有機体がごとく、学びがくみ上げられていて、それを例えてフィードバックループと呼んでみました。いまCoSTEPの1年を振り返ってみれば、CoSTEPの関係者が講師・受講生・市民参加者を問わず影響しあう様子も、一つのフィードバックループといえるのかもしれません。

後輩になるかもしれない本稿の読者に、末筆ながら助言を一つ。演習の申し込みは、お早めに。私は申し込み忘れで、最初のインタビュー演習を登録し損ねて受けられませんでしたので。


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