実践+発信

CoSTEPでの学びとその魅力

2025.3.21

山田  憲明/2024年度 選科A(サイエンスイベント企画運営)
大阪大学 特任教員・医師


私は大学教員として生命科学系の大学院生にアントレプレナーシップ教育を行っています。研究者が研究内容や成果を一般市民や異分野の研究者にわかりやすく伝えられず、社会にどう役立てるかを理解してもらうスキルが不足していることを問題に感じていました。科学技術コミュニケーションの手法で解決の糸口を見つけられると考え、CoSTEPを受講することにしました。

受講した選科は、主に講義と集中演習で構成されており、科学技術コミュニケーションの基本的な考え方とスキルを学ぶことができました。27回の講義は総論から各論まで体系的に組まれており、どれも多彩なゲスト講師による非常に興味深い内容でした。定期配信される講義動画をオンデマンドで視聴でき、社会人でも自分のペースで学習できます。

7月の選科Aの3日間の集中演習では、全国各地の20余名の選科A受講生が北大に集まり、「LIFE」をテーマに、6人ずつのグループで20分間のオンラインサイエンスイベントを企画・実施しました。私のグループは、テレビ番組風のフィクションをベースに、参加者の質問や意見を即座に収集して討論する双方向性のコミュニケーションを取り入れたYouTube Liveでのサイエンスイベントを実施しました。この集中演習を通じて、オンラインイベントの企画発案から必要なツール、チラシのデザイン、アンケートの分析・活用まで、一連の体系的な実践手法を学びました。


YouTube Liveのリハーサル風景とシナリオの下書き

3月の成果発表会では、選科Aのステージ発表として、上記の講義の中で特に興味を持ったミニ・パブリックス(市民会議)を模擬的に実施しました。ミニ・パブリックスは、複雑な社会問題に関する科学技術コミュニケーションを実施するためのデザイン手法の一つで、専門家と市民の橋渡しを行い、市民側の立場に寄り添いながら熟議を行うことで合意形成を目指すものです。私たちは、終末期医療をテーマに、ポスター発表と合わせて参加者が自分事としてエンゲージメントを高める工夫を凝らした企画を実践しました。


成果発表会での選科Aのステージ発表の様子とポスター発表(筆者)

CoSTEPは、科学技術コミュニケーションについて学べるだけでなく、理系・文系の区別や専門分野に関係なく、多様なバックグラウンドを持つ幅広い年齢層の人々と交流する機会を提供してくれます。参加者全員が科学に強い関心と情熱を持っており、さまざまな視点から科学技術を捉え、豊かな議論が展開されます。修了後にも役立つネットワークを築くことができると思います。さらに、CoSTEPで学ぶ内容は、科学技術への理解と問題意識を深め、教育・人材養成スキルの向上にもつながり、中・高・大学などの教職員にもお勧めできる講座だと思いました。

科学自体が多様化・複雑化しているため、専門家でさえ完全には理解できないものとなっており、社会全体での理解と協力がますます求められています。そのため、科学技術コミュニケーターが間に入ることが重要です。科学技術コミュニケーションは、単なる知識やテクニックを学ぶだけでなく、継続的に理解しようとする姿勢や自ら能動的に考えて動く姿勢が求められる本当に奥が深いもので、学びがいがあります。

今後、CoSTEPへの応募を考えている方々にとって、少しでも参考になれば幸いです。一歩を踏み出して、新しい未来を開拓してみませんか?

 

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