大谷ひなた(2026年度選科B受講生)
科学技術コミュニケーションの様々な実践方法を学ぶモジュール2。第5回目の講義では、「科学を伝える映像メディアの現在」と題して北海道大学CoSTEP客員教授/ 和洋女子大学 教授である早岡 英介先生の講義が行われました。

講義では、大きく分けて2つのトピックについて紹介していただきました。1つ目が映像メディアの現在の状況、2つ目は大きな影響をもたらしている生成AIの活用とリスクについて豊富な事例を交えてお話しいただきました。
映像メディアの現在
映像メディアは年齢や言語の壁を超えて一瞬で状況や概念を直感的に伝達できる特徴があります。この特徴とAIを掛け合わせることで映像メディアは体験を空間に落とし込むメディアに変化しています。
2025年の大阪万博では、プロジェクションマッピングを使った空間化やリアルタイムに身体の動きに連動したインターフェース化、風・ミスト・実物との融合による五感を刺激した体験型の映像が披露されました。
特に、万博では涼しい場所でゆったり座りながら視聴できる映像の集客率が高かったことから映像の中身に関わらず環境設定などインターフェースも重要である、と講義では強調されました。
現在の映像メディアは空間全体を使用し体験を重視することで、AIには作られない人間特有の創作物が作り出されていると感じました。
その一方で、AIは映像制作の世界にかなり浸透してきています。生成AIは現在の映像メディアにどのように関与しているのでしょうか。
AIが変える映像メディアの世界
(1)AIが活用されている映像
生成AIは映像背景、エキストラ、デザイン、キャラクター、特殊効果、3DCGなど多岐にわたって映像メディアで使用されるようになってきました。特にスケッチから3Dキャラクターを作ることができるAIの使用方法は具体的に紹介され、AIを使えるかどうかで映像メディアの可能性が大きく左右されると感じました。

さらに生成AIによって作られたショート動画で再生回数を伸ばし一定以上の評価を得たものが紹介されました。
DoFullとサイバーエージェントが共同制作したショートドラマがSNSで総再生回数2,000万回を突破した事例です。(下部リンク①参照)
これほどまでにAIが映像作成に大きく影響する中で、早岡先生は「文章力に長けている人、要点を掻い摘んで説明できる」人が重要となってくるとおっしゃっていました。
(2)バイブコーディングで誰でもアプリを作れる
AI活用の中で特に力を入れて解説していただいたのはバイブコーディングです。バイブコーディングとは、プログラミング技術がない人でもAIと対話しながらチャット形式で自分専用のアプリを作ることができるプログラミング手法です。
キャラクターの性格や表情などの設定をすることもでき、自分専用にニュースアプリを作成することやWeb情報を対話形式で得るアプリなどの事例をご紹介いただきました。
講義後、自分でも作ってみたいと思い調べたところバイブコーディングは多くの人に馴染みのあるGoogleのAI、GeminiのCanvas機能を使って簡単に実践することができました。例えば「入力した英文をネイティブの発音で再生するアプリを作って」などと入力するだけで自分専用の英会話アプリが作れます。驚いたことに、生成AIの音声は「悲しそうに」「元気に」などの表現まで指示できます。(細かなプロンプトや生成AIの発音をネイティブに近づけるためのコードなどは調べる必要があります。)(下部リンク②参照)
AIを使えばプログラミング言語を使わずに自由にアプリを作ることができ、文系理系の壁を越えて誰でもアイディアを即実装できるようになりました。

(3)生成AI使用のリスク
AI使用にはメリットも多い一方で多くのリスクが潜んでいます。
第一に、学習データに起因する著作権侵害があります。また映像を生成する時だけではなく、映像を読み込ませる、AIに学習させる際も情報の取り扱いには十分注意する必要があります。特に私たちは科学技術コミュニケーション現場で使用する際、作成された映像の内容のファクトチェックの徹底によりフェイクニュースや誤情報などの混乱を防がなければなりません。
さらに初等中等教育では生成AI利用による認知能力・思考力・発想力・想像力などの考える力の低下が懸念されています。教育での使用に関しては感情的な忌避感を持つ方も多いでしょう。個人での利用が広まっているAIですが、教育で使用するにはまだ不安な点が残っています。
以上のリスクを踏まえて本講義では人間とAIの役割を明確に分け、リスクにとらわれない責任のある活用をしていくことの大切さを考えさせられました。特に科学技術コミュニケーションに活かす際も「何を目指した映像作品なのか」というコミュニケーション目的を明確にする必要があると改めて考えるきっかけとなりました。
終わりに
年々進化を遂げるAIが映像という分野において、どこまで活用されているのか、していいのか、またそのリスクは何か、本講義で学ぶことができました。AIと向き合いながら科学技術コミュニケーションを実践する上で改めて考える必要があることを実感しました。
現在はまだAIが生成した映像に難点やリスクが多いですが、今後クリエイターを上回るクオリティの映像作品がさらに生み出される時代が予想されます。
そんな未来に向けて私たちこの特徴とAIを掛け合わせ映像メディアはは人間にしかできない人と人を繋ぐコミュニケーションや0から1を生み出すアイディア力、AIに指示を出す文章力がより必要となってくることの重要性を痛感する講義でした。

早岡先生、ありがとうございました。
参考記事
① DoFullとサイバーエージェントが共同制作プロジェクトを開始、 極AIお台場スタジオにて制作したショートドラマは公開わずか1週間でSNS総再生回数で2,000万回を突破|動画制作のDoFull(ドーフル)
② Gemini Canvasでアプリを作成!やり方やコツ、プロンプトも紹介|SHIFT AI TIMES