CoSTEPを受講してみようかと考えている社会人のあなた。正直なところ仕事とCoSTEPの両立はたいへんです。水曜日の講義に土曜日の実習、サイエンスカフェや成果発表会などイベント前の夜なべ仕事。社会人は覚悟を決めなければCoSTEPのための時間を捻出するのは相当むずかしいでしょう。実際、私も何十年かぶりで講義の時間を気にし、レポートの締め切りに焦りまくる生活をしました。
しかし、しかしです。それでも私は声を大にして伝えたい。「CoSTEPを受講するべき!」だと。そして、「受講すれば必ず想像以上の成果を得ることができるだろう」と。
講義を受け、レポートを書き、実習に参加し、サイエンスカフェを主催し、また受講生同士で飲んだ日々(私自身は下戸ですが)。過ぎてしまえばそんな11カ月はあっという間でした。修了した今になってみるとあの日々がとても充実した日々であったと思えるのです。そしてその期間の中で、本当に多くの財産を得ることができたと断言できます。
私が得た財産の中で最も大きく、何物にも代え難いのは「人」との出会いでした。社会人の受講生はもちろん、意欲にあふれた大学院生、さまざまな分野で活動している修了生、各分野のプロフェッショナルである先生、講師の方々。どの世界でも人脈は財産ですが、職場の人間関係ではなく、サイエンスコミュニケーションという土台の上で知り合うCoSTEPでの出会いはとびっきりです。
私はCoSTEPでの出会いにより、新しい世界に飛び込むことになりました。同期の受講生が主催する「サッポロオープンラボ」という物作り系の活動にボランティアとして参加したのです。元来教えることが好きなうえ、サイエンスコミュニケーションを実践してみたいと考えていた私にとって、子どもたちに工作やハンダ付けのおもしろさを伝える活動は、とてもエキサイティングな体験になりました。しかもこの出会いや体験は1回のボランティアで終わることなく、関わった人たちにより増幅され、さらにその先の活動に繋がっていきそうな気配です。
講義や実習からも本当に多くのことを学びました。なかでも「顧客を創造すること」の重要性は多くの講師の方がさまざまな方向から強調されることで私の中にしっかりと定着しました。ターゲットを絞り、顔の見える顧客を具体的に想定すること、それはサイエンスコミュニケーションに限らず、何かを「やる」ためには大前提となる考え方ですよね。
映像の実習では、プロの仕事の一端を垣間見ることで、登るべき山の高さを知ることができました。映像の世界は奥が深く、11カ月程度の実習で身についたことはわずかです。しかし今自分がどこまででき、何が足りないのか。どこまでやれば次のステップに進めるのか、そんな方向性を理解できたことそのものが大きな成果でした。
人は環境に安住しやすく、歳を取れば取るほど自分を変えるのがむずかしくなる生き物です。しかしとりあえず動いてみれば何かが変わります。CoSTEPの受講はあなたを新しい世界に連れて行ってくれるはずです。
さあ、いっしょにサイエンスコミュニケーションの世界に踏み出しませんか。
- 森安 悟
- 北海道立総合研究機構・獣医師