実践+発信

図解橋の科学

2010.9.17

著者:著者:田中輝彦/渡邊英一 他 編者:土木学会関西支部 著

出版社:20100300

刊行年月:2010年3月

定価:980円


 橋は建築物だろうか、それとも土木構造物だろうか。多くの方はあまり考えたことがないかもしれないが、橋はダムやトンネルと同じ土木構造物であり、公共構造物として土木技術者が設計・施工・維持管理している。

 

 

 ダムも道路(橋とトンネルは道路の一部)も現在は建設不要論でいっぱいだ。一時は「コンクリートから人へ」などで、すべての公共事業が諸悪の根源であるかのように言われ、無念な思いをした人々も少なくない。しかし、公共事業がなくなってしまったら現代の生活が成り立たないのは、誰にでもわかることだ。上記のキャッチフレーズも必ずしも公共事業を全面否定したわけではない。必要な公共事業を適正な価格で展開することが重要だ、ということを強調した結果の標語だろう。

 

 

 公共事業を担う土木技術者は、これまで、あまり積極的に必要性や適正さを国民に説明してこなかった(できなかった)。そして、それが問題だという意識も少ない。この相互理解の不足が、冒頭のような疑問さえも生まれない状況を作り出したのではないか。

 

 

 そんな状況を打開するため、土木技術者は自分たちの仕事について理解してもらうために、まず「造っている物に興味を持ってもらうことから始めよう」と考えたようだ。これまでの橋の本といえば、写真を主体とした景観や歴史に関するものか、土木工学を専攻する学生を対象にしたものが多く、専門用語や数式をあまり使わずに橋の構造や施工技術を説明したものはなかった。この本は、土木学会関西支部に所属する著者らが中心になり、そんな活動の一端として、「橋に興味を持ち、橋を大事にしてもらえるように」、橋の科学を易しく解説したものだ。土木学会関西支部は「どぼくカフェ」の企画など、土木と市民を結びつける活動に積極的だ。この本も、そんな中から生まれたのだろう。  本文は、「橋を設計する」、「橋をつくる」、「橋を守る」の3つの章に分かれている。橋の科学といえば設計と施工が中心になることが多いが、これから重要になる「橋を守る」、つまり維持管理を大きく扱っている。

 

 

 「設計する」では、橋に関する初歩の力学や橋の各部の基本的な説明から始まり、さまざまな橋の構造を解き明かす。図や模型実験の写真などでそれぞれの形式の特徴を理解しやすくなっている。「つくる」では、基礎や橋脚の建設方法などが、豊富な図や写真と共に示されていて、大きな橋がどうやって造られていくのかがよくわかる。「守る」では、過去の落橋事故を教訓に学んだ最新の地震対策や、点検などの維持管理の必要性を説き、技術者が私たち利用者のために造った橋を、後世に安全に残していくための方法が書かれている。

 

 

 科学書というと、「難しい、とっつきにくい」と思われがちだが、本書では橋の歴史や逸話、景観デザインなどのコラムも盛り込まれているほか、図や写真を見るだけでも興味を持つことができ、本文や図の説明の文字も比較的大きく、広い世代が読みやすいように工夫されている。  対象を一般から中高生としているが、真っ先に中学校や高等学校の教員に読んでもらいたい。そして、進路を決めかねている生徒たちに橋や技術者の魅力を伝えてほしい。同時に、この本が、厳しい建設現場で実務に当っている技術者の社会的地位向上に一役買ってくれるとうれしい。

 

 

高橋麻理(2010年度CoSTEP選科生、茨城県)