実践+発信

Multicast Yourself

2008.8.1

カテゴリー:ワークショップ
イベント:デザインワークショップ 2008 Summer
制作者:CoSTEP
制作年:2008年7月


イベント概要 Multicast Yourself 〜研究テーマをTシャツにデザインしてみよう〜

ゲスト:佐伯浩 総長,逸見勝亮 理事・副学長

開催日時:2008年7月27日(日)13:00〜16:00

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「大空の下」 2008年7月27日快晴。

北海道大学が誇る緑豊かなキャンパスのもとで“デザインワークショップ 2008 Summer”が開催されました。このイベントは教職員や学生が,自分の研究テーマをTシャツにデザインし,それを身につけて交流をはかろうと科学技術コミュニケーター養成ユニット(CoSTEP)が企画したものです。佐伯浩総長や逸見勝亮副学長はじめ,62名の教職員,院生,学部生が参加しました。

当日は澄みきった青空が広がり,緑の芝生を横切るサクシュコトニ川からは清らかなせせらぎが聞こえてきます。どっしり構える大木のそばからは,爽やかな風が流れていくという贅沢な演出までセットされたかのようです。会場は付属図書館前の中央ローン。この日のデザインワークショップにうってつけの“北大らしい”舞台が用意されました。

「Tシャツのデザイン」 集まった参加者には真っ白いTシャツと,布地に描けるクレヨンが配られました。クレヨンで絵を描くなんて何年ぶりでしょう。普段,研究の内容を論文,スライドなどを使って発表している研究者のみなさんの頭には不安と「???」が浮かんだ様子。しかし,クレヨンを握った瞬間そんな思いは吹っ飛んでしまったようです。「そういえば,生まれてはじめて使った“書く道具”ってクレヨンだったよね」なんて話題も飛び出し,クレヨンも参加者のコミュニケーション触媒として一役かってくれたようです。

鮮やかな発色と,しっかり着色されるクレヨンを使い,Tシャツというキャンバスに向かって,それぞれイラストやキーワードを描きはじめました。 紙やスライド,ウェブページであればいくらでもページの追加が可能ですが,Tシャツには通用しません。たった一枚の限られたスペースの中に,自分が取り組んでいる研究のエッセンスをシンプルに表現しなければいけません。誰よりも自分が深く理解し,情熱を持っているテーマにもかかわらず,それをグラフィカルに表現するというのは,簡単なようで難しい課題だったかもしれません。初めての体験に戸惑いながらも,約1時間という短い時間を使って仕上げていきました。 「プレゼンテーションタイム」 スタッフの合図で一気にTシャツを仕上げると,いよいよ本番。そうなんです。このワークショップの目的はTシャツをデザインすることではありません。Tシャツを媒介にしてコミュニケーションを図ってみようというのがねらいなのです。かっこいいTシャツに仕上がるかしらと不安を感じていた参加者の多くも,やっとこのワークショップのねらいに気づき初めたようです。

参加者全員で大きな輪をつくると,次に配られたのはビールやソフトドリンク。佐伯浩総長より“乾杯!”の挨拶をいただき,乾いたのどを潤しました。これから始まるプレゼンテーションに備えるのです。ビールを飲みながらプレゼンテーションするなんて,なんとも札幌らしい粋なはからいです。 夏のまっ盛り,緑豊かな都心のオアシス“北大キャンパス”で,総長,副学長とお酒を酌み交わしながら,研究について,教育について,学問について本音で語り合うなんて学生はもちろん教職員にとってもめったにない体験です。 Tシャツとは身体と密着する“等身大の着るメディア”。誰だって平等に体は一つだけしかないという原点にもどり,一人ずつ研究にかける情熱を発表していきました。Tシャツと筋書きのないアドリブに,参加者の視線と耳が集中します。目を輝かせながら,「Tシャツにこめた思いは何なの?」「いったいこの人はどんな話をするのかしら?」という熱い「聴いてみたい!」が伝わってきました。

「コミュニケーションタイム」 引き続いてコミュニケーションタイムが用意されていました。プレゼンテーションタイムで作った輪を崩し,ばらばらになって,自由に交流を深めてもらうためです。「はじめまして」という挨拶の代わりに,「さっきの研究のお話し,もっと詳しく聞かせて下さい」という積極的な会話が数多く飛び交ったことを記録しておきたいと思います。Tシャツという一枚の“触媒”が“専門の違い”という壁を溶かしはじめた瞬間でした。短い時間ではありましたが,普段,同じ学内にいながらすれ違っていた者たちが,“北大の一員”を実感できたはずです。

「研究者の共生」 大学の本分である研究活動は,その専門性の高さゆえに,異分野間の交流がほとんどありません。専門分野が違えば,使用言語から価値観まで異なる特殊な世界ともいえるでしょう。しかし,どんな研究も人間の好奇心から生まれた学問です。人類の福祉のために研究活動が続けられているという意味では目的は同じはず。さらに未来に向けて,大学のプレゼンスを高めていくためには分野を横断した研究者たちの交流が必要となるでしょう。日本はおろか世界中から集まった研究者や若者の巨大なコミュニティのなかでの“共生”の形を模索してみたい,そんな思いで企画したイベントでした。誰もがその価値を共有できるTシャツ(身体),デザイン(コミュニケーション),時間・空間(ワークショップ)を有機的に結びつけることで,参加したみなさんに“共生”への第一歩を感じてもらえたら幸いです。

レポート:大津珠子(CoSTEP) ※希望の虹2008年12月号より抜粋 ※ワークショップの様子はCoSTEPチャンネルでもご覧いただけます。

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