実践+発信

下を向いて歩こう

2010.10.1

カテゴリー:チラシ・ポスター
イベント:サイエンス・カフェ札幌
制作者:松原 忍(2010年度本科)
制作年:2010年10月


イベント概要 第54回サイエンス・カフェ札幌 下を向いて歩こう♪ 〜科学者と見る北大研究林〜

ゲスト:柴田英昭さん(北大北方生物圏フィールド科学センター准教授/土壌学)

開催日時:2010年11月13日(土)16:30〜18:00

北海道大学は世界一の規模(広さ)を誇る研究林を保有しています。その一つ,雨龍研究林と,そこで土壌学を専門に研究している柴田英昭先生が今回のカフェの主人公です。

カフェの企画は8月にスタートしたのですが,チラシ制作担当になった私は,なかなか作業に取りかかることができませんでした。初めてデザインに挑戦したコンペ(デザインアワード2010)と比較すると,扱うテーマの抽象度が大きく異なります。コンペでは,「生命体をさがせ」という壮大なテーマのもとで自由に考えることができました。しかし今回は柴田先生の専門分野を紹介するカフェですから具体的で絞り込まれた内容が用意されています。しばらくの間,私の頭の中を研究林,土壌学,物質循環…といったキーワードばかりが回っていました。

9月に入り,タイトルが決まりました。「下を向いて歩こう♪」。もちろん坂本九氏の大ヒット曲「上を向いて歩こう」のパロディです。せっかくこのフレーズを使うのだから,チラシを見た人が思わず口ずさみたくなるような,前向きで明るいイメージにしたい。しかしそんな想いも形にできないまま,実際に研究林を訪れてみることになりました。

“デザインのヒントを得られますように”と祈る気持ちで,雨龍研究林へ9月16日より3日間の取材・ロケに出かけました。初めて柴田先生にお会いし,広大な研究林を案内していただきました。とても印象的だったのは,柴田先生がスコップで掘り出した土をいじりながら,目を輝かせながらお話しする姿です。この先生は自分の手にのせた土さえあれば,何時間でも面白い話をしてくれる人にちがいない!そして足もとの「土」。普段私たちがあまり意識していなかった足もとに,不思議でおもしろい世界が広がっていることを表現したいと思ったのです。

ロケから帰り札幌にも秋の訪れを感じたころ,ふと思いつきました。子供の頃よく工作で使った色画用紙を使ってみたらどうだろう。この小さな思いつきがきっかけで,デザインがまとまり始めました。一つ方向性が決まると,手が勝手に動き出します(今まで,頭の中だけで悩んでいたのがウソのようです) このチラシに登場する森の妖精たちは,「下を見てごらん!森の土ってこんなに面白いんだよ」と教えてくれています。森の中を歩くとき,植物や動物を観察するだけでなく,たまには眼下に目を向けてほしい。不思議な世界が広がっているはずですから。 そして,チラシを手にした人が,タイトルをメロディのように口ずさみたくなるよう工夫しました。完成したチラシを眺めていると,森の妖精たちが「サイエンスカフェ」という音楽会の楽譜を取り囲んでいるようにも見えてきます。もちろん5人の妖精たちは,カフェ実習3班のメンバー安倍さん,後藤さん,曽根さん,小林さんそして私です。 時間をかけて取り組んだデザインですから,とても愛着があります。でも,自分だけ満足してもダメよと(しゅこさんに)言われてしまいそうなので,少し時間をおいてふり返り,これからの活動に生かしていきたいと思います。

レポート:松原忍(北海道大学環境科学院修士課程1年)