実践+発信

SAPPORO DESIGN WEEK 2014 出展企画「おしえて!マトリョーシカ」 デザインワークショップを開催しました

2014.11.28

 

【レポート:池田貴子(北海道大学獣医学研究科博士課程修了・2014年度CoSTEP本科受講生)】

2014年10月26日。すっかり秋も深まり、街の樹々も金色に灯った日曜日。今年で10年目をむかえる札幌デザインウィークの最終日に、 CoSTEPがアート×サイエンス・ワークショップを出展しました。タイトルは、「おしえて!マトリョーシカ」。私達と自然とのつながりを、マトリョーシカの入れ子構造になぞらえて子供たちに楽しく感じてもらおう、という企画です。

じつはこれが、私達2014年度グラフィックデザイン班の初めての共同作業。しかも、メンバー5人とも、イベント企画は初体験。デザインウィークという大舞台に、CoSTEPの看板を背負ってのぞむプレッシャーはかなりのものです。半年間あたためてきたこの企画、はたしてうまくいくでしょうか・・・?

いきなりマト外れ → 作戦変更

13:00。札幌駅前通地下歩行空間(チ・カ・ホ)の一角でワークショップがスタートしました。

が、なかなかお客さんが入りません!思えばここは地下歩行空間。予約制でもなければ、通りかかる人の年齢も性別も趣味嗜好もバラバラなのです。受付→待機→授業→お絵かき→記念撮影、という整然とした流れを想定していた私達の思惑はみごとに裏切られ、緻密に練ったタイムテーブルは開始10分で反古になりました。

急遽、テーブルや椅子の配置を大きく変え、だれでも気軽にまずはお絵かきができるコーナーを通路側に作ることにします。

気軽にお絵かき。

たしかにこのほうが敷居が低いですよね。チ・カ・ホの特性を考慮していなかった、私達のミスでした。ですが、この臨機応変な対応は、皆さすがです!徐々にお客さんが入り始めました。

私達が事前に作成したマトリョーシカの展示エリアは常に盛況です。やはり形あるものは目を惹きます。これらのマトリョーシカにはそれぞれテーマがあり、渡邉綱介さん(北海道大学生命科学院修士1年)がお客さん一人ひとりに懇切丁寧な解説をしてくれています。

いよいよ授業

さて、子供たちにはお絵かきエリアから授業エリアに移動してもらい、こんどは先生による紙芝居の時間です。先生役はもちろん私達自身。メンバー全員が理系の大学院生であることをいかし、自分たちでデザインしたマトリョーシカと紙芝居をつかって、身近な科学のおもしろさを伝えます。

1時間目 「土のひみつ」

岩石が生物の力で徐々に土に変わっていく長い長い歴史を、小倉加世子さん(北海道大学農学院修士1年)が楽しく解説します。子供たちの目はかわいい紙芝居に釘付けです。

2時間目 「緑のふしぎ」

緑の葉っぱが紅葉する秘密を、佐藤はるかさん(北海道大学生命科学院修士1年)が解き明かします。スマホ顕微鏡を使って葉緑素を観察するアイデアは斬新ですね。折しも季節は秋。タイムリーです。

 

3時間目 「狐のなやみ」

本日最後の授業は、道民リテラシーともいうべきエキノコックス対策について。池田貴子(北海道大学獣医学研究科博士課程修了)が動物たちの目線で紹介します。キツネを殺さなくても、ヒトへの感染は防げるんです。

お絵かきタイム

授業の後はふたたびお絵かきタイム。マトリョーシカ型の厚紙に自由に絵を描く子、塗り絵に色鉛筆やマスキングテープで飾り付けをする子。保護者の方々も一緒になって、オリジナルデザインのマトリョーシカが出来上がっていきます。

おみやげに写真と解説を

できた作品と一緒に写真撮影をして、マトリョーシカの顔はめパネルに貼って終了です。このパネル、意外にも大人にも人気でした。もう一枚の写真と作品は、おみやげとして持ち帰ってもらいました。竹内桂介さん(北海道大学保健科学院修士1年)が中心となってテキパキと撮影を進めてくれました。さらに、保護者向けのすこしくわしい解説パンフレットも用意しました。

さいごに

子供たちに科学に興味をもってもらう、という目的ではじめたこの企画でしたが、テーマ設定や進行について、当初かなり悩みました。小さな子には難し過ぎないだろうか、2時間という制約のなかでどうしたら面白いと感じてくれるだろうか。いや待てよ、そもそも科学に興味をもってもらう必要があるのだろうか・・・?イベント企画初心者の私達にとっては、暗中模索の日々が続きました。

ふと、自分自身の小学生時代を思い出しました。私に限って言えば、じつは「理科」という科目には1ミリも興味がもてませんでした。でも、海や星や動物は大好きでした。高校時代の「数学」の模試では、しばしば壊滅的な点数をとっていました。でも今、大好きな動物の研究のために楽しんで数学を使っています。

結局のところ、人間のモチベーションとはそういうものなのでしょう。好きなモノのためならば、苦手なモノもいつしか克服出来てしまう。ならば、子供たちに何かを伝えねば!と気負う必要はなく、楽しそうなカガクの欠片でも拾って帰ってもらえればいいのではないか。5ヶ月間の準備期間と2時間のワークショップ本番をとおして、そんな結論に達しました。

おっかなびっくりで臨んだこの企画も、12月にすでに第2回が予定されています。

性格も専門もバラバラでぎこちなく始まった私達ですが、だんだんとお互いの得意分野がわかってくるうちに、各自が自分にしかできない役割を自然とひきうけるようになっていきました。今ではお互い、ちょうど良い具合に、誰が欠けても困る存在です。使うマトリョーシカは5体でワンセット。私達グラフィックデザイン班も5人でワンセット。さて次回はどんなカガク反応が起きるか、楽しみです。

ワークショップ当日は、田中泰生さん(北海道大学農学院修士1年)、佐々木学さん(北海道大学職員)、秋保沙央里さん(北海道庁職員)、内山明さん(北海道大学農学院修士1年)にサポートしてもらいました。本当にありがとうございました。