実践+発信

AHP(階層分析法)を応用した新しいスタイルワークショップ「子供のためだけじゃない、みらいの科学館の形。」を開催

2015.2.1

1月31日(土)10:00~12:00に、札幌市青少年科学館にて、ワークショップ「子供のためだけじゃない、みらいの科学館の形。」を開催しました。企画・運営は、今年度CoSTEP本科生の「対話の場の創造」実習の受講生が担当しました。

【実施概要】

目的:科学館のスタッフと、科学に対する様々な関心度の市民の間の意識の共通点や相違点を明らかにし、科学館スタッフに対しては今後の施設運営や展示や体験プログラムの運用・リニューアル等に、市民に対しては今後の科学館とのこれまでとは違う一歩進んだ関わり方に資するような、情報共有とディスカッションを行う。
開催日時:2015年1月31日(土)
開催場所:札幌市青少年科学館
テーマ:未来の科学館のあり方
参加者数:13名
主催:北海道大学CoSTEP
また、このワークショップでは、参加者に次のような体験を提供することを目標としました。
  • 未来の科学館について考えたりアンケートに回答したり、他の参加者と議論したりすることによって、自分の持っているものごとに対する価値判断の基準を再認識することができる。
  • 他の参加者の持つ多様な価値観に触れ、自分の考え方を広げることができる。
  • 科学館のスタッフの方々と一般の方々の間の価値観や考え方の共通点、ギャップに気づくことによって、双方のよりよいコミュニケーションや協同作業の可能性を考えることができる。
  • 科学館について理解を深め、未来の科学館の実現に向けて具体的なアイディアを発想することができる。

今回のワークショップは、1月17日に開催したワークショップ 「持続可能な漁業を考える ~魚の購入から見るみんなの価値観~」と同じく、事前にウェブ上でのアンケートに回答してもらい、その結果を整理したものを当日改めて参加者に配布し、それを踏まえてさらに先の議論をしてもらう、という形式を採用しました(※今回は1月17日のものと異なり、サイエンス・カフェとは連動していません)。

このアンケートは、AHP(Analytic Hierarchy Process:階層分析法)と呼ばれる、複数の選択肢の中から最適のものを選ぶための意思決定・合意形成の手法を応用して設計されました。AHPでは、複数の評価基準を設定してそれぞれの観点から各選択肢を採点し、それらの採点結果を特定の計算方法で総合して、最適な選択肢を決定します。
採点方法は、二つの項目をとりだしてどちらがどれだけ重要か(あるいは優れているか)を評価して回答し、これを「総当たり戦」で全ての項目について繰り返して行う、というものです。この方法を「一対比較法」と言います。
ただし今回のアンケートは通常のAHPとは異なり、「最適な選択肢を決定すること」そのものを目的とはしませんでした。一つ一つの設問に答える際に回答者がどのようなことを考えたか、感じたかを自由記述欄に記入してもらい、それを整理してワークショップの場で参加者に配布し、参加者のみなさんが「自分の価値観」や「他の参加者の価値観の多様性」について新たな気づきを得て、それに基づいて意見交換をすることをねらいとしました。

「未来の科学館」といってもほとんど無限とも言える方向性があると思いますが、今回のワークショップでは、「青年層を惹きつける未来の科学館のあり方」を考えてもらうことにしました。
参加者は13名で、一般市民の方、CoSTEP関係者、科学館の方がほぼ均等という、多様な属性になりました。特に一般市民の参加者については、実際に「青年層」に該当する方々に来ていただきました。
会場では参加者を4~5名ずつ3つのグループに分け、スタッフがそれぞれのグループにファシリテーター、サブファシリテーターとして付き、参加者のディスカッションを支援しました。

グループディスカッションの前半では、事前に参加者が回答したアンケートをAHPの手法によって計算した結果のグラフと自由記述をファシリテーターが紹介しながら、参加者のみなさんに意見を言ってもらったり、参加者同士で質問し合ってもらったりすることで、お互いのものの考え方、背後にある価値観とその多様性について理解を深めました。

後半では、前半の議論を踏まえて、青年層を惹きつける未来の科学館のあり方について自由に意見を出してもらいました。どのグループでも活発なディスカッションが行われ、青年層を惹きつけるためにはどのようなマーケティングをすればよいか、館内でどのようなアクティビティができるとよいか、こんな企画を実施してみたらどうか、どんな展示なら興味を持ってもらえそうか、といった点について、ユニークなアイディアが出されました。

最後に各グループのサブファシリテーターがグループ内のディスカッションをまとめて発表し、全員で共有しました。

今回のワークショップ手法自体はまだまだ開発段階で改善の余地は多数ありますが、参加者のみなさんからも貴重なご意見をいただきましたので、それらを活かしてよりよいものにしていきたいと思います。こういった試みを通じて、「参加者が主役の」科学技術コミュニケーション実践を今後も行っていきたいと考えています。

最後になりましたが、ご協力いただきました札幌市青少年科学館のみなさま、どうもありがとうございました。