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チラシデザイン:自在の翼を手に入れろブルーインパルス飛行技術と不安定からの数学的発想(1/3)

2016.2.9

制作者:髙橋 香帆(2015年度本科・農学部4年)/制作年月:2016年1月

2016年1月16日(土)に開催された第86回サイエンスカフェ札幌「自在の翼を手に入れろ ~ブルーインパルスの飛行技術と不安定からの数学的発想~」(主催:CoSTEP/ALP)のチラシデザイン報告レポートです。チラシデザインを担当したのは、本科デザイン実習を専攻している髙橋 香帆さん(2015年度本科・農学部4年)です。

序章

飛行機とは全く縁もゆかりもないこの私が、あろうことか航空ファンの絶大な支持を誇るブルーインパルスを題材にしたサイエンスカフェ(以下、ブルーカフェ)のチラシ・ポスターデザイン担当となったのは、2015年7月上旬のことだった。「ブルーインパルス」という名前と、それを支持する熱狂的なファンの存在を知ってはいたものの、私自身のブルーインパルスに関する予備知識はほぼ皆無であった。

「いいなぁ、かほちゃん、ブルーインパルスの担当で。」

他のデザイン班メンバーからはしきりに羨ましがられ、ブルーカフェ担当になったことの幸運を噛みしめつつも、これは全力で良いデザインを考えなければ!と身が引き締まる思いであった。何といってもブルーインパルスはもともと見た目が圧倒的にカッコ良く、下手をするとチラシのデザインがブルーインパルス自体のデザイン性に負けかねない。

「よし、上等だ。大勢の人が愛するブルーインパルスを、チラシの中でもっと魅力的に飛ばせてみせよう。」

こうして決意も新たに、私とブルーカフェの半年に及ぶ格闘が始まったのだった。

実物のブルーインパルスに会いに

2015年7月、ブルーインパルスが展示飛行のために北海道へとやって来る機会があった。年に1回開催される航空ファン垂涎のイベント「千歳基地航空祭」である。これを見逃す手はないぞ、と私もいそいそと早起きをし、航空自衛隊千歳基地へと出向いて行った。天気はあいにくの曇りであったが、基地内はブルーインパルスを目当てにした大勢の老若男女で溢れかえっており、ひときわ大きい人だかりの先で私は生まれて初めて実物のブルーインパルスを見た。整然と駐機された精悍な機体、目を射抜く高貴な青いペイント、これが6機そろって飛んだらどんなにカッコいいことだろう、と思った。

高鳴る私の胸も虚しく、その日は不運にも曇天の影響でブルーインパルスの展示飛行を拝むことは叶わなかったが、滑走路を一周するブルーインパルスを見ることはできた。轟くエンジン音を鼓膜と肌でビリビリと感じながら、人類の英知はこんなにもすごい乗り物を手に入れたのかと、一種の畏敬の念のようなものを抱いたことを覚えている。

(ブルーインパルス4番機)

(整然と駐機された6機のブルーインパルス)

ゲストの高橋 KYONCEE 喜代志さんに会いに

2015年11月、元ブルーインパルス4番機パイロットであり、今回のブルーカフェのゲストでもある高橋 KYONCEE 喜代志さんとお話しをする機会に恵まれた。ブルーカフェを担当する先生方や「物質科学フロンティアを開拓するAmbitiousリーダー育成プログラム(ALP)」の「サイエンス・カフェ特別演習」に参加している学生たちと一緒に航空自衛隊千歳基地へと赴き、基地内をいろいろと見学した後、最後に高橋さんとの座談会に臨んだ。パイロット(それもブルーインパルスのパイロット)という職業について具体的に思いを馳せたことのない私には正直何を聞いたら良いのか分からないところはあったが、素人なりに率直な質問を投げかけてみた。「高橋さんはどうしてパイロットになったのか?」「ブルーインパルスを操縦している時は何を考えているのか?」「操縦中の身体への負担はどのようなものなのか?」「操縦に数学的な知識は必要なのか?」

初めてお会いした高橋さんは背筋がスッと伸びた方で、話している最中もたいへん親しみのある笑顔を見せる方であった。実際に飛行機を操縦する人を目の前にして、「飛ぶ」ことの現実味とその凄さを、ぼんやりではあるが初めて実感した一日であった。

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(元ブルーインパルス4番機パイロット、高橋 KYONCEE 喜代志さん)

(高橋さんとの座談会)

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(航空自衛隊千歳基地にて、高橋さんとブルーカフェメンバーで記念撮影)

もう1人のゲスト、西浦廉政さんに会いに

2015年12月、幸運なことに、もう1人のゲストである数学者の西浦廉政さんともお話をする機会に恵まれた。その日はブルーカフェの事前打合せで、運営の先生方とゲストの高橋さん、そして西浦さんが出席しており、これまた逃す機会はないと思い学生の私もスルッと紛れ込ませてもらったのだった。西浦さんは非常に穏やかに話をされる方で、「研究者として必要なのは問題を解く力ではなく、何が問題かを見極められる力である」と述べられていたのがとても心に残った。

私は個人的に数学に興味があったため西浦さんから何か数学のお話を聞けるかと期待して行ったのだが、私の期待は見事に裏切られた。というのも、打合せに出席されていた方々は西浦さんも含め、まるで少年少女のようにキラキラした目をしながら飛行機やブルーインパルスについて語り合うことに夢中になっておられたからである。飛行機について心底楽しそうに語らい合う様子をまじまじと見ながら、改めて人類にとっての「飛ぶ」ことへのロマンや憧れの強さをヒシヒシと感じた。そして、きっとカフェ当日は多くの航空ファンで会場が埋まるだろうと直感したのであった。

(数学者の西浦廉政さんと私)

次のページで、デザインワークの様子をお届けします。