2016年6月12日(日)、第88サイエンス・カフェ札幌「カエルの先生 時計作りの達人に迫る〜時の小宇宙を生み出す独創性の解明〜」を開催しました。今回は、北海道大学 高等教育推進機構 教授の鈴木 誠さん、北海道深川市出身の独立時計師 菊野昌宏さんのおふたりをゲストにお迎えしました。
(左:菊野昌宏さん、右:鈴木誠さん)
鈴木さんは、北大の名物講義「蛙学への招待」を開講しています。講義のポイントは、蛙の生態・形態などを学ぶことを通じて、学生の問題解決能力を育成する点にあります。
菊野さんは、自動割駒式和時計を腕時計サイズとして制作した「不定時法腕時計」が認められ、2013年に、独立時計師協会から日本人初の独立時計師に認定されました。2015年には新作となる「和時計改」を発表しています。
カフェのテーマは独創性と問題解決能力です。第一部では、菊野さんが手作業でつくった腕時計を紹介します。このために、菊野さんには、「ホンモノ」の作品をもってきていただきました。
(菊野さんが手作業で制作した腕時計と、「蛙学への招待」で制作されたドライラボ)
2011年制作の「和時計」には、江戸時代に構想されていた不定時法を表現するための機構が組み込まれていました。菊野さんは、その機構を越えるアイディアを自ら考え出そうと試みました。そのヒントは、なんとマジックハンド! マジックハンドのリンク機構を用いて、今まで考え出されたことのない新たな不定時法の機構を生み出したのです。菊野さんの独創性を知るためのヒントが示されたように思います。
このパートでは、不定時法と和時計についての解説も行われました。解説のための資料として、セイコーミュージアム様からパンフレットをいただくことができました。ありがとうございました。
(模型を使って和時計改のメカニズムを説明する菊野さん)
第二部は「蛙学への招待」の紹介から始まりました。動画では問題解決能力を育成するための九つのポイントが提示されました。このポイントを手掛かりに、菊野さんと鈴木さんの対談が行われました。
鈴木さんは若冲の絵を見せながら、「正確にものを観察することは、すべてのことの基礎・基本になるのではないか」と問いかけました。これに対して、菊野さんは、江戸時代のゼンマイを徹底的に観察することで、当時の職人がどのような道具を使い、どんな手順でゼンマイを作り上げたのかまで把握することができると、答えました。そして、一人ですべての作業を行うことで、一つ一つの部品が、時計全体でどのような役割をするかを理解することができるとも語りました。
(独創性と問題解決能力について語り合うゲストのお二人)
第三部は、会場との質疑応答です。次はどんな時計をつくってみたいですか? なぜ講義で蛙を使うのですか? など、会場からの質問に、お二人は時にユーモアを交えながら、答えていきました。時計と蛙、全く違う対象にもかかわらず、菊野さんと鈴木さんが「独創性と問題解決能力」について、同じことを考え、日々実践していることが伝わるカフェになりました。菊野さん、鈴木さん、そして参加者の皆様、ありがとうございました。
これからも CoSTEP は様々な対話の場をつくっていきます。