実践+発信

研修科の伊藤さんによる「新聞づくりワークショップ」を開催

2016.11.19

 

 CoSTEP研修科の伊藤宏一さんは、新聞と科学技術コミュニケーションとの関係について研究しています。その研究の一環として、伊藤さんの勤める(株)機関紙印刷で、10月29日にCoSTEPの受講生7人と「新聞づくりワークショップ」を行いました。

今回のワークショップのために制作した特別クリアファイル。中にはワークショップ資料が入っていました

 新聞というメディアの特性を理解し、100年以上続いている情報伝達方法を学ぶことで、科学技術コミュニケーションにおける情報編集能力が身につくことを目指して、本ワークショップは始まりました。前半は伊藤さんによる新聞の特徴を理解するための座学を、後半は実際にInDesignを使って新聞を制作する演習を、最後には工場見学とふりかえりを行いました。

写植の時代、活版の時代がわかるものも実際に手にとってみることができました

座学では、新聞の基本構成に関する説明に続き、「7つの禁じ手」をはじめとする新聞づくりの基本的な知識を学びました。30分ほどのレクチャーで、新聞がなぜ新聞に見えるかという問いに、独自の情報の出し方があることがわかりました。

レクチャーをしている伊藤さん

新聞はなんで新聞に見えるのでしょうか?考えてみてください

座学の後には、参加者2人がペアになって実際に新聞を制作し始めました。まずはどのような情報を、どこに配置するかを紙にスケッチしてからデジタル作業に移りました。

記事は自分が書いてきている参加者もいれば、facebookページ「いいね!北大」の記事から抜粋して使用する参加者もいました。知らないことに関しては機関紙印刷のスタッフの方や伊藤さんに聞きながら、問題を解決しました。初めて使うDTPソフト InDesignに戸惑いながらも、作業していると少しずつ慣れていくことができました。

90分ほど作業してから一度出力をし、壁に貼ってみんなで見ながら話し合いました。いかにも新聞らしくできた印刷物に、参加者は驚いていました。よかった点もあれば、修正点も見えて、お互いの目線から指摘しあうことができました。時間が許す限りの修正作業に入りました。

約30分ほどの作業の後、ついに新聞が完成しました。思わず参加者は拍手で新聞を迎えました。新聞のルールに従い、自分らしさを出すそれぞれの成果物から、ルールに従いつつ自分らしくメッセージを伝えることを学びました。

演習の後は、印刷プロセスを踏みながら工場を見学しました。普段私たちが手にする新聞がどのようなことを経て印刷されるか、その印刷や製本、納品のプロセスを、丁寧な説明を受けながら理解していきました。様々な工程がどのようにつながっているかを見ることでき、また機械や工場独自の雰囲気にも圧倒されました。

印刷機のあるフロアでの見学。説明は機関紙印刷の川原さん

ワークショップのテキストとなる、充実した内容のマニュアル「新聞づくりハンドブック」の作成だけでなく、ワークショップが終わると伊藤さんは「速報!今日つくったもの」という形での報告冊子や、「ワークショップやりました」という折チラシを作成し、参加者に配りました。実施後にもふりかえりが大切なワークショップで、紙媒体を使ったまとめに関する試みで、継続的付き合いができるCoSTEPならではのワークショップのまとめ方だと考えます。


制作したまとめチラシをもっている伊藤さん

科学技術コミュニケーションにおいて、メディアは必ず付き合っていかなければいけないものです。時代が変化し、紙媒体の新聞の存在が疑われている現状もあります。しかし、そんな時代だからこそ、今一度新聞らしさとは何かを考える必要があるかと思います。

すぐにでも欲しい情報が手に入る今、効果的な情報の伝え方、信頼性のある情報発信源についても考える必要があります。今回のワークショップでは実際に新聞を作る貴重な経験を通して、新聞と科学技術コミュニケーターとの関係を楽しく考えることができました。ご協力くださった機関紙印刷の皆様に感謝します。