実践+発信

プレスリリース作成演習を実施しました

2016.12.2

11月26日と27日の土日に、プレスリリースの作成を学ぶ選択演習を実施しました。研究者による成果発信の手段の一つとして、新聞等メディアへの情報提供は重要です。プレスリリースの作成を通して、説明的な文章のライティングスキルの基礎を学ぶとともに、実際の科学報道の事例紹介を通して、報道側の立場や役割、そして研究者の情報発信のあり方を学びました。

講師はお二人です。一人目は、CoSTEP客員教授の内村直之先生。朝日新聞等を経て、現在はフリー科学ジャーナリストとしてご活躍です。CoSTEPのサイエンスライティングプログラムに携わって頂いています。お二人目は、北海道大学国際連携機構の南波直樹先生。理化学研究所CDBの広報業務に10年以上携わられ、今年4月から北海道大学で国際広報を担当されています。ジャーナリストと研究広報双方の立場から学べる絶好の機会となりました。

今回もCoSTEPとALP(物質科学フロンティアを開拓するAmbitiousリーダー育成プログラム)の共同プログラムとして実施されました。受講生はCoSTEP本科6名、選科2名、ALP1名が参加。自分や所属組織等の研究について事前にプレスリリース案を作成し、それを2日間の演習の間に完成させました。また執筆の合間には、さらに学びを深めるため、ミニレクチャーやディスカッションを行いました。

 

初日の26日は、まず自己紹介で顔合わせをした後、南波先生から「プレスリリースとは何か」と題し、プレスリリースの意義、手順とスケジュールなどプレスリリースの基礎的な知識についてお話いただきました。

(国際連携機構の南波直樹先生。柔らかい物腰ながら、鋭い視点でプレスリリースを伝えていただきました。)

次に、事前に提出したプレスリリース初稿について、参加者でコメントしあいました。学生から社会人、多様な分野の参加者からの意見に、自分では見えていなかった視点や、文章の受け取られ方など、多くの気づきがあったようです。思わず「なるほど~、そう読み取れるんですね~」などと声が出てしまう参加者もいました。

(受講生同士、大変熱心に意見交換を行い、原稿を磨き合いました)

最後は、「良いプレスリリース、悪いプレスリリース」と題し、講師のお二人、広報の立場・記者の立場それぞれから、プレスリリースの実例を紹介しながら、研究を発表・報道する上での重要なポイントについてのレクチャーがありました。

(CoSTEP担当スタッフ川本による一日の学びのまとめ)

2日目の午前は、まず各自プレスリリースの修正を行いました。自分の専門分野だと、なかなか専門用語を必要最低限に減らすのは難しいものです。先生方や参加者からのコメントや意見をもとに、伝わりやすい文章の構成、言葉や図など適切な表現を探っていきます。提出された原稿は、その場で両講師が添削していきます。

次に、その修正原稿への両講師による解説です。各自の努力によって大きく改善された原稿への労いの言葉の後、さらに良いものにするための指摘や意見をいただきました。午後には先生方からのアドバイスを受けて、最終の修正を行い、全員のプレスリリースが完成しました。

(時間内に原稿を完成させるため、集中して作業に取り組む受講生たち)

続いて内村先生から、「ピントの合う文章とは・きちんとした説明とは何」と題し、内村先生が作成した実際の新聞記事と、その元になったプレスリリースの実例を紹介しながら、記者の視点と、研究を報道する上での重要なポイントについてのレクチャーがありました。

 


今回から講師に南波先生が加わりました。お二人の掛け合いによって、一つのプロセスでも、広報と記者それぞれの立場での考えや事情が異なることを、明確に理解することができました。

今回の演習を踏まえ、1月には「記者会見演習」を開催します。今回のプレスリリースの中から2件を題材として選び、教員や参加者が記者となって質疑応答を行う、実践型の演習です。ご期待下さい。

プレスリリースタイトル(一部)

  • ポスト経済成長の社会で考える持続可能性:日本の持続可能な将来像の提案
  • 青いニホンザリガニの出現頻度をはじめて調べた-青色は遺伝?環境?-
  • ​メロン黄化えそウイルスの高感度検出方法を確立:メロン、キュウリへの被害抑制の可能性
  • 植物のからだをつくるタンパク複合体の発見と解析
  • 安価なコバルト触媒を利用して医薬品の合成工程数を削減
  • オマーンオフィオライトで見られる岩脈の性質を解明:マントル中では二種類のマグマが形成されている
  • 霜柱形成の基礎を説明する新しいモデルを開発