実践+発信

チラシデザイン:96サイエンスカフェ札幌「鶴の今昔、拝見つかまツル!古文書から読み解くツル生態~」

2017.9.22

制作者:佐藤 奈波(2017年度本科・北大遺伝子病制御研究所 博士1年)/ 制作年月:2017年7月

2017年9月10日(日)に開催された第96回サイエンス・カフェ札幌「鶴の今昔、拝見つかまツル!~古文書から読み解くツルの生態~」のチラシデザイン報告レポートです。チラシデザインに挑んだのは、本科・グラフィックデザイン実習を受講している佐藤奈波さんです。

今回のサイエンス・カフェ札幌のテーマは、鶴。話し手は、北海道大学大学院文学研究科専門研究員の久井貴世さん。鶴と人との関わりという一見文系よりなテーマを、どうサイエンスカフェで取り上げるのかという難しさの中、カフェの企画運営を担当する「対話の場の創造実習」班(以下、対話班)が何度も何度もミーティングを行っている姿を目の当たりにし、刺激を受けながら取り組みました。

アイディアからチラシが完成するまで

まず最初に対話班からいただいたイメージは、「ツル」「とっつきやすさ」「時の流れ」「人との関係」「文献から鶴を探すというプロセス」「科学の可変性」。

(下書きの数々。デスクでツルばっかりを書いている私を同じ研究室の人は奇怪な目で見ていました)

そこで、ツルの歴史や当時の科学が人々にどう捉えられてきたのかの変遷を、鏡を用いて表現できないかなと考えました。もう1つは、巻物の中のツルがそこから飛び立つ様子を示すことで、発見するプロセスを表せないかなと考えました。

これら2つのラフ案を対話班に共有して、意見をいただきました。やはり、一番重要な「ツルと人との関係」がうまく表せていませんでした。確かに…。というわけで、もう一度ラフ案を考えます。重要なポイントだったのは、対話班からいただいた250枚ほどの鶴展の写真を実習の時間に見まくったこと。この時間で得たビジュアルイメージを元に、水引案・大空を飛翔しているツル・エッシャーのだまし絵を模倣した案の3つの案を提案しました。水引案は人との「結び」つき&人の手によって具現化されたツルの姿。飛翔しているツルは人の視点からみたツルのかっこよさ、だまし絵では人とツルとの関係性の変遷を表しています。

 

対話班とのミーティングで、この中から最終的に水引案に決定!そこで、さらに案をブラッシュアップ。水引というモチーフに決定してから、(いや、実はする前から)是非自分の手で水引鶴を作製したい!とアピールし、手作りで作ることに。

(デスクで長い水引を操ってツルを作っている私を同じ研究室の人は驚きの目で見ていました)

もちろん、既存のものを使うのもありだったのですが、既製品として使われている鶴は、首が曲がっていたり(鶴らしく見えるのですが、実はツルが飛ぶときは首は曲がっていないのです。)、翼の形が丸くアレンジされていたり。だんだんと鶴の姿に魅せられていた私は、鶴のかっこいい本当の姿を手作りで作り出せたら、と思いました。また、人との関わりという観点から、生活の中で使われている熨斗袋のようにデザインしてみようと考え、背景を和紙や御料紙などに変え、試行錯誤しながら水引鶴の配置をアレンジ。

(深夜まで池田先生と一緒に無我夢中でライトを当て、写真を撮り続け、後には大量のデータが残されました)

さらに、水引鶴をデジタルで描き動きを出したものを合わせて、計2点を作成しました。どちらも思い入れのあるデザインです。

最終的に、クライアントである対話班とのミーティングでこれらの案をお披露目し、実物のインパクトという点で写真の水引案に決定しました。最後に、ロゴや色調など、細かい点を池田先生に修正していただき、完成となりました。

(チラシ完成稿)

また、たくさん撮った素材をぜひ生かしたい!という思いで、バナーには違うモチーフを採用することに。黒の和紙を背景に撮った、お気に入りの一枚を使用しました。

(バナー)

チラシ作りを通して学んだこと

チラシは、見る人にインパクトを与え、まずはイベントに参加してみたいと思ってもらうことが目的です。そのために考慮すべき点がたくさんありました。たとえば、「季節感:季節に合った色使いをすることで、街の雰囲気や人の気持ちと調和させる」「モチーフの目線や向き:チラシの外側を向かせることで広がりをだす・内向きにすることで安定感を出す」「色調:青みを強くすると冷たい印象を、黄みを強くすることで温かい印象を与える」などなど。これらのどれ1つとっても、本能的に感じることはできていても、デザインの際には今まで思ってもみなかったことで非常に勉強になりました。

(モチーフの検討)

対話班とのやりとりでも多くのことを学びました。私自身このようなチラシを作るのは初めてで、イメージを他の人と共有し詰めていくということに関わったことがあまりありませんでした。共有の場では、なぜこのデザインにしたのかという理由、実際のサイズ感、詳細な配置や配色などをしっかりと相手に伝える必要があることを実感しました。チラシ作りを通して、自分の頭のなかでぼんやりしているものを形にする手段が少し分かり始めてきたかなと思っています。

(パンフレットも今回は特別に、水引から着想を得てのし袋風に観音開き)

また、学んでいく中で感じたのは、CoSTEPの公式のチラシを作るという重みです。各種ロゴの順番や配色などを厳密に考える必要がありました。水引の正確な本数や結び方の意味なども考慮しました。対象の人々を考慮したユニバーサルデザインや、どういったメディアを用いて広報するのか(印刷・web)など、外部へ発信する際のルールはある程度型が決まっていて、それらをしっかり理解した上でデザインを作っていく必要があることも学びました。